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第一章

レイピアの行方

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「鉈が折れちゃった…」

「またなの?今度は何を叩いたのよ」

「これ…」

「こちらは、過去に一例だけ記録がございます。
スターサファイアの剣で…」

ガラガラッ!

「オミナ、アイテムも全部持って行って」

「あっ、ああ、そうさせてもらうよ」

「同じ鉈を2本ください。念入りに強化したやつをお願いします」

「ですが、この鉈でスターサファイアやスタールビーを倒せるとは思えません。
伝説のハンマーで一度、オリハルコンの針でたまたま急所を突いたのが2度。
金剛石の特製ハンマーですら砕け散ったと報告されています」

「いいのよ。
それよりもさ、タケル、折れた刃先と柄を貸して…
えっと、革巻きのほうがいいわね。確か収納に革のグリップテープと塗料があったから…。
スターサファイアの色で着色して…
刃元の背に近いところにTAKERUと入れてと、この2本にも同じデザインを施して完成ね。
どう、持った感触は?」

「うん、手にしっくりくる。持ちやすいよ」

「ねえ、このTAKERU仕様のナタをここで売り出すってどうかしら。
2本分の代金はこの現物でいいわよね。」

「えっ…、あっ、はい!結構です。
量産する場合のデザイン料は如何いたしましょうか?」

「できればホルダーを作って、タケルに定期的に現物を補充してくれればいいわ。
収益は財団に寄付って事でね。
最下層限定販売の方がいいかもね。
あっ、この2本もレプリカがあったらいいわね。
預けておきましょうか?」

「ぜひ、お願いします!」

当然、帰りも同じくらいのドロップ品があり、オミナは500万円を超える臨時収入に満足そうだった。
俺は、十分な経験と能力値を増やしたうえで、スタールビーとスターサファイアという二振りを手に入れた。
姉さんは、出費だけのはずが、なぜか上機嫌だった。

「ねえ、ルビーも捨てがたいけど、エルフのイメージならサファイアよね」

「うっ、うん。そうだね…」

姉さんの中で、一本は自分の物と決まっているようだ。
そして数日後、俺の元にエルフの里から通知が届いた。
それは、俺を正式にエルフ一族として認定するというものだった。
モリビトの姓が認められた証でもある。
サクラ姉さんに報告すると、嬉しそうに言った。

「これで、タケルは正式に私たちの弟よ。おめでとう。
それから、シラン。ヒーラーを目指すあなたに武器は必要ないわよね」

「えっ?」

「スターサファイアとかいう剣は、エルフの象徴として献上しましたからね」

「えーっ!」

サクラ姉さんが聖女である以上、我が家に伝説の剣など必要ない。正論である。
サキ&ヨーコ財団は、家長であるサクラ姉さんに剣を返却した。しかも職場へ…
職場とは、よりによって教会である。
持ち込まれた瞬間、それは武器ではなく平和の象徴と位置付けられ、エルフ・財団・教会の三者がそれを欲した。
一本はタケルの功績を認めさせる道具としてエルフの里へ贈呈された。
もう一本は、財団の象徴とし、教会にとっては権利を譲る代わりに財団からの献金を確約させ、なおかつ両団体がモリビト家の後ろ盾となる事が決まった。
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