上 下
20 / 24
第二章

第20話 冷蔵庫がないなら作ればいいじゃない

しおりを挟む
 それからの一ヶ月、私は胸当てと自動小銃、それとシールドの製作に明け暮れました。
 道具屋のおじさんに頼んで特別なフェイスシールドを作ってもらい、それにも魔法陣を刻んで顔を熱から守っています。

「お嬢さま、根を詰めすぎですよ。少しは休憩されませんとお体に障りますわ。」
「大丈夫。もう少しですから。でも、セリカさん達がいてくれて本当に助かってます。ありがとうございます。」
 一日中座りっぱなしで、同じ姿勢で作業を続ける私に、セリカさんは時々こうしてマッサージをしてくれます。
 食事も作ってくれるし、掃除をする必要もない。私は、本当に魔法陣に集中することができました。

「終わったー!」
「お疲れさまでした。お風呂に入ってゆっくりしてください。そのあとで、髪を整えますから。」
「えっ?」
「髪がボサボサですよ。そんな姿では、外にお出しするわけにはまいりません。」

「はあ、何か甘いモノが食べたいな……。」
「甘いもの……ですか?」
「そう、プリンとかゼリーとかかな?」
「プリン……ですか?」
「あっ、こっちにはプリンってないのかな?」
「聞いたことがありませんが。」
「そっか、じゃあお風呂に入ったら久しぶりに作っちゃおうかな。」
「ご自分で作られるんですか?」
「そうよ。これでも、お菓子作りは得意だったの。」

 お風呂から出たあとで、キッチンにいって食材を確認します。
「玉子はないのね。ミルクも……。砂糖はあるし……、あれっ、そういえば冷蔵庫は?」
「冷蔵庫……ですか?」
 調理担当のマリーさんが不思議そうな顔で聞いてきました。
「そっか、冷蔵庫もないんだ……。」

 私は道具屋のおじさんに、木の箱の内側に鉄板を貼り付けたものを2つ注文します。
 中にはサビ止めの塗装と魔方陣と魔石を取り付けるスペースも用意してもらいました。
「こんな箱、なんに使うんだい?」
「内緒ですよ。でも、これもいっぱい注文が来るかもです。」
 魔石は魔力を貯めることがことができる石で、冷蔵庫のように効果を継続するものには必須なんだそうです。

 翌日、冷蔵庫が届きました。
「お嬢さま、こんな大きな箱を何に使うのでしょう?」
「マリーさんが楽しくなるものですよ。」
 私は用意してあった魔方陣と魔石をセットして、冷蔵庫を起動しました。
 片方は摂氏3度の風を絶えず循環させるもので、少し待てば庫内が冷えてくるでしょう。
 もう一つの方は、庫内をマイナス5度にキープして、一定量までキューブアイスを製造し続ける製氷機です。
 製氷機を起動すると、ガラガラと氷が出来上がっていきます。

「これからは氷が使い放題よ。」
「まさか、こんな魔道具を作ってしまわれるなんて……。」
「こっちの冷蔵庫は、もう少ししたら仲が凍らない程度に冷えるの。」
「凍らないとどうなるんですか?」
「食材が腐りにくくなるの。定期的にクリーンの魔法も発動するから、中はいつでも清潔だしね。」
「腐りにくい……ですか?」
「そうですよ。お肉とか、魚とか、ミルクとかが数日間痛まないのよ。」
「そんなことが可能なんですか?」
「ただ、水分はなくなっちゃうから、食材を入れた容器は蓋をしないといけないですけどね。じゃあ、買い物に行きましょうか。」
「はい。」

 私はマリーさんと買い物に出かけます。
「ミルクと玉子は買えたけど、テングサは無いか……。」
「テングサですか?」
「ええ、赤い海藻なんだけど……」
「赤い海藻……浜辺でならよく見かけますけどね……」
「海!海は誓いの?」
「西に歩いて30分くらいですね。」
「王都の反対側なのね。」

 一度家に帰った私は、すぐにキックボードで飛び出します。
 海へ!

【あとがき】
 テングサというのは、固有の品種ではなく総称なんだそうです。
 波打ち際にいくと赤い海藻が打ち上げられているのを見ますよね。いっぱい枝分かれしているような感じのアレです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

絶対防御とイメージ転送で異世界を乗り切ります

真理亜
ファンタジー
有栖佑樹はアラフォーの会社員、結城亜理須は女子高生、ある日豪雨に見舞われた二人は偶然にも大きな木の下で雨宿りする。 その木に落雷があり、ショックで気を失う。気がついた時、二人は見知らぬ山の中にいた。ここはどこだろう? と考えていたら、突如猪が襲ってきた。危ない! 咄嗟に亜理須を庇う佑樹。だがいつまで待っても衝撃は襲ってこない。 なんと猪は佑樹達の手前で壁に当たったように気絶していた。実は佑樹の絶対防御が発動していたのだ。 そんな事とは気付かず、当て所もなく山の中を歩く二人は、やがて空腹で動けなくなる。そんな時、亜理須がバイトしていたマッグのハンバーガーを食べたいとイメージする。 すると、なんと亜理須のイメージしたものが現れた。これは亜理須のイメージ転送が発動したのだ。それに気付いた佑樹は、亜理須の住んでいた家をイメージしてもらい、まずは衣食住の確保に成功する。 ホッとしたのもつかの間、今度は佑樹の体に変化が起きて... 異世界に飛ばされたオッサンと女子高生のお話。 ☆誤って消してしまった作品を再掲しています。ブックマークをして下さっていた皆さん、大変申し訳ございません。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...