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第8章 天界編
地獄の92丁目 地獄の魔王決定戦・後始末
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「さて、下らん闘いも終わったわけだが。我が魔王となることに異論があるものはおるか?」
ドラメレクが覆面選手に引っ張られて行って以降、大会の運営はうんともすんとも言わなくなったので、デボラが魔移句を使って闘技場から参加者や観客に呼びかけた。沸き起こったのは拍手。だが、それも半分と言ったところだ。残りの半分はブーイングだったり、黙っていたり。これは地獄の運営上宜しくない。
宜しくないが、無理もない。今回の大会は棄権者が多すぎる。それに開催者がタコ殴りにされた挙句、無念の退場となったのも印象が悪い。ま、それに関しては本人があおっていた部分もあるし、なんとも言えないが。みんなの思っていたようなバトルロイヤルにならなかったのは確かだろうな。
「こんな形で終わることになったのは申し訳ないが、我こそはと思うものは随時かかってきてよい。それが地獄の掟だからな。それとは別にこんな祭りが開きたければそれも今後一考の余地ありだ。挑戦者、そして発案者、両方募集しておるのでよろしく頼む!」
今度は先ほどより大きな歓声と拍手が上がる。どうやらデボラへの不満というよりは大会そのものの消化不良が大きいようだ。こんな集団の王なんてたまったもんじゃないな、実際。慣れている人にやってもらうのが一番だ。
「大会の運営がどこぞへ消えてしまったようなので、不肖、我が宣言させていただく! 第1回 魔王の座争奪、なんでもバトルオリンピア ~あつまれ! 暴力の檻~ ここに閉幕!!!」
割れんばかりの喝采が巻き起こり、観客はぞろりぞろりと席を立って帰宅の途に着いた。結果オーライ。
「すまん、キーチロー。成り行きでまた我が魔王となった」
「全然全然! 俺こんな地獄の王なんて無理だし。やっぱりデボラには魔王がよく似合う!」
片手をブンブン振りながら新・旧魔王様の誕生を祝った。元はと言えばドラメレク一派が……。
「あれ? そういえばあの覆面選手とドラメレクは?」
「そういえば姿が見えんな。棄権して以降」
「デボラ様~!!」
「デボラ様!」
ローズとベルが駆け寄ってくる。セージとステビアも一緒だ。
「見事な戦いぶりでございました! やはり貴方様は魔王! 唯一無二の美しく気高い魔王様です!」
興奮気味に話すのはベル。こっちに興味ないのはもとより知っている。
「キャラウェイさんも! お疲れ様です! やっぱり闘う男っていいわぁ……」
うっとり話すローズ。もちろん目はハートだ。
「ご活躍でしたね! デボラ様! キャラウェイさん!」
にっこり話すのはセージ。ん? 俺の名は?
「見てて……久しぶりに……滾りました」
伏し目がちながらも何やら熱気を感じるステビア。
「あの、俺も一応戦ったんですが」
「ああ、夏休みの少年みたいな事してた人!」
おい、それは酷いんじゃないかローズさんよ。
「キーチローさん、大会に出てました? すみません、視界に入らなくて」
「ベルの視野が極端に狭いのは知ってるけど。そして、本選で俺はボーっと見てただけなのは分かるけど」
「まぁまぁ、キーチロー君は道具に頼ってましたが本当はあんなものいらないくらいの実力はありますし」
すかさずキャラウェイさんのフォローが入る。
「本選の乱入さえなければ彼にも活躍の場面はあったと思いますよ」
なんて良い人なんだ! やっぱり男同士拳を交えたものにしかわからない絆みたいなもの、ありますよね!
「ま、結果この年寄りが無理する羽目になりましたがそれはいいでしょう」
キャラウェイさんは実際結構な年齢のはずだが一切老いなんて感じない。美容の秘訣が謎だ。
「お前たち、覆面選手とドラメレクがその後どうなったか見ていたか?」
「いいえ? 闘技場の外に出た後はどこかに飛んでいったみたいですけど。そこから先は……」
「そうか。まぁ、処理は“曇天”が行うのだから間違いは無いだろう。むしろ問題はアルカディア・ボックスの存在だな。アレに目を付けられたとなると少々厄介だ」
「確かにそうですね。天界の武闘派ですからね」
キャラウェイさんの深刻な顔に不安感が増す。目を付けられるとどうなるんだろうか。天界からあのヤバそうな人たちが押し寄せて逮捕されたりするんだろうか。
「えっ、僕たち職場失うんですか?」
「それは……困ります……」
「案ずるな。打てる手は打ってみる」
「お願いします! 僕、アルカディア・ボックスとその動物たち好きなんです!」
「私も……お世話がどんどん……楽しくなって……きた……のです」
うむ。地獄のスカウトマンの目に狂い無し! いい人材を引っ張ってきたものだ。動物好きに悪い奴はいない!
「曇天とやらのその後の行動は気になるが、一旦箱庭に帰って対策を練ろう! きっと大丈夫!」
俺達は結束を固め、来るべき曇天の襲来に備えることにした。
☆☆☆
「そこのあなた。我が主をどこへ連れて行く気ですかな?」
「私の愛しい主を連れて行くなんて許せないねぇ」
「そうです! お父様を返しなさい!」
「力づくでも……な」
はぁ、ホントに地獄めんどくさい。なぁんでこんなメンドクサイ奴ら放置しちゃったのよぉ。
「あなた方はぁ、こいつのぉ配下ですかぁ?」
「こいつとは不敬な。ドラメレク様は置いて行ってもらいましょう」
あぁ……関わりたくない。集合場所……集合時間……。またあのおっかない上司にぃ怒られちゃうぅ。
「とりあえずぅ、逃げられたら困るのでぇ、こいつのぉ手足はコキュートスのぉ氷で拘束しときますねぇ」
「チッ……」
おおっと! びっくりしたぁ! なぁにあの女。いきなり爪なんかぁ伸ばさないでよねぇ。
「躱し魔すか……それなら四人がかりで!」
「ドラメレク様の為だねぇ!」
「行きます!」
「この雑魚が!」
おお、怖い怖い。皆さん怒ってますけどぉ。キレそうなのぉ、こっちなのよねぇ。
「調子ぃ、こかないでぇ、く・だ・さい!」
「グッ……」
「ツッ……」
「なんと!」
「やるな! こいつ!」
せっかく天界に辿り着いたと思ったら、まさか天界に地獄があるなんてぇ、と思うぐらいの鍛錬。見くびらないで欲しいのぉ。
「油断せずに参り魔しょう!」
「こうなったら魔力全開放だねぇ!」
「僕達も!」
「おおっ!」
「……遅い」
ゲッ!!!
「は?」
いきなり奴らの背後に現れたのは私の上司、曇天の隊長、ニムバス様だ。どうやら時間を過ぎたらしい。10分前行動、5分前集合がこの人のモットーだ。言い訳は無駄。一秒の狂いも許さない人だ。
「こんな雑魚に構っていて遅れたのか! ミスト! 減給だ!」
「ひぃっ! す、すいませぇん!!」
「誰が雑魚ですか!」
「喰らうといいねぇ!」
「行くぞ!」
「このぉっ!!」
無駄だ。こいつらも多少腕に覚えがあるようだけど。相手が悪い。
「さぁ! このままコキュートスに連行! 行くぞ! ミスト!」
「は、はいぃぃっ!」
あっという間に痛めつけられ、全身を凍らされた哀れな四人の羊たち。末永くコキュートスでお幸せに。
ドラメレクが覆面選手に引っ張られて行って以降、大会の運営はうんともすんとも言わなくなったので、デボラが魔移句を使って闘技場から参加者や観客に呼びかけた。沸き起こったのは拍手。だが、それも半分と言ったところだ。残りの半分はブーイングだったり、黙っていたり。これは地獄の運営上宜しくない。
宜しくないが、無理もない。今回の大会は棄権者が多すぎる。それに開催者がタコ殴りにされた挙句、無念の退場となったのも印象が悪い。ま、それに関しては本人があおっていた部分もあるし、なんとも言えないが。みんなの思っていたようなバトルロイヤルにならなかったのは確かだろうな。
「こんな形で終わることになったのは申し訳ないが、我こそはと思うものは随時かかってきてよい。それが地獄の掟だからな。それとは別にこんな祭りが開きたければそれも今後一考の余地ありだ。挑戦者、そして発案者、両方募集しておるのでよろしく頼む!」
今度は先ほどより大きな歓声と拍手が上がる。どうやらデボラへの不満というよりは大会そのものの消化不良が大きいようだ。こんな集団の王なんてたまったもんじゃないな、実際。慣れている人にやってもらうのが一番だ。
「大会の運営がどこぞへ消えてしまったようなので、不肖、我が宣言させていただく! 第1回 魔王の座争奪、なんでもバトルオリンピア ~あつまれ! 暴力の檻~ ここに閉幕!!!」
割れんばかりの喝采が巻き起こり、観客はぞろりぞろりと席を立って帰宅の途に着いた。結果オーライ。
「すまん、キーチロー。成り行きでまた我が魔王となった」
「全然全然! 俺こんな地獄の王なんて無理だし。やっぱりデボラには魔王がよく似合う!」
片手をブンブン振りながら新・旧魔王様の誕生を祝った。元はと言えばドラメレク一派が……。
「あれ? そういえばあの覆面選手とドラメレクは?」
「そういえば姿が見えんな。棄権して以降」
「デボラ様~!!」
「デボラ様!」
ローズとベルが駆け寄ってくる。セージとステビアも一緒だ。
「見事な戦いぶりでございました! やはり貴方様は魔王! 唯一無二の美しく気高い魔王様です!」
興奮気味に話すのはベル。こっちに興味ないのはもとより知っている。
「キャラウェイさんも! お疲れ様です! やっぱり闘う男っていいわぁ……」
うっとり話すローズ。もちろん目はハートだ。
「ご活躍でしたね! デボラ様! キャラウェイさん!」
にっこり話すのはセージ。ん? 俺の名は?
「見てて……久しぶりに……滾りました」
伏し目がちながらも何やら熱気を感じるステビア。
「あの、俺も一応戦ったんですが」
「ああ、夏休みの少年みたいな事してた人!」
おい、それは酷いんじゃないかローズさんよ。
「キーチローさん、大会に出てました? すみません、視界に入らなくて」
「ベルの視野が極端に狭いのは知ってるけど。そして、本選で俺はボーっと見てただけなのは分かるけど」
「まぁまぁ、キーチロー君は道具に頼ってましたが本当はあんなものいらないくらいの実力はありますし」
すかさずキャラウェイさんのフォローが入る。
「本選の乱入さえなければ彼にも活躍の場面はあったと思いますよ」
なんて良い人なんだ! やっぱり男同士拳を交えたものにしかわからない絆みたいなもの、ありますよね!
「ま、結果この年寄りが無理する羽目になりましたがそれはいいでしょう」
キャラウェイさんは実際結構な年齢のはずだが一切老いなんて感じない。美容の秘訣が謎だ。
「お前たち、覆面選手とドラメレクがその後どうなったか見ていたか?」
「いいえ? 闘技場の外に出た後はどこかに飛んでいったみたいですけど。そこから先は……」
「そうか。まぁ、処理は“曇天”が行うのだから間違いは無いだろう。むしろ問題はアルカディア・ボックスの存在だな。アレに目を付けられたとなると少々厄介だ」
「確かにそうですね。天界の武闘派ですからね」
キャラウェイさんの深刻な顔に不安感が増す。目を付けられるとどうなるんだろうか。天界からあのヤバそうな人たちが押し寄せて逮捕されたりするんだろうか。
「えっ、僕たち職場失うんですか?」
「それは……困ります……」
「案ずるな。打てる手は打ってみる」
「お願いします! 僕、アルカディア・ボックスとその動物たち好きなんです!」
「私も……お世話がどんどん……楽しくなって……きた……のです」
うむ。地獄のスカウトマンの目に狂い無し! いい人材を引っ張ってきたものだ。動物好きに悪い奴はいない!
「曇天とやらのその後の行動は気になるが、一旦箱庭に帰って対策を練ろう! きっと大丈夫!」
俺達は結束を固め、来るべき曇天の襲来に備えることにした。
☆☆☆
「そこのあなた。我が主をどこへ連れて行く気ですかな?」
「私の愛しい主を連れて行くなんて許せないねぇ」
「そうです! お父様を返しなさい!」
「力づくでも……な」
はぁ、ホントに地獄めんどくさい。なぁんでこんなメンドクサイ奴ら放置しちゃったのよぉ。
「あなた方はぁ、こいつのぉ配下ですかぁ?」
「こいつとは不敬な。ドラメレク様は置いて行ってもらいましょう」
あぁ……関わりたくない。集合場所……集合時間……。またあのおっかない上司にぃ怒られちゃうぅ。
「とりあえずぅ、逃げられたら困るのでぇ、こいつのぉ手足はコキュートスのぉ氷で拘束しときますねぇ」
「チッ……」
おおっと! びっくりしたぁ! なぁにあの女。いきなり爪なんかぁ伸ばさないでよねぇ。
「躱し魔すか……それなら四人がかりで!」
「ドラメレク様の為だねぇ!」
「行きます!」
「この雑魚が!」
おお、怖い怖い。皆さん怒ってますけどぉ。キレそうなのぉ、こっちなのよねぇ。
「調子ぃ、こかないでぇ、く・だ・さい!」
「グッ……」
「ツッ……」
「なんと!」
「やるな! こいつ!」
せっかく天界に辿り着いたと思ったら、まさか天界に地獄があるなんてぇ、と思うぐらいの鍛錬。見くびらないで欲しいのぉ。
「油断せずに参り魔しょう!」
「こうなったら魔力全開放だねぇ!」
「僕達も!」
「おおっ!」
「……遅い」
ゲッ!!!
「は?」
いきなり奴らの背後に現れたのは私の上司、曇天の隊長、ニムバス様だ。どうやら時間を過ぎたらしい。10分前行動、5分前集合がこの人のモットーだ。言い訳は無駄。一秒の狂いも許さない人だ。
「こんな雑魚に構っていて遅れたのか! ミスト! 減給だ!」
「ひぃっ! す、すいませぇん!!」
「誰が雑魚ですか!」
「喰らうといいねぇ!」
「行くぞ!」
「このぉっ!!」
無駄だ。こいつらも多少腕に覚えがあるようだけど。相手が悪い。
「さぁ! このままコキュートスに連行! 行くぞ! ミスト!」
「は、はいぃぃっ!」
あっという間に痛めつけられ、全身を凍らされた哀れな四人の羊たち。末永くコキュートスでお幸せに。
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