マギ・デザイナー -プロフェッサーと呼ばれた魔導具師-

モモん

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第一章

第6話 買い物

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「あの……アイリスさん。」
「なに?」
「その、居候の身で申し上げにくいんですけど……。」
「じれったいわね。何よ。」
「できれば、着替えたいんですけど。」
「ああ、あんた毎日それだもんね。いいわよ着替えてきなさいよ。」
「それが……その……。」
「どうしたの。」
「着替え……ないんです。」
「そのバッグの中に入ってないの?」
「……はい。」
「しょうがないわね。じゃ、買い物にいくよ。」
「お願いします……。」

 昨日、食材の買出しに行ったとき、可愛いワンピの飾ってある洋服屋さんを見つけたんです。
 私のワクワクはとまりません。……が、アイリスさんはそこを通り過ぎて行きます。
 ……あれっ、アイリスさんの行きつけはここじゃないんだ。
 そう思ってついていくと、アイリスさんはその先にあった防具屋さんに入っていきます。
「そっか、先にアイリスさんの防具を見るんですね。」
「私に、今必要なものはないわよ。」
「えっ?」
 カラン
「おじさん、こんにちわ。」
「うん?アイリスちゃん、久しぶりだね。」
「この子に作務衣2着と、冒険者用の装備一式を2組ね。」
「あいよ。」
「それと、身体強化と物理防御と魔法防御の魔法円がついたものあるかな?」
「布でよければあるよ。」
「あとは、下着3組ね。」
 おじさんは私をチラッと見ました。
「上は子供用でよさそうだな。」
「あっ、サンダルも追加で。」

 ガーン……です。
 見ず知らずのおじさんから、幼児体形だといわれてしまいました……。

 トボトボ……。
「なによ、せっかく投資してあげたんだからしっかりと恩返しするのよ。」
「……はい。」
 行きの高揚感はどこへ飛んで行ってしまったの……。
 洋服屋さんの前を通り過ぎる時に言われました。
「あのね。こういう服が欲しいなら、自分で稼いで買いなさい。」
「えっ?」
「最高の魔法円が付与された防具なら、金貨10枚で売れるわ。」
 今日、買ってもらったもの全部で金貨2枚だったのです。
「金貨10枚あれば、貴族用のドレスだって買えるわよ。」
「貴族用のドレス……。はい!頑張ります!」
「ふっ、ちょろいわね。」
「えっ?」
「何でもないわ。」

 その日から、サンプル用に買ってもらった魔法円を読み解いて、漢字の魔方陣を作っていきます。
 紙やボールペンはもったいないと言われ、この世界の炭と筆で15センチほどの板切れに書いていきます。

「身体強化は、体強化でいいかな。効果は、持続30分で、身体能力を10倍にあげる。……ここはUPでいいかな。」

「ゼイゼイ!ダ、ダメです。効果が切れたあとの疲労感が、半端……ないです。」
「じゃあ、効果が切れた時に体力回復を追加したら?」
「そ、そんなのアリなんですか?」
「知らないわよ。普通の身体強化なんてせいぜい3倍くらいなんだから。あんたみたいに、5メートルも飛び上がったり、一撃で木をへし折るのなんて見たことないんだからさ。」
「そ、そうなんですか……。」
 余白に体力回復を付け足した。

「じゃあ、次は物理防御ね。覚悟はいい?」
「覚悟って、その棒で叩くつもりですか?」
「最初は軽くやるわよ。えい!」
 ぽかっ!
「い、痛いです!」
「どこか間違ってるんじゃないの?」
「……あっ、防ぐの字がテヘンになってました。」
 間違えた部分を削って正しく書き足す。
「じゃあいくわよ。えい!」
「よし!成功です。」
「じゃあ、次は剣でいくわよ。えい!」
「えっ、えっ、ぎゃあ!……って、痛くない!」
「ちっ!」
「何ですかその舌打ちは!」
「魔法防御用意して!」
「えっ、待ってくださいよ。もう一度見直しますからぁ!」

【あとがき】
 少し、かたちになってきたようです。
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