上 下
18 / 24
第二章

第18話 セリカさん空を飛ぶ

しおりを挟む
 道具屋のおじさんから注文品が届いたのは3日後でした。

「すまんな。折り畳みとかの工夫が難しくて3日もかかっちまった。」
「いえ、無理いってすみませんでした。」
「いやいや、このテクは役立ちそうだからな、今後のためにもとことん突き詰めてみたんだよ。」
 おじさんのいう通り、広げるとカチッとロックされて安心感があります。
「これならおけます。5台追加でお願いします。」

 私は魔法陣のところに昨日作っておいた木片を貼り付けます。
 家の中庭に出て、魔法陣を起動するといつものように魔法陣が展開されたあとで底面から風が噴き出して、キックボードがふわりと浮かび上がります。
「うんうん、いい感じ。でも、前に進む力が足りないな……。」
 魔法陣をキャンセルして工房に戻ります。
「うーん、全体的なバランスも悪いし、魔法陣って3重円じゃダメ……かな?」
 別の木片を取り出して、3重の円を書き、中心に”飛行”と書きます。
 2番目の円には、下面と後部から風を噴出して浮かび上がりながら前進し、ハンドル操作で上下左右に進むことを記述。
 そして外側の円には、進行速度と安全対策を書きました。
 これを仮付けして、再び中庭へ。

 魔法陣に魔力を流すと、自転車くらいの勢いで飛び始めます。
「うっひゃー!」
 運動神経はよくない私ですが、自転車くらいは乗れます。
 調子に乗った私は敷地の外へ。
「お嬢さま!」
 セリカさんが家から飛び出してきました。
「ヤッホー!」
「危ないです!」
 仕方なく、いったんセリカさんの前に降りました。
「何ですか、これは!」
「えっ、空を飛ぶ魔道具だよ。」
「えっ?」
「あはは、新しく開発したものだから驚くよね。」
「そんなもの、聞いたことがありません。」
「そうだよね。いきなり見たら驚くよね。」
「はい……。」

「そうだ!セリカさん、これに乗ってみてくれないですか。一般の人の意見も聞きたいし。」
「はあ、私でよろしいのでしたら……。」
 セリカさんに簡単な操作方法を説明して試乗してもらいます。

「こ、これは……。」
 セリカさんは大きな声をあげた。
「気持ちいいです!」
 セリカさんは敷地内を3周まわって私の前に降りてきました。

「空を飛ぶなんて、こんなの初めてですわ。」
「操作性はどうですか?」
「そうですね、慣れないうちは木に突っ込みそうになりましたけど、大丈夫だと思います。」
「一応、衝突防止の安全対策は考えてありますから大丈夫ですよ。」
「ですが、本当にお嬢さまがこれを作られたんですか?」
「うん。一応マギ・デザイナーですからね。」
「最初に聞いてはおりましたが、まさかここまでの方とは思いませんでした。」

 いままでは、全員年に金貨3枚の契約だったそうだけど、年に金貨5枚で契約してもらいました。
 セリカさんにはチーフ手当として金貨1枚を加算してあります。
 そして、私のことはお嬢さまと呼ぶことになったらしいです。
 正式な雇い主はあくまでプロフェッサーなので、ちょうどいいのかもしれません。

 工房に戻った私は、微調整を施しながら例のペンを使って魔法陣を書いていきます。
 さっきのは時速10キロで書いてあったのですが、変動板の方は0からスタートして、5・10・20・30・50・80・120までの数を書いていきます。
 キックボードの前面には物理シールドを展開しているのだけど、時速50キロ以上では空気も通さないように追加しました。
 
 完成品ができた私は、早速魔道具ギルドを訪れ、リンを呼び出します。
「なぁに?私はシャキの専属じゃないんだからね!」
「えへへっ、そんなことを言っていいのかな。王都へ持って行ってもいいんだけどな。」

 飛んで見せた直後、リンは慌ててギルマスを呼びに行くのでした。


【あとがき】
 飛ぶキックボード完成です。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...