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第7章 地獄の魔王決定戦編
地獄の87丁目 予選
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運営のノープランが発覚したのは開会宣言の直後だった。今回の大会にエントリーした地獄の猛者は全部で1,000名弱。俺の感じる限り、突出した魔力はどこからも感知できないが、弱い者は当然の事、強者は己の魔力を封じる手段を持っているのが一般的で、その実力はいざ闘ってみないと未知数なのだ。運営側もエントリー人数を事前に把握していなかったようで、いざ蓋を開けてみればしばし審議中とアナウンスが流れたきりである。
……普通、審議中って大会の判定とかに使うもんじゃないか? 余りにも適当な進行ぶりに参加者がザワつき始めたころ、運営(たぶんコンフリー)からアナウンスがあった。
『思っていたより参加者が多いので予選を行いたいと思い魔す。バトルロイヤル形式で16人ぐらいまで絞り魔す。ブロック抽選をし魔すので整列してください』
とんでもない行き当たりばったりだ。バトルロイヤル形式と言うのも時間と手間を最大限惜しんだに違いない。どうやら、街づくりに力を入れ過ぎて途中で考えるのを放棄してしまったに違いない。
しかし困った。デボラやキャラウェイさんと同じブロックになったらその時点でどちらかが戦いから抜けなくてはならない。参加人数などそうはいないだろうと高を括っていたが、これはこちら側の誤算だった。とにかくやることは変わらない。なるべく予選で同士討ちが無いよう祈りながら本選で雌雄を決するのみだ。出来れば俺とドラメレクが早くぶつかった方が話は早いのだが。
「全くもって理解できん。呆れ果てる運営能力だな」
「ドラメレクって予選免除なのかな?」
「祭り好きの奴の事だ。予選で負けるはずがないと高を括って参戦してくる可能性もある」
「参戦しないとなるとあわよくば狙いの大半が試合を降りるかもしれない」
「それはそれで面倒が減って都合がいいな」
できれば早く終わらせて帰りたいし、何なら目立たずやり過ごしたいが……。この人数じゃ無理だな。
『公正なる抽選の結果、ブロックが決定いたし魔したのでエントリー番号を調べてとっとと始めてください。Aブロックからです。あ、ちなみに我が主ドラメレク様は予選から参加され魔す』
うーん、参加してきたか。参加ブロックのエントリーは大半が棄権になるだろうな。
「キーチローは何ブロックだった? 我はCブロックの様だ」
「俺はGだった。キャラウェイさんは?」
「私はLブロックです。見事に全員バラけたようですね」
「まあ、16ブロックですからね。よっぽど運が悪くない限りは……」
というか、普通に抽選したっぽいのがむしろ驚いた。公正にやるなんて信じられない。逆に不安になってくるぐらいだ。
「正体を隠してる俺とキャラウェイさんは別としてデボラのところはある程度辞退する奴が出てきそうだな」
「まあ、そうだと有り難いがこんな祭りにそんなまともな奴がどれほどいるのか……な」
「デボラ様が負けるところなど想像できませんわ! 華麗に優勝を決めてくださいませ!」
『それでは全員揃ったようですので予選Aブロック始めたいと思い魔す! ヘルズファイト……レディ……ゴー!!!』
会場の外にいた俺達はとりあえずAブロックの闘いを観戦しようと闘技場の中に入った。だが、驚くべきことにAブロックは開始1分で謎の覆面戦士によって蹴散らされたらしい。相当な実力者の様だ。こりゃ、ドラメレクに当たるまで油断は出来ないぞ。
「まさか、会場に入るまでのわずかな時間で決着とはな。本選で当たるかもしれんとなると少しでも見ておきたかったが」
「ま、見れなかったものはしょうがない! いきなりぶつからないように祈ろう」
「お、早くもBブロックが始まるようですよ」
「私、お酒飲みながら観戦しようかしら」
「この大事な時に何を言ってるんですか!」
「私達は……観客席で応援……してますので、デボラ様、キャラウェイさん、キーチローさん……は頑張って……ください」
「僕も応援してまーす!」
『ちょっと瞬殺過ぎてつまらなかったですね。続きまして予選Bブロック始めたいと思い魔す! ヘルズファイト……レディ……ゴー!!!』
「Bブロックも始まったことだし、デボラはそろそろ準備しとかないと」
「そうだな、ではまた後で」
「ああ!」
「きぃぃぃぃぃぃええぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
デボラを見送った後、闘技場の中へ目をやると、一人のキツネ耳の女が雄叫びを上げながら闘っていた。着物を着た綺麗な女性だ。なんで闘うことが分かっていて着物で来たのかさっぱり分からないが、あっという間に周りの参加者を炎が包んでいく。何らかの魔法を使っているらしい。
「でぇぇぇぇぇえええぼぉぉぉぉるぁぁぁぁぁぁあさぁぁぁぁまぁぁぁっ!!!」
「どこっ! どこっ!! デボラ様ぁぁぁぁっ!!!」
……正直見てはいけないものを見てしまった気分だが、でたらめな強さなのは間違いない。
「見てますかぁぁぁぁぁぁっ!! デボラ様ぁぁぁぁぁっ!! 邪魔者は全部私が焼却しますぅぅぅぅ!! この【狐火】でぇぇぇぇっ!!」
ヤバい。ベルが可愛く見えるレベルの心酔者……か? ふと、横を見るとベルがその気持ちわかりますよと言わんばかりに笑顔で頷いていた。
「ベル、知り合い?」
「ああ、あの方は妖狐の妖子さんですわ。デボラ様の事を大変慕っておいでです。妖怪界のアイドルなんですよ! にもかかわらずデボラ様推しとはお目が高い!」
「妖狐の妖子さんは味方……と考えていいのかな?」
「ええ! 狐の姿でアルカディア・ボックス入りを熱望なさっていたぐらいですよ? 妖怪は趣旨に反するのでデボラ様はお断りされておられましたが」
確かに飼われたいと言われても気が引けるな。デボラのナイスブロックに感謝しないと。
「死ねぇぇぇぇっ!! ドラメレクぅぅぅぅっ!!」
どうもBブロックはあの人で決まりそうだ。となるともうすぐデボラの出番だ。元魔王なんだからある程度は大丈夫だろうけど、変な奴に当たらないといいが……。
……普通、審議中って大会の判定とかに使うもんじゃないか? 余りにも適当な進行ぶりに参加者がザワつき始めたころ、運営(たぶんコンフリー)からアナウンスがあった。
『思っていたより参加者が多いので予選を行いたいと思い魔す。バトルロイヤル形式で16人ぐらいまで絞り魔す。ブロック抽選をし魔すので整列してください』
とんでもない行き当たりばったりだ。バトルロイヤル形式と言うのも時間と手間を最大限惜しんだに違いない。どうやら、街づくりに力を入れ過ぎて途中で考えるのを放棄してしまったに違いない。
しかし困った。デボラやキャラウェイさんと同じブロックになったらその時点でどちらかが戦いから抜けなくてはならない。参加人数などそうはいないだろうと高を括っていたが、これはこちら側の誤算だった。とにかくやることは変わらない。なるべく予選で同士討ちが無いよう祈りながら本選で雌雄を決するのみだ。出来れば俺とドラメレクが早くぶつかった方が話は早いのだが。
「全くもって理解できん。呆れ果てる運営能力だな」
「ドラメレクって予選免除なのかな?」
「祭り好きの奴の事だ。予選で負けるはずがないと高を括って参戦してくる可能性もある」
「参戦しないとなるとあわよくば狙いの大半が試合を降りるかもしれない」
「それはそれで面倒が減って都合がいいな」
できれば早く終わらせて帰りたいし、何なら目立たずやり過ごしたいが……。この人数じゃ無理だな。
『公正なる抽選の結果、ブロックが決定いたし魔したのでエントリー番号を調べてとっとと始めてください。Aブロックからです。あ、ちなみに我が主ドラメレク様は予選から参加され魔す』
うーん、参加してきたか。参加ブロックのエントリーは大半が棄権になるだろうな。
「キーチローは何ブロックだった? 我はCブロックの様だ」
「俺はGだった。キャラウェイさんは?」
「私はLブロックです。見事に全員バラけたようですね」
「まあ、16ブロックですからね。よっぽど運が悪くない限りは……」
というか、普通に抽選したっぽいのがむしろ驚いた。公正にやるなんて信じられない。逆に不安になってくるぐらいだ。
「正体を隠してる俺とキャラウェイさんは別としてデボラのところはある程度辞退する奴が出てきそうだな」
「まあ、そうだと有り難いがこんな祭りにそんなまともな奴がどれほどいるのか……な」
「デボラ様が負けるところなど想像できませんわ! 華麗に優勝を決めてくださいませ!」
『それでは全員揃ったようですので予選Aブロック始めたいと思い魔す! ヘルズファイト……レディ……ゴー!!!』
会場の外にいた俺達はとりあえずAブロックの闘いを観戦しようと闘技場の中に入った。だが、驚くべきことにAブロックは開始1分で謎の覆面戦士によって蹴散らされたらしい。相当な実力者の様だ。こりゃ、ドラメレクに当たるまで油断は出来ないぞ。
「まさか、会場に入るまでのわずかな時間で決着とはな。本選で当たるかもしれんとなると少しでも見ておきたかったが」
「ま、見れなかったものはしょうがない! いきなりぶつからないように祈ろう」
「お、早くもBブロックが始まるようですよ」
「私、お酒飲みながら観戦しようかしら」
「この大事な時に何を言ってるんですか!」
「私達は……観客席で応援……してますので、デボラ様、キャラウェイさん、キーチローさん……は頑張って……ください」
「僕も応援してまーす!」
『ちょっと瞬殺過ぎてつまらなかったですね。続きまして予選Bブロック始めたいと思い魔す! ヘルズファイト……レディ……ゴー!!!』
「Bブロックも始まったことだし、デボラはそろそろ準備しとかないと」
「そうだな、ではまた後で」
「ああ!」
「きぃぃぃぃぃぃええぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
デボラを見送った後、闘技場の中へ目をやると、一人のキツネ耳の女が雄叫びを上げながら闘っていた。着物を着た綺麗な女性だ。なんで闘うことが分かっていて着物で来たのかさっぱり分からないが、あっという間に周りの参加者を炎が包んでいく。何らかの魔法を使っているらしい。
「でぇぇぇぇぇえええぼぉぉぉぉるぁぁぁぁぁぁあさぁぁぁぁまぁぁぁっ!!!」
「どこっ! どこっ!! デボラ様ぁぁぁぁっ!!!」
……正直見てはいけないものを見てしまった気分だが、でたらめな強さなのは間違いない。
「見てますかぁぁぁぁぁぁっ!! デボラ様ぁぁぁぁぁっ!! 邪魔者は全部私が焼却しますぅぅぅぅ!! この【狐火】でぇぇぇぇっ!!」
ヤバい。ベルが可愛く見えるレベルの心酔者……か? ふと、横を見るとベルがその気持ちわかりますよと言わんばかりに笑顔で頷いていた。
「ベル、知り合い?」
「ああ、あの方は妖狐の妖子さんですわ。デボラ様の事を大変慕っておいでです。妖怪界のアイドルなんですよ! にもかかわらずデボラ様推しとはお目が高い!」
「妖狐の妖子さんは味方……と考えていいのかな?」
「ええ! 狐の姿でアルカディア・ボックス入りを熱望なさっていたぐらいですよ? 妖怪は趣旨に反するのでデボラ様はお断りされておられましたが」
確かに飼われたいと言われても気が引けるな。デボラのナイスブロックに感謝しないと。
「死ねぇぇぇぇっ!! ドラメレクぅぅぅぅっ!!」
どうもBブロックはあの人で決まりそうだ。となるともうすぐデボラの出番だ。元魔王なんだからある程度は大丈夫だろうけど、変な奴に当たらないといいが……。
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