マギ・デザイナー -プロフェッサーと呼ばれた魔導具師-

モモん

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第二章

第21話 海だ!イカだ!マグロだ!?

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 季節は晩夏。
 キラキラした波間に、照りつける太陽!
 テンション爆上がりの私は、着ているものを脱ぎ捨てて海へ!……なんていうこともなく、ひたすら浜を歩いてテングサを拾います。
 湘南海岸の近くに住んでいたお祖母ちゃんに教わったので、テングサは知っていました。
 紅い海藻で細かく枝分かれしているのがテングサです。
 寒天の作り方もお祖母ちゃんに教わったんです。

 テングサはすぐに布袋いっぱいになりました。
 ふと見ると、小さな集落がありました。
 10軒ほどの集落で、1軒だけ雑貨屋さんみたいなお店があります。

「こんにちわ。」
 声をかけると、奥からおばあさんが出てきました。
「おや、見ない顔だね。」
「シランからテングサをとりに来たんです。」
「食べるのかい?」
「ええ、少し加工してから。」
「変わってるねえ。町ならもっと美味しいものがあるだろうに。」
「えへへっ、今日はテングサの気分なんです。」
「それで、何か要るのかい?」
「何か、美味しい魚とか干物とかありませんか?」
「うちは、漁はやめちゃったからね。魚がほしいなら向かいのニギリんとこに行ってみな。町の魚屋に卸してるんだが、なんか残ってんだろ。」
「あっ、ありがとうございます。」

 向かいの家を訪ねると、赤ちゃんを抱いた奥さんが出てきました。
「突然すみません。魚とか干物とかあったら分けてほしいんですけど。」
「朝獲った魚は、すぐに町へ持って行っちゃうからね。」
「干物とかでもいいんですけど……。」
「ああ、朝干したイカならあるよ。」
「えっ、分けていただけるんですか!」
「ああ、2・3枚でよければ持っていきなよ。」
「ありがとうございます。おいくらですか?」
「いいよいいよ。カネは要らないから持っていきな。」
「そんな訳には……、あっ、私マギ・デザイナーなんですけど、何か必要な魔道具とかないですか?」
「魔道具ねぇ、あっ、そういえば明かりがあれば、もう少し朝早く出発できるのにってダンナが言ってたけど……。」

「確か、家の照明が2000ルーメンとかだったから、10倍くらいでいいかな。燃えないように耐熱の感じで、室内灯みたいには拡散しない感じですかね。」
 試しに起動してみたら、十分な明るさでした。
「じゃあ、これ使ってみてください。」
「へえ、本当にマギ・デザイナーなんだ。ありがとうね、遠慮なく使わせてもらうよ。」

 こうして私はイカの一夜干しを手に入れたのでした。

「マリーさん、イカをもらってきたから、今晩のおかずにしましょう。」
「へえ、イカなんて珍しいですね。」
「えっ、あんまり食べないんですか?」
「そんなに獲れるものじゃないので、漁師さんたちが自分で食べちゃったり、貴族のお屋敷に届けられちゃうんですよ。だから店にならぶことはほとんどないですね。」

「うん、美味しいです!」
「私は初めてですけど、美味しいです。」
「私も、調理したことはありますけど、自分で食べるのははじめてなんですよ。満足です。」

「また、魔道具作っていったら分けてくれるかな。」
「えっ、買ってきたんじゃないんですか?」
「お金は要らないって言われたから、その場で魔法陣だけ書いておいてきたの。」
「まあ、お嬢さまらしいですね。」
「そうだ!船外機だったら喜んでもらえそう。」
「船外機ですか?」
「ええ、船の後ろに取り付けて、船を早く走らせるの。」
「……、今日作っておいてきた魔道具って、どういう感じのものですか?」
「えっ、昼間と同じくらい明るくなる灯りだけど……。」
「昼間と……?」
「同じくらい……?」
「明るい……?」
「えっ、そんなおかしくない……よね?」


【あとがき】
 さて、次回はテングサを……。
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