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第二章
第15話 認定式
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認定式は、城の会議室で行われました。
主催者側は陛下と産業大臣、兵団長と総務大臣。および冒険者ギルドマスターと魔道具ギルドマスターの6人。
私の側は、シランから同行してくれた二人だけでした。
陛下から認定書と刻印をいただき、その後は歓談になります。
「それで、プロフェッサー君は、王都に来る気はないのかね。」
総務大臣に聞かれ、私は正直に答えます。
「私を拾ってくれた冒険者パーティーのメンバーがおりますし、当面はシランを離れたくありません。」
「残念だねえ。城のお抱えマギ・デザイナーになってもらいたかったのだが。」
「申し訳ございません。」
「まあ、軍としては今回提案してくれた3品を納品してくれれば良いので、どこで作ろうが問題ありませんがね。」
「わしも見させてもらったが、あの自動小銃と胸当てがあれば我が国は安泰じゃな。」
「陛下、お言葉ですが、彼ならもっと素晴らしい魔道具を開発してくれると思います。シランにいるよりも王都にきてくれれば……。」
「まあ、冒険者ギルドとしたらそうだろうな。」
「いや、産業局としては、武器・防具だけでなく、生活に役立つ魔道具を期待しておるのだが……。」
こんな風に意見が飛び交い、認定式は終わりました。
「それにしても、完全に男の子だと思われていたわよね。」
「ああ、俺だってシャキだって分からなかったからな。」
「えへへっ。うまくいきました。」
「それで、俺はこのまま帰るが、お前たちはどうするんだ?」
「すみません。用事ができましたので、2・3日こっちに残ろうと思います。」
「だったら、私も付き添うわよ。」
「そうか、気をつけてな。」
私はリンさんと一緒に刀鍛冶の工房へおじゃまします。
「おお、やっぱりきおったな。」
「はい。最初にお断りしておきますが、タングステンは刀に向かないと思います。」
「ほう、なぜじゃ。」
「硬すぎるので、衝撃には弱いと思います。」
「ああ、その通りじゃ。傷はつかないのじゃが、何度も衝撃を加えると割れてしまうのじゃ。」
「ですから、刀の心材には使えると思いますが、周りには柔らかい鉄が最適だと思います。」
「満点じゃな。まあ、タングステンの使い道としては、短いナイフや彫刻刀のような道具じゃろうな。」
「それでも、素材としてお持ちなのはなぜでしょうか?」
「鍛冶職としてな、これを叩いてみたいのじゃよ。」
「そうですか。私なりに加工する方法を見つけました。」
「奇遇じゃな、わしも思いついたぞ。まあ、それなりのマギ・デザイナーが必要じゃがな。」
「今日、それなりのマギ・デザイナーだと認定されました。」
「ああ、白ヒゲのジジイから聞いておるよ。」
「まずはレンガで作った炉が必要です。」
「中庭に作ってあるぞ。」
「工具にはすべて、この耐熱と強化の魔法陣を貼り付けていただきます。」
「ほう、もう作ってあるのかよ。」
「炉に張るのは、この耐熱・強化と内部を3700度まで加熱する魔法陣です。」
「うまくいったら、紙じゃなくきちんと書き込んでくれよな。」
「当然です。」
「道具の耐熱はどれくらいにしたんじゃ?」
「5000度です。」
「十分じゃな。」
こうして、私はタングステンのキリ先を5本手に入れました。
刀鍛冶のクニシゲお爺さんは、キリ先を取り付ける軸受けまで作ってくれました。
私は軸受けに魔方陣を刻みます。キリ先の強化と2000度の過熱をして、軸受け部分は冷却します。
その特製ペンを使って、クニシゲお爺さんの工具に直接魔方陣を書いていきます。
「凄いです。タガネで刻むのよりもスムーズで思った通りの字が書けます!」
「光栄じゃよ。プロフェッサー一発目の仕事をしてもらったんじゃからな。これで、わしは国で唯一のタングステン技師になったわけじゃ。」
【あとがき】
爺さんとシャキの会話が気に入っています。気のあった仲間のようなセリフが……。
主催者側は陛下と産業大臣、兵団長と総務大臣。および冒険者ギルドマスターと魔道具ギルドマスターの6人。
私の側は、シランから同行してくれた二人だけでした。
陛下から認定書と刻印をいただき、その後は歓談になります。
「それで、プロフェッサー君は、王都に来る気はないのかね。」
総務大臣に聞かれ、私は正直に答えます。
「私を拾ってくれた冒険者パーティーのメンバーがおりますし、当面はシランを離れたくありません。」
「残念だねえ。城のお抱えマギ・デザイナーになってもらいたかったのだが。」
「申し訳ございません。」
「まあ、軍としては今回提案してくれた3品を納品してくれれば良いので、どこで作ろうが問題ありませんがね。」
「わしも見させてもらったが、あの自動小銃と胸当てがあれば我が国は安泰じゃな。」
「陛下、お言葉ですが、彼ならもっと素晴らしい魔道具を開発してくれると思います。シランにいるよりも王都にきてくれれば……。」
「まあ、冒険者ギルドとしたらそうだろうな。」
「いや、産業局としては、武器・防具だけでなく、生活に役立つ魔道具を期待しておるのだが……。」
こんな風に意見が飛び交い、認定式は終わりました。
「それにしても、完全に男の子だと思われていたわよね。」
「ああ、俺だってシャキだって分からなかったからな。」
「えへへっ。うまくいきました。」
「それで、俺はこのまま帰るが、お前たちはどうするんだ?」
「すみません。用事ができましたので、2・3日こっちに残ろうと思います。」
「だったら、私も付き添うわよ。」
「そうか、気をつけてな。」
私はリンさんと一緒に刀鍛冶の工房へおじゃまします。
「おお、やっぱりきおったな。」
「はい。最初にお断りしておきますが、タングステンは刀に向かないと思います。」
「ほう、なぜじゃ。」
「硬すぎるので、衝撃には弱いと思います。」
「ああ、その通りじゃ。傷はつかないのじゃが、何度も衝撃を加えると割れてしまうのじゃ。」
「ですから、刀の心材には使えると思いますが、周りには柔らかい鉄が最適だと思います。」
「満点じゃな。まあ、タングステンの使い道としては、短いナイフや彫刻刀のような道具じゃろうな。」
「それでも、素材としてお持ちなのはなぜでしょうか?」
「鍛冶職としてな、これを叩いてみたいのじゃよ。」
「そうですか。私なりに加工する方法を見つけました。」
「奇遇じゃな、わしも思いついたぞ。まあ、それなりのマギ・デザイナーが必要じゃがな。」
「今日、それなりのマギ・デザイナーだと認定されました。」
「ああ、白ヒゲのジジイから聞いておるよ。」
「まずはレンガで作った炉が必要です。」
「中庭に作ってあるぞ。」
「工具にはすべて、この耐熱と強化の魔法陣を貼り付けていただきます。」
「ほう、もう作ってあるのかよ。」
「炉に張るのは、この耐熱・強化と内部を3700度まで加熱する魔法陣です。」
「うまくいったら、紙じゃなくきちんと書き込んでくれよな。」
「当然です。」
「道具の耐熱はどれくらいにしたんじゃ?」
「5000度です。」
「十分じゃな。」
こうして、私はタングステンのキリ先を5本手に入れました。
刀鍛冶のクニシゲお爺さんは、キリ先を取り付ける軸受けまで作ってくれました。
私は軸受けに魔方陣を刻みます。キリ先の強化と2000度の過熱をして、軸受け部分は冷却します。
その特製ペンを使って、クニシゲお爺さんの工具に直接魔方陣を書いていきます。
「凄いです。タガネで刻むのよりもスムーズで思った通りの字が書けます!」
「光栄じゃよ。プロフェッサー一発目の仕事をしてもらったんじゃからな。これで、わしは国で唯一のタングステン技師になったわけじゃ。」
【あとがき】
爺さんとシャキの会話が気に入っています。気のあった仲間のようなセリフが……。
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