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第9章 奪還編
地獄の115丁目 アルカディア・ボックスの攻防④
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【魔眼開眼】を使ったとは言え、身体能力は多分あっちが上。持久戦は不利。持てる力を全部出してアイツを倒す!
「お主、眼の色だけでなく輝きも増しておる。経験上、そういう奴は強い。こちらも本気で行かせてもらうぞ!」
上等! 全て見切っ……
「はあっ!」
思ってたより早い!
「くっ……!」
「避けるか! ならば!」
次々に襲い掛かるラクライの斬撃。魔眼で回避しつつダママの噛み技、フェンリルの爪技で返していく。
「なんと不思議な動きよ!」
「避け方はフェニックスを真似てみた!」
ひらりひらりと鳥の動きを取り入れ、舞うように敵の攻撃を避ける。だが、剣撃のようにまっすぐで速い動きには合っていないような気がしたので動きを変えてみる。
「キラービーの動き!」
蜂のように舞い、蜂のように刺す。ラビィの毒をキャラウェイさんに解析してもらったので魔法で爪の先から生成できるようにした。これを喰らえば、一撃死とはいかなくても、激痛が走るぐらいの効果はある。
「ぬううっ! やりおる! 仕方あるまい!」
言うが早いか、ラクライの剣が僕の肩を貫く。
「えっ……?」
今まで剣筋は全て見切ってきたはず。今回も十分に余裕を持って剣を避けたはずだ。目の錯覚じゃなければ……、剣先が伸びた?
「このような刀、拙者とて使いたくはなかったが。ふむ、なかなかどうして便利ではないか! ニムバス殿に感謝せねば!」
くぅっ……! 痛い痛い痛い痛い! でも我慢我慢ガマン! キャラウェイさん特製の塗り薬で止血!
「ネタが分かったからにはもう当たらないよ!」
「さて、それはどうかな?」
斬撃は……っ! 紙一重で避けると当たる! 突きもヤバい! とにかく懐へ飛び込まないとこのままじゃじり貧だ!
「どうした! 威勢が良かったのは幻か!?」
不敵な笑みを浮かべながらラクライが斬りかかってくる。躱しても躱してもそのたびに浅い傷が増えていく。だが、繰り返される攻防で、魔眼が剣筋をどんどん吸収し、徐々に眼が慣れてきた。
「うぬっ! 動きがどんどん良くなってきおる! だが、躱しておるだけでは拙者には勝てんぞ!」
確かに。このままでは決め手に欠ける。集中が必要なアレを出すには今の僕には隙が少なすぎる。距離を取ったところでこの伸縮自在の剣には無意味だ。せめて5秒、こいつの気を逸らせれば……。
「フハハハ! 拙者の気力が果てるか、お主の失血死が先か! 勝負勝負!!」
血を流しすぎたせいか体が段々重くなってきた。これはさすがにダメかも……。
と諦めかけたその時、目の前を高速で物体が通過した。
「おらぁ! ウチの若いもんに何さらしとるんじゃあ!」
「ようも、セージ君切り刻んでくれたな!」
「うちらの飼育員ケガさせてからに……!!」
「セージ君、ここはあたしらに任してまずは血ぃ止め!」
超ヘルワームの群れが現れた!
「か、カブタン……?」
「おうよ! ここをどこやと思ってんねん! 魔王様謹製、アルカディア・ボックスの中やぞ!」
「アルがセージ君がピンチやて教えてくれたわ!」
「そいつの剣、伸び縮みするから気を付けて!」
カブタン達は頷いたのかどうかよくわからなかったけど、僕にはOKマークを出してくれたように見えた。
「害虫が!!」
ラクライが剣を振り回すが、超速で動き回るカブタン達を捉えきれない。
「剣が増える訳や無いんやから要はこいつの手元をよう見とったらエエんや!」
カブタンがみんなに指示を飛ばす。カブタン達をこれ以上危険にさらさないためにも応急処置と魔力集中!
「はぁぁぁぁっ!!」
魔眼で捉えたみんなの特長と特徴を魔力で具現化。それが僕の最終技、【魔眼魔装《イービル・アーム》】!
特に今回はスピードと威力を重視して、アルミラージの角にフェニックスの炎を纏わせ、ヘルワームの速度で突っ込む! 僕がイメージに魔力を流し込むと、額には炎を纏った角が、背中にはヘルワームの羽が生えた。
これで、奴を戦闘不能にする!
「カブタン! 準備できた!」
「よっしゃ! いてもうたれ! セージ!」
カブタン達が少し距離を取るのを見届けたのち、ラクライを目掛けてグングン加速。
「当たるかぁ!」
ラクライが振り下ろした剣をクルリと躱し、さらに加速。
「くらえ! ヘル・ファイア・アロー!!!」
「がぁぁあぁぁぁっ!」
炎を纏った角はラクライの肩を貫き、消えた。
ラクライは刀を地面に落とし、その場に倒れた。
「か、勝った……」
「ネーミングセンスはともかく、やったな! セージ!」
僕が、テンションが上がって必殺技を叫んでいたことを思い出し真っ赤になっていた頃。ローズとステビアが到着してラクライを結界に閉じ込めていた。
「後はあのいやらしい目つきの隊長だけね!」
「キャラウェイさんなら心配ないですよ!」
「とりあえず……まだ思考は閉じてる……みたい」
「よっしゃ! 俺らはヘル・アローの練習や!」
僕は、少しでもキャラウェイさんの力になりたくて、カブタン達から少しでも逃げ出したくて、その場から急いで離れた。
☆☆☆
「俺の相手は貴様か。相手にとって不足無し!」
「私は大いに不足有りなんですが」
「その虚勢がいつまで保てるかな? フフフ」
ニヤニヤと気分の悪い笑顔で目の前の男が構えを取る。全くもって度し難い輩です。
「おっと、今日の為に持ち込んだ秘薬、神器の数々をお披露目せねば!」
「むっ、さすがにそれは興味深い!」
ニムバスはゴソゴソと懐をまさぐると、丸薬のような物を取り出し、ガリガリと不快な音を立てて噛み砕いた。
「これぞ天界に伝わる秘薬、聖護丸! これにより、私の肉体は限界を超えて強化される!」
「ならば、私も! 特製ジュースinマンドラゴラ!(下半身への影響抜き)」
「そして、敵を自動追尾する鎖鎌!」
「お手製メガネ!」
「くっ……! 舐めおって!! いけいっ!」
ニムバスの放った鎖鎌が蛇のように襲い掛かる。お手製メガネを通して魔力の流れを解析すると、どうやらニムバスの手元から鎌のコアに向かって魔力を流しているらしい。
「なるほど、なるほど」
「はぁーっはっはぁ! どうした! 逃げ回るだけかぁ!?」
「いえ、あのですね。この武器、たぶん。たぶんですよ?」
余り、指摘してあげるのも可哀想だが教えてあげないと滑稽すぎる。
「あなたの動きより遅いと思うんです」
「何っ!?」
「あなた自身、肉体派に見えるのですが、魔力操作はお得意で?」
ニムバスはうろたえ、こちらから目を逸らす。
「もちろん、隊長の名に恥じぬ力量を持っておる!」
「戦闘中に敵から目を逸らすのはいけませんね」
一瞬の隙をついてニムバスの手をはたき、鎖鎌を盗む。
「なるほど、ここに魔力を流すのか」
「あっ!」
ニムバスが操る倍のスピードで元の持ち主に襲い掛かる鎖鎌。しかし、見立て通り彼は鎖鎌の攻撃を全て躱し、魔力の供給源である鎖を引きちぎった。
「よくも……よくも俺の大事なコレクションを!」
「いや、壊したのはあなたですし」
「黙れ! もういい! この超強化された肉体でお前を捕縛または行動不能にしてくれる!」
ニムバスが地面を蹴り、一瞬で間合いを詰めて拳打を浴びせてくる。全て的確に急所を狙い、かつ威力も相当なものだ。しかし。
この三か月……。私がやってきたのはただひたすら肉体の強化と、ダママ達との戦闘訓練。派手な必殺技の習得などは一切なし。ただひたすら戦闘の勘を取り戻すことに時間を割いた。いや、むしろこの鍛錬自体は地獄でドラメレクに敗れて以降欠かしていないルーティーンだ。おかげで肉体派の彼の攻撃は手玉にとれるほど。
さすがにダママやヴォルに比べれば攻撃は早く重く。狙いも正確だが、正確過ぎて読みやすい。微妙に当たるポイントをずらすだけでダメージは何分の一にもなる。
「くらえ! くらえ!」
「……。もういいでしょう」
気分よく打ち据えていたニムバスの拳を掴み、握り潰し、頭をつかんで、膝蹴りを入れた。
「あぐっ!」
「ほう、倒れませんか。さすが、秘薬の効果は素晴らしい!」
「馬鹿な……! バカな……!?」
「さあ、何発で倒れるか、頑張ってください!」
一秒間に50発。絶え間なく顔面、腹、レバー等を打ち抜き、彼が倒れたのは
10秒後の事だった。
「500発! 大したものです! さすが曇天の隊長!」
さてさて、他に彼が持ち込んだ物は何かありますかね………。
「お主、眼の色だけでなく輝きも増しておる。経験上、そういう奴は強い。こちらも本気で行かせてもらうぞ!」
上等! 全て見切っ……
「はあっ!」
思ってたより早い!
「くっ……!」
「避けるか! ならば!」
次々に襲い掛かるラクライの斬撃。魔眼で回避しつつダママの噛み技、フェンリルの爪技で返していく。
「なんと不思議な動きよ!」
「避け方はフェニックスを真似てみた!」
ひらりひらりと鳥の動きを取り入れ、舞うように敵の攻撃を避ける。だが、剣撃のようにまっすぐで速い動きには合っていないような気がしたので動きを変えてみる。
「キラービーの動き!」
蜂のように舞い、蜂のように刺す。ラビィの毒をキャラウェイさんに解析してもらったので魔法で爪の先から生成できるようにした。これを喰らえば、一撃死とはいかなくても、激痛が走るぐらいの効果はある。
「ぬううっ! やりおる! 仕方あるまい!」
言うが早いか、ラクライの剣が僕の肩を貫く。
「えっ……?」
今まで剣筋は全て見切ってきたはず。今回も十分に余裕を持って剣を避けたはずだ。目の錯覚じゃなければ……、剣先が伸びた?
「このような刀、拙者とて使いたくはなかったが。ふむ、なかなかどうして便利ではないか! ニムバス殿に感謝せねば!」
くぅっ……! 痛い痛い痛い痛い! でも我慢我慢ガマン! キャラウェイさん特製の塗り薬で止血!
「ネタが分かったからにはもう当たらないよ!」
「さて、それはどうかな?」
斬撃は……っ! 紙一重で避けると当たる! 突きもヤバい! とにかく懐へ飛び込まないとこのままじゃじり貧だ!
「どうした! 威勢が良かったのは幻か!?」
不敵な笑みを浮かべながらラクライが斬りかかってくる。躱しても躱してもそのたびに浅い傷が増えていく。だが、繰り返される攻防で、魔眼が剣筋をどんどん吸収し、徐々に眼が慣れてきた。
「うぬっ! 動きがどんどん良くなってきおる! だが、躱しておるだけでは拙者には勝てんぞ!」
確かに。このままでは決め手に欠ける。集中が必要なアレを出すには今の僕には隙が少なすぎる。距離を取ったところでこの伸縮自在の剣には無意味だ。せめて5秒、こいつの気を逸らせれば……。
「フハハハ! 拙者の気力が果てるか、お主の失血死が先か! 勝負勝負!!」
血を流しすぎたせいか体が段々重くなってきた。これはさすがにダメかも……。
と諦めかけたその時、目の前を高速で物体が通過した。
「おらぁ! ウチの若いもんに何さらしとるんじゃあ!」
「ようも、セージ君切り刻んでくれたな!」
「うちらの飼育員ケガさせてからに……!!」
「セージ君、ここはあたしらに任してまずは血ぃ止め!」
超ヘルワームの群れが現れた!
「か、カブタン……?」
「おうよ! ここをどこやと思ってんねん! 魔王様謹製、アルカディア・ボックスの中やぞ!」
「アルがセージ君がピンチやて教えてくれたわ!」
「そいつの剣、伸び縮みするから気を付けて!」
カブタン達は頷いたのかどうかよくわからなかったけど、僕にはOKマークを出してくれたように見えた。
「害虫が!!」
ラクライが剣を振り回すが、超速で動き回るカブタン達を捉えきれない。
「剣が増える訳や無いんやから要はこいつの手元をよう見とったらエエんや!」
カブタンがみんなに指示を飛ばす。カブタン達をこれ以上危険にさらさないためにも応急処置と魔力集中!
「はぁぁぁぁっ!!」
魔眼で捉えたみんなの特長と特徴を魔力で具現化。それが僕の最終技、【魔眼魔装《イービル・アーム》】!
特に今回はスピードと威力を重視して、アルミラージの角にフェニックスの炎を纏わせ、ヘルワームの速度で突っ込む! 僕がイメージに魔力を流し込むと、額には炎を纏った角が、背中にはヘルワームの羽が生えた。
これで、奴を戦闘不能にする!
「カブタン! 準備できた!」
「よっしゃ! いてもうたれ! セージ!」
カブタン達が少し距離を取るのを見届けたのち、ラクライを目掛けてグングン加速。
「当たるかぁ!」
ラクライが振り下ろした剣をクルリと躱し、さらに加速。
「くらえ! ヘル・ファイア・アロー!!!」
「がぁぁあぁぁぁっ!」
炎を纏った角はラクライの肩を貫き、消えた。
ラクライは刀を地面に落とし、その場に倒れた。
「か、勝った……」
「ネーミングセンスはともかく、やったな! セージ!」
僕が、テンションが上がって必殺技を叫んでいたことを思い出し真っ赤になっていた頃。ローズとステビアが到着してラクライを結界に閉じ込めていた。
「後はあのいやらしい目つきの隊長だけね!」
「キャラウェイさんなら心配ないですよ!」
「とりあえず……まだ思考は閉じてる……みたい」
「よっしゃ! 俺らはヘル・アローの練習や!」
僕は、少しでもキャラウェイさんの力になりたくて、カブタン達から少しでも逃げ出したくて、その場から急いで離れた。
☆☆☆
「俺の相手は貴様か。相手にとって不足無し!」
「私は大いに不足有りなんですが」
「その虚勢がいつまで保てるかな? フフフ」
ニヤニヤと気分の悪い笑顔で目の前の男が構えを取る。全くもって度し難い輩です。
「おっと、今日の為に持ち込んだ秘薬、神器の数々をお披露目せねば!」
「むっ、さすがにそれは興味深い!」
ニムバスはゴソゴソと懐をまさぐると、丸薬のような物を取り出し、ガリガリと不快な音を立てて噛み砕いた。
「これぞ天界に伝わる秘薬、聖護丸! これにより、私の肉体は限界を超えて強化される!」
「ならば、私も! 特製ジュースinマンドラゴラ!(下半身への影響抜き)」
「そして、敵を自動追尾する鎖鎌!」
「お手製メガネ!」
「くっ……! 舐めおって!! いけいっ!」
ニムバスの放った鎖鎌が蛇のように襲い掛かる。お手製メガネを通して魔力の流れを解析すると、どうやらニムバスの手元から鎌のコアに向かって魔力を流しているらしい。
「なるほど、なるほど」
「はぁーっはっはぁ! どうした! 逃げ回るだけかぁ!?」
「いえ、あのですね。この武器、たぶん。たぶんですよ?」
余り、指摘してあげるのも可哀想だが教えてあげないと滑稽すぎる。
「あなたの動きより遅いと思うんです」
「何っ!?」
「あなた自身、肉体派に見えるのですが、魔力操作はお得意で?」
ニムバスはうろたえ、こちらから目を逸らす。
「もちろん、隊長の名に恥じぬ力量を持っておる!」
「戦闘中に敵から目を逸らすのはいけませんね」
一瞬の隙をついてニムバスの手をはたき、鎖鎌を盗む。
「なるほど、ここに魔力を流すのか」
「あっ!」
ニムバスが操る倍のスピードで元の持ち主に襲い掛かる鎖鎌。しかし、見立て通り彼は鎖鎌の攻撃を全て躱し、魔力の供給源である鎖を引きちぎった。
「よくも……よくも俺の大事なコレクションを!」
「いや、壊したのはあなたですし」
「黙れ! もういい! この超強化された肉体でお前を捕縛または行動不能にしてくれる!」
ニムバスが地面を蹴り、一瞬で間合いを詰めて拳打を浴びせてくる。全て的確に急所を狙い、かつ威力も相当なものだ。しかし。
この三か月……。私がやってきたのはただひたすら肉体の強化と、ダママ達との戦闘訓練。派手な必殺技の習得などは一切なし。ただひたすら戦闘の勘を取り戻すことに時間を割いた。いや、むしろこの鍛錬自体は地獄でドラメレクに敗れて以降欠かしていないルーティーンだ。おかげで肉体派の彼の攻撃は手玉にとれるほど。
さすがにダママやヴォルに比べれば攻撃は早く重く。狙いも正確だが、正確過ぎて読みやすい。微妙に当たるポイントをずらすだけでダメージは何分の一にもなる。
「くらえ! くらえ!」
「……。もういいでしょう」
気分よく打ち据えていたニムバスの拳を掴み、握り潰し、頭をつかんで、膝蹴りを入れた。
「あぐっ!」
「ほう、倒れませんか。さすが、秘薬の効果は素晴らしい!」
「馬鹿な……! バカな……!?」
「さあ、何発で倒れるか、頑張ってください!」
一秒間に50発。絶え間なく顔面、腹、レバー等を打ち抜き、彼が倒れたのは
10秒後の事だった。
「500発! 大したものです! さすが曇天の隊長!」
さてさて、他に彼が持ち込んだ物は何かありますかね………。
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