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第二章 養成所

スター・サファイア

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「そういえば、このメタルキャット……モア様が、ガードかけているって事は、訳アリですね。
おとなしいですけど、ひょっとして声帯がないんですか?」

「ああ、モアがそんな事言ってましたね」

「ゴーレム用のパーツなら一通り揃っていますけど、使ってみます?」

ライムがゴーレムさんの足にスリスリしている。
「使ってみたいようですね。お願いできますか?」

「はい、少しお待ちください」

ライムはゴーレムさんの持ってきてくれた人工声帯を吸収した。

「使い方は、サーバーから読み取れますよね」

「あー……あー……にやお……」

「あはは、そうだ、猫だからニャーだね」

「ご主人様、気づかれていますよね」

「ああ、繁殖したのかな?
ライムは結界使える?」

「問題ありません」

「ゴーレムさん、ちょっと行ってきます」

休憩所の外へ飛び出した俺は、一番近くの気配に向かった。
一秒の福音でテイムを選択する。

「よし、ライムよろしく」

ライムはとんでもないスピードでそいつの後ろに回り込み、前足で抑え込んだ。

「抵抗しなければ殺しはしません」

ライムの恫喝に、キュッと同意するような音が聞こえた。
そいつの頭に手をのせると、掌が凍り付いていく。
幸い、2秒でテイムは完了した。

「ライム、ありがとう」

魔力を流し込み、マリア経由で同期を済ませ、名前をファイにした。

スライムよりも水に近い。中央に近づくにつれて藍色に変わる。
中央にコアとなる発行体があり、星のように瞬いている。
全体のグラデーションが絶えず変化しており、美術品といっても過言ではない。
レア度からいえば、オリハルコンスライムの方が高いが、美術品としての価値はスターサファイアだろう。

「そうだ丸い玉になれるかな?」

平面だった体が丸くなると、直径7cmほどのボールになった。

「おいで」

手を差し出すと、ピョーンと飛び乗ってきた。

「すげえ、綺麗だ」

「わ、私だってボールにくらいなれます!」

なんだか、ライムが対抗意識を燃やしている。

「ライムは、猫の姿が可愛くて好きだな」

「もう、ご主人様ったら……」

休憩所に戻ると、パーティーが2グループいた。

「くそう、もう3日目だってのに、気配も感じられねえ」

「リーダー、もういないんですよ。
あきらめて帰りましょうよ」

「馬鹿野郎、あの剣一本で、死ぬまで遊んで暮らせるし、なによりヒーローだぞ」

「それは分かりますけど……」

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