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第二章
第24話 割れたお守り
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この世界に転移したときに割れてしまった梵字のお守り……。
「やっぱり、これが救ってくれたのかな。」
私は二つに割れた木片をリュックから取り出しました。
神社ではないけど、そのお守りを布でくるみ手をあわせて感謝の言葉を述べます。
そして火をつけました。
「お護りいただき、ありがとうございました。」
お守りは煙になって空へ昇っていきます。
工房に戻った私は、同じような木片を7枚前にして、墨をすります。
書道の道具一式はリュックの中に入っていました。
丁寧に、祈りを込めて墨をすり、筆で木片に”カーン”の文字を記していきます。
「不動明王様、もの世界の者にも加護をお与えくださいまし。」
梵字の”カーン”は、不動明王様を司どっています。
その効果は、すべての災難を除き、光の道を示してくれると学んでいます。
お守りの3枚はメイドたちに渡し、残る3枚は冒険者パーティーのみんなにです。
実は、お守りを作る前に、梵字を魔法陣に使ったらどうなるのだろうかと、愚かにも試してみたんです。
中心円の中に”カーン”記し、外周に不動明王様のお力を起動者に授けると書いて……。
魔法陣の外円に指を触れた瞬間に意識が飛びました。
感覚でいえば、体の中のものが全部魔法陣に吸いだされて枯れた感じです。
横で見ていたセリカさんの話では、一気に干からびていったような感じだったそうです。
実際に私は衰弱しきってしまい、丸二日起き上がれませんでした。
”カーン”不動明王様は、シヴァ神であり破壊を司る神様でもあります。
考えてみれば、用もないのに呼び出して良い神様ではありませんよね。
深く反省した私は、しばらく神様には手を出さないようにしようと誓ったのです。
次に書くのなら、”シリー”美と幸運を司る吉祥天様にしようと……。
とにもかくにも、一命を取り留めた私は、それでも不動明王様を頼ってお守りを作ったのでした。
久しぶりに急ぎの仕事を片づけた私は、討伐依頼に同行させてもらいます。
メンバーのみんなは、すっかり魔道具を使いこなし、キックボードの移動速度も手伝ってAランクの依頼を3つから4つ掛け持ちでこなしているようです。
ギガンテスやサイクロプスといった大物相手に、縦横無尽に飛び回り倒していくんです。
「私の獲物は……。」
「早い者勝ちよ!」
どうしてこんなことに……。
「やっぱり、獲物を乗せる荷台付きのキックボードがほしいわね。」
「そんなに大きいのを乗せて飛ぶのは危ないですよ。」
「まあ、討伐証明の部位が小さいやつを選んでいるんだから、このままでいいじゃねえか。」
「でも、依頼を選ばなければ5件くらいいけるわよ。」
「俺は、今のペースで十分だと思うがな。」
「アイリスは何をそんなに焦っているんだよ。」
「だって、この装備をみんなが持つようになったら、受けられる依頼が減っちゃうじゃない。」
「そんな簡単にこれだけの装備を揃えられるやつなんていねえって。」
「そんなことないわよ。シルバーのパーティーだって自動小銃を手に入れたら、ペースをあげてきたじゃない。」
「俺たちだって、シャキがいなかったらこんなペースで依頼を処理するなんてできなかったんだ。」
「そうだな。元々、あいつらの方が実力は上だったんだからな。」
「でも、今は私たちが町で一番のパーティーじゃない!」
「だからって、魔道具に頼っていい気になってると、足元を救われるぞ。」
「ああ。油断は禁物だな。」
「油断なんてしてないわよ。」
「よく考えてみろよ。この魔道具がなかったら、俺たち三人でサイクロプス一体がやっとなんだぞ。」
「分かってるわよ、そんなこと!」
【あとがき】
少し体調を崩しています。毎日更新は厳しいかもしれません。ごめんなさい。
「やっぱり、これが救ってくれたのかな。」
私は二つに割れた木片をリュックから取り出しました。
神社ではないけど、そのお守りを布でくるみ手をあわせて感謝の言葉を述べます。
そして火をつけました。
「お護りいただき、ありがとうございました。」
お守りは煙になって空へ昇っていきます。
工房に戻った私は、同じような木片を7枚前にして、墨をすります。
書道の道具一式はリュックの中に入っていました。
丁寧に、祈りを込めて墨をすり、筆で木片に”カーン”の文字を記していきます。
「不動明王様、もの世界の者にも加護をお与えくださいまし。」
梵字の”カーン”は、不動明王様を司どっています。
その効果は、すべての災難を除き、光の道を示してくれると学んでいます。
お守りの3枚はメイドたちに渡し、残る3枚は冒険者パーティーのみんなにです。
実は、お守りを作る前に、梵字を魔法陣に使ったらどうなるのだろうかと、愚かにも試してみたんです。
中心円の中に”カーン”記し、外周に不動明王様のお力を起動者に授けると書いて……。
魔法陣の外円に指を触れた瞬間に意識が飛びました。
感覚でいえば、体の中のものが全部魔法陣に吸いだされて枯れた感じです。
横で見ていたセリカさんの話では、一気に干からびていったような感じだったそうです。
実際に私は衰弱しきってしまい、丸二日起き上がれませんでした。
”カーン”不動明王様は、シヴァ神であり破壊を司る神様でもあります。
考えてみれば、用もないのに呼び出して良い神様ではありませんよね。
深く反省した私は、しばらく神様には手を出さないようにしようと誓ったのです。
次に書くのなら、”シリー”美と幸運を司る吉祥天様にしようと……。
とにもかくにも、一命を取り留めた私は、それでも不動明王様を頼ってお守りを作ったのでした。
久しぶりに急ぎの仕事を片づけた私は、討伐依頼に同行させてもらいます。
メンバーのみんなは、すっかり魔道具を使いこなし、キックボードの移動速度も手伝ってAランクの依頼を3つから4つ掛け持ちでこなしているようです。
ギガンテスやサイクロプスといった大物相手に、縦横無尽に飛び回り倒していくんです。
「私の獲物は……。」
「早い者勝ちよ!」
どうしてこんなことに……。
「やっぱり、獲物を乗せる荷台付きのキックボードがほしいわね。」
「そんなに大きいのを乗せて飛ぶのは危ないですよ。」
「まあ、討伐証明の部位が小さいやつを選んでいるんだから、このままでいいじゃねえか。」
「でも、依頼を選ばなければ5件くらいいけるわよ。」
「俺は、今のペースで十分だと思うがな。」
「アイリスは何をそんなに焦っているんだよ。」
「だって、この装備をみんなが持つようになったら、受けられる依頼が減っちゃうじゃない。」
「そんな簡単にこれだけの装備を揃えられるやつなんていねえって。」
「そんなことないわよ。シルバーのパーティーだって自動小銃を手に入れたら、ペースをあげてきたじゃない。」
「俺たちだって、シャキがいなかったらこんなペースで依頼を処理するなんてできなかったんだ。」
「そうだな。元々、あいつらの方が実力は上だったんだからな。」
「でも、今は私たちが町で一番のパーティーじゃない!」
「だからって、魔道具に頼っていい気になってると、足元を救われるぞ。」
「ああ。油断は禁物だな。」
「油断なんてしてないわよ。」
「よく考えてみろよ。この魔道具がなかったら、俺たち三人でサイクロプス一体がやっとなんだぞ。」
「分かってるわよ、そんなこと!」
【あとがき】
少し体調を崩しています。毎日更新は厳しいかもしれません。ごめんなさい。
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