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第二章
第14話 アイロンとドライヤー
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私は道具屋さんに入って、木材の切れ端に金属のパイプを通してもらった。
それから雑貨屋さんで、髪用のワックスを買います。
「ねえ、どうするのそんなもの?」
「魔道具を作るんですよ。」
「なんの?」
「内緒です。」
私はシドさんに教えてもらった刀鍛冶のお店を訪れました。
「すみません、シドさんに紹介されてきたんですけど。」
「ああん、シドだと……また厄介ごとか……。」
作務衣に、ボサボサの白髪。片目が不自由なのか黒い眼帯をしている小柄なおじいさんが応えてくれました。
「いえ、熱に強い金属を教えてもらいたくて。」
「魔道具関連か、何に使うんだ?」
「2000度くらいに過熱して、金属に文字を書けないかと思いまして。」
「どんな金属に魔法円を書くつもりなんだ。」
「鉄やミスリル銀です。」
「じゃあ、タングステンが最適だろうな。だが、どうやってその温度まで過熱するつもりだ。」
「魔法陣に到達温度を指定してやればできると思いますけど。」
お爺さんにギロっと睨まれました。
「鉄が何度で溶けるのかわかっているような口ぶりだな。」
「確か、1500度くらいです。銀はもっと低かったはずなので、2000度なら大丈夫だと思います。」
「タングステンはどれくらいで溶けるんだ?」
「えっと、確か一番高温だったハズなのので3500度くらいだと思います。」
「もし、お前さんの言っていることが正しいとする……、だが、その考えだとタングステンは加工どころか欠片をとることもできやしねえだろ。」
「あっ……。」
「分かったかよ。確かにタングステンはあるが、加工できねえんだよ。」
「むう……。」
「諦めて帰んな。俺もいろいろと試してみたが、無理なものはムリなんだ。」
「じゃあ、それを克服したらタングステンのキリみたいなのを作ってもらえますか?」
「ああ、克服できるもんならな。楽しみにしてんぜ。」
そのあとで、私は裾上げしてもらった服を受け取り、宿舎に帰りました。
「うーん……。どうやったら……。」
「シャキ、何を考えてるのさ。」
「タングステンを加工するにはどうしたらいいのかなって……。」
「ご飯の時に、そんなこと考えたって仕方ないでしょ。」
「シャキは馬鹿だな。」
「えっ?」
「高い温度に耐えられる工具と炉を作ってやればいいだけじゃねえか。」
「あっ!」
そうだった。数値がわかっているなら、それに耐えられるように魔法陣で強化してやればいいだけの話だった。
「ジュダイさん、ありがとうございます!」
「えっ、俺、そんなに役に立つこと言ったか?」
「えへへっ、当たり前のことでした。」
部屋に帰った私は、翌朝に備えてヘアドライヤーの魔方陣を買ってきた道具に書き込みます。
翌朝、私はブラウスにアイロンをかけ、ドライヤーで髪をセットしてワックスを塗ります。
サイドの髪を後ろに流して耳を出せば長髪の男性みたいになります。
「シャキってば、完全に男の子みたいじゃない。」
「えへっ、似合ってるかな?」
「うんうん。それに、アイロンとドライヤー、私にも貸してよ、便利そうじゃない。」
「いくらでも使っていいよ。帰りには処分するつもりだから。」
「えっ、もったいないじゃない!」
「あの、服屋さんにはお世話になったから、あげていくつもりなの。」
「ああ、そういうことね。服屋さんてば、シャキがSランクのマギ・デザイナーだって知ったら驚きそうね。」
「ドライヤーは、リンにあげるわよ。シランにかえったらもうちょっとまともなの作るつもりだけど。」
「じゃあ、私がデザインしてあげるわよ。アイロンとドライヤーね。」
「うふっ、期待してるわ。」
【あとがき】
次回はいよいよ認定式です。
といっても、そんな大きなイベントではなく、城の要職者が集まる感じです。
それから雑貨屋さんで、髪用のワックスを買います。
「ねえ、どうするのそんなもの?」
「魔道具を作るんですよ。」
「なんの?」
「内緒です。」
私はシドさんに教えてもらった刀鍛冶のお店を訪れました。
「すみません、シドさんに紹介されてきたんですけど。」
「ああん、シドだと……また厄介ごとか……。」
作務衣に、ボサボサの白髪。片目が不自由なのか黒い眼帯をしている小柄なおじいさんが応えてくれました。
「いえ、熱に強い金属を教えてもらいたくて。」
「魔道具関連か、何に使うんだ?」
「2000度くらいに過熱して、金属に文字を書けないかと思いまして。」
「どんな金属に魔法円を書くつもりなんだ。」
「鉄やミスリル銀です。」
「じゃあ、タングステンが最適だろうな。だが、どうやってその温度まで過熱するつもりだ。」
「魔法陣に到達温度を指定してやればできると思いますけど。」
お爺さんにギロっと睨まれました。
「鉄が何度で溶けるのかわかっているような口ぶりだな。」
「確か、1500度くらいです。銀はもっと低かったはずなので、2000度なら大丈夫だと思います。」
「タングステンはどれくらいで溶けるんだ?」
「えっと、確か一番高温だったハズなのので3500度くらいだと思います。」
「もし、お前さんの言っていることが正しいとする……、だが、その考えだとタングステンは加工どころか欠片をとることもできやしねえだろ。」
「あっ……。」
「分かったかよ。確かにタングステンはあるが、加工できねえんだよ。」
「むう……。」
「諦めて帰んな。俺もいろいろと試してみたが、無理なものはムリなんだ。」
「じゃあ、それを克服したらタングステンのキリみたいなのを作ってもらえますか?」
「ああ、克服できるもんならな。楽しみにしてんぜ。」
そのあとで、私は裾上げしてもらった服を受け取り、宿舎に帰りました。
「うーん……。どうやったら……。」
「シャキ、何を考えてるのさ。」
「タングステンを加工するにはどうしたらいいのかなって……。」
「ご飯の時に、そんなこと考えたって仕方ないでしょ。」
「シャキは馬鹿だな。」
「えっ?」
「高い温度に耐えられる工具と炉を作ってやればいいだけじゃねえか。」
「あっ!」
そうだった。数値がわかっているなら、それに耐えられるように魔法陣で強化してやればいいだけの話だった。
「ジュダイさん、ありがとうございます!」
「えっ、俺、そんなに役に立つこと言ったか?」
「えへへっ、当たり前のことでした。」
部屋に帰った私は、翌朝に備えてヘアドライヤーの魔方陣を買ってきた道具に書き込みます。
翌朝、私はブラウスにアイロンをかけ、ドライヤーで髪をセットしてワックスを塗ります。
サイドの髪を後ろに流して耳を出せば長髪の男性みたいになります。
「シャキってば、完全に男の子みたいじゃない。」
「えへっ、似合ってるかな?」
「うんうん。それに、アイロンとドライヤー、私にも貸してよ、便利そうじゃない。」
「いくらでも使っていいよ。帰りには処分するつもりだから。」
「えっ、もったいないじゃない!」
「あの、服屋さんにはお世話になったから、あげていくつもりなの。」
「ああ、そういうことね。服屋さんてば、シャキがSランクのマギ・デザイナーだって知ったら驚きそうね。」
「ドライヤーは、リンにあげるわよ。シランにかえったらもうちょっとまともなの作るつもりだけど。」
「じゃあ、私がデザインしてあげるわよ。アイロンとドライヤーね。」
「うふっ、期待してるわ。」
【あとがき】
次回はいよいよ認定式です。
といっても、そんな大きなイベントではなく、城の要職者が集まる感じです。
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