上 下
21 / 24
第二章

第21話 海だ!イカだ!マグロだ!?

しおりを挟む
 季節は晩夏。
 キラキラした波間に、照りつける太陽!
 テンション爆上がりの私は、着ているものを脱ぎ捨てて海へ!……なんていうこともなく、ひたすら浜を歩いてテングサを拾います。
 湘南海岸の近くに住んでいたお祖母ちゃんに教わったので、テングサは知っていました。
 紅い海藻で細かく枝分かれしているのがテングサです。
 寒天の作り方もお祖母ちゃんに教わったんです。

 テングサはすぐに布袋いっぱいになりました。
 ふと見ると、小さな集落がありました。
 10軒ほどの集落で、1軒だけ雑貨屋さんみたいなお店があります。

「こんにちわ。」
 声をかけると、奥からおばあさんが出てきました。
「おや、見ない顔だね。」
「シランからテングサをとりに来たんです。」
「食べるのかい?」
「ええ、少し加工してから。」
「変わってるねえ。町ならもっと美味しいものがあるだろうに。」
「えへへっ、今日はテングサの気分なんです。」
「それで、何か要るのかい?」
「何か、美味しい魚とか干物とかありませんか?」
「うちは、漁はやめちゃったからね。魚がほしいなら向かいのニギリんとこに行ってみな。町の魚屋に卸してるんだが、なんか残ってんだろ。」
「あっ、ありがとうございます。」

 向かいの家を訪ねると、赤ちゃんを抱いた奥さんが出てきました。
「突然すみません。魚とか干物とかあったら分けてほしいんですけど。」
「朝獲った魚は、すぐに町へ持って行っちゃうからね。」
「干物とかでもいいんですけど……。」
「ああ、朝干したイカならあるよ。」
「えっ、分けていただけるんですか!」
「ああ、2・3枚でよければ持っていきなよ。」
「ありがとうございます。おいくらですか?」
「いいよいいよ。カネは要らないから持っていきな。」
「そんな訳には……、あっ、私マギ・デザイナーなんですけど、何か必要な魔道具とかないですか?」
「魔道具ねぇ、あっ、そういえば明かりがあれば、もう少し朝早く出発できるのにってダンナが言ってたけど……。」

「確か、家の照明が2000ルーメンとかだったから、10倍くらいでいいかな。燃えないように耐熱の感じで、室内灯みたいには拡散しない感じですかね。」
 試しに起動してみたら、十分な明るさでした。
「じゃあ、これ使ってみてください。」
「へえ、本当にマギ・デザイナーなんだ。ありがとうね、遠慮なく使わせてもらうよ。」

 こうして私はイカの一夜干しを手に入れたのでした。

「マリーさん、イカをもらってきたから、今晩のおかずにしましょう。」
「へえ、イカなんて珍しいですね。」
「えっ、あんまり食べないんですか?」
「そんなに獲れるものじゃないので、漁師さんたちが自分で食べちゃったり、貴族のお屋敷に届けられちゃうんですよ。だから店にならぶことはほとんどないですね。」

「うん、美味しいです!」
「私は初めてですけど、美味しいです。」
「私も、調理したことはありますけど、自分で食べるのははじめてなんですよ。満足です。」

「また、魔道具作っていったら分けてくれるかな。」
「えっ、買ってきたんじゃないんですか?」
「お金は要らないって言われたから、その場で魔法陣だけ書いておいてきたの。」
「まあ、お嬢さまらしいですね。」
「そうだ!船外機だったら喜んでもらえそう。」
「船外機ですか?」
「ええ、船の後ろに取り付けて、船を早く走らせるの。」
「……、今日作っておいてきた魔道具って、どういう感じのものですか?」
「えっ、昼間と同じくらい明るくなる灯りだけど……。」
「昼間と……?」
「同じくらい……?」
「明るい……?」
「えっ、そんなおかしくない……よね?」


【あとがき】
 さて、次回はテングサを……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます

ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。 何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。 何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。 それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。 そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。 見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。 「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」 にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。 「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。 「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。

処理中です...