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第7章 地獄の魔王決定戦編
地獄の82丁目 ヴァンパイアの王とダークエルフの姫
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今日も貧血、明日も貧血。貧血と言っても血が主食なのだから空腹と置き換えてもよい。最近人間界に降りていないせいか血が足りない。天界からのお達しで、人間界のバランスを考えて血を吸うように且つ、いたずらに配下は増やさぬように、と。
だが、まず吾輩の栄養バランスを考えて欲しい。人間の血が吾輩の主食である以上、人間牧場でも作らない限り、吾輩は飢えて死ぬしかないではないか。配下を増やさぬという前提では魔族やらなんやらの血を吸うのも良いが、いかんせんマズイ。やはり、血は人間のものに限る。さらにグルメなことを言わせていただくと処女の血がやはり一番だ。混じり気の無い味、さわやかな喉越し。夏場はキンキンに冷やしていただくのもいいが、やはり最高なのは人肌程度のぬる燗。これに限る。いや、本当は人から直接吸うのが一番だ。
ああ、無いものねだりをしていると余計に腹が空く。城に残された備蓄血液もあとわずか。人間に危害を加えないように少しずつ医者のフリをしてかっぱらった輸血だ。あまり派手に動くと天界だけでなく人間界でもマークされるので頻繁にできないが、これが最低限の譲歩だ。吾輩にだって生きる権利がある。ましてや王である以上、配下を飢えさせてはならぬ。みんな私の子供のようなものなのだから。
――それにしてもなんだこのチラシは。ドラメレクと言ったか。先代の魔王はやりたい放題やってコキュートスに封印されたと聞いていたが、何をいまさら考えているのか。大方退屈しのぎだろうが、いいよなぁ。悪魔族は。地獄の最多種族で最大派閥だ。歴代魔王も8割がた悪魔族から出している。吾輩も悪魔族とは遠縁にあたるが、今では吸血族として独立してしまっているしなぁ。
やりたい放題か……。思えば配下を増やす前は自由だったなぁ。気が向いた時に好きなだけ血を飲んで。日が昇れば就寝。日が沈むころには夜の街へ繰り出してナンパ。食糧としては残念な地獄の住人も遊び相手としては手ごろな存在だ。サキュバスのニーナちゃん今何してるんだろうな。ぐぬぬぬ……。それもこれも天界が締め付けてくるせいだ! 手当たり次第吸ったせいで、人間界で吸血鬼が認知され過ぎたのは俺のせいだが、どうせ死んだらみんな地獄に来るんだからいいじゃない!
むしろ、地獄や天国に来た人をたまに人間界に送り返しているのを俺は知ってるからな! そのせいでだんだん人間界の連中が地獄や天国を微妙に誤解したまま死ぬようになったことの方が悪影響だと思ってるからな!!
はぁ……はぁ……。血が足りないのに血圧は上がってしまった。もう嫌だ。こんな生活。決めたぞ! 吾輩はこの大会に参加する! 魔王になれればまず良し。なれなければこのドラメレクとやらの配下になって好き放題してやる! 勝手気ままに血を吸ってやる! どうせ一回天界に喧嘩を売ってる男だ。気にしないだろう。よし、そうと決まれば早速エントリーだ。受付は……、ない! 場所も時間もない! コレ書いた奴アホだろ!
「誰かおらぬか!」
「お呼びでしょうか、クリストフ様」
「しばらくの間、城を空ける! 食糧庫は随時解放せよ! 吾輩が戻らぬ時はお前が血液の確保! 頼んだぞ!」
「はっ!」
☆☆☆
ハァ……。暇。多分この大会を思い付いた人も暇なんだろう。不思議なシンパシーを感じる。僕もこの大会に参加してみたいけど肉弾戦なら秒で死ぬ自信がある。ただ地上に降りない戦いなら負けない……気がする。相手が鬼とか鬼人とかの脳筋タイプなら勝利は揺るがないだろう。
「ねぇ、お姉様はどう思う? コレ」
「相手にする必要……ある?」
「いや、そうは言っても僕たち地獄の住人の王が決まるわけだしさ」
「こんな大会を開かなくても強い者が魔王っていうのは普通の話よね?」
「それはそうだけど……」
「あなたもダークエルフの姫としてやるべき事があるんじゃないの?」
「僕が……? お姉様がいれば安泰でしょ」
お姉様こと姉のモルリエンは椅子に座って呼んでいた本を脇におき、ベッドでゴロゴロしていた僕の横に座り直した。
「モリエル、私に何かあったときはあなたが女王として一族を率いるかとになるのですよ! こんな暇人の戯言に付き合ってる暇があったら少しでも狩りの練習をしなさいな」
うぅ……。お姉様の説教モードが始まった。こうなると長くなるんだよなぁ。
「聞いているの? モリエル! あなたの狩りの腕はダークエルフの一族でも並ぶものはいません! もちろん、私もです」
そう、弓矢さえあれば何十キロ先からだって眉間にぶち込む自信はある。例えば………魔王だって狙撃すればもしかしたらサクッと倒せるかもしれない。四六時中警戒なんてできないしね。あれ? なんかイケそうな気がしてきた。どうせ暇だし狩りの練習がてら大会に参加してみるか?
「さりとて、日々の鍛練がいかに重要かはあなたが一番よく知っているはずです!」
「ハイ! お姉様! 大変よく存じております! おりますので訓練に行ってきても宜しいでしょうか!」
「とにかくあなたは……えっ!? 今なんと!?」
「だから訓練に行ってきますってば!」
「あのものぐさなモリエルが……」
え、ちょっと素直に言うこと聞いたからって泣くことないじゃない。こっちは下心アリアリなのに。
「今回は精神面も鍛える為、しばらく旅に出ます」
「なんと言うことでしょう……なんと言うことでしょう!! モリエル……」
「だから心配しないで僕を待っててください」
「あぁ! 私は今逆に心配です!」
訓練に出ろと言ったり心配してみたり忙しい人だ。確かに今まで自堕落に暮らしてきたかど腕試しぐらい構わないよね。いざとなったら地獄最速級の羽ばたきで飛んで逃げれば良いわけだし。
――という訳で早速出立の準備をしたわけだが。
「それじゃあ、お姉様、しばらくの間おさらばです!」
「パンツの替えは持ちましたか? 歯ブラシは? 腹が立った相手は必ず殺すのですよ!? わかりましたか!?」
「ハイハイ、持ってます持ってます。僕の邪魔になる奴も必ず殺します。だからもうお城にお戻り下さいって」
「そうですか? なら………あ! 後、女の子なのですから野蛮な男には注意するんですよ!」
「かしこまりました! では!」
野蛮な男か。まあ、弓矢でぶち抜けばいいか。でも、素敵な人だったらそのまま……イカンイカン。でもついでに参加者にいい人がいないか探すのもアリだな。
ま、何はともあれ大会に向けて出発しますか!
……あれ? 目的地どこだ?
だが、まず吾輩の栄養バランスを考えて欲しい。人間の血が吾輩の主食である以上、人間牧場でも作らない限り、吾輩は飢えて死ぬしかないではないか。配下を増やさぬという前提では魔族やらなんやらの血を吸うのも良いが、いかんせんマズイ。やはり、血は人間のものに限る。さらにグルメなことを言わせていただくと処女の血がやはり一番だ。混じり気の無い味、さわやかな喉越し。夏場はキンキンに冷やしていただくのもいいが、やはり最高なのは人肌程度のぬる燗。これに限る。いや、本当は人から直接吸うのが一番だ。
ああ、無いものねだりをしていると余計に腹が空く。城に残された備蓄血液もあとわずか。人間に危害を加えないように少しずつ医者のフリをしてかっぱらった輸血だ。あまり派手に動くと天界だけでなく人間界でもマークされるので頻繁にできないが、これが最低限の譲歩だ。吾輩にだって生きる権利がある。ましてや王である以上、配下を飢えさせてはならぬ。みんな私の子供のようなものなのだから。
――それにしてもなんだこのチラシは。ドラメレクと言ったか。先代の魔王はやりたい放題やってコキュートスに封印されたと聞いていたが、何をいまさら考えているのか。大方退屈しのぎだろうが、いいよなぁ。悪魔族は。地獄の最多種族で最大派閥だ。歴代魔王も8割がた悪魔族から出している。吾輩も悪魔族とは遠縁にあたるが、今では吸血族として独立してしまっているしなぁ。
やりたい放題か……。思えば配下を増やす前は自由だったなぁ。気が向いた時に好きなだけ血を飲んで。日が昇れば就寝。日が沈むころには夜の街へ繰り出してナンパ。食糧としては残念な地獄の住人も遊び相手としては手ごろな存在だ。サキュバスのニーナちゃん今何してるんだろうな。ぐぬぬぬ……。それもこれも天界が締め付けてくるせいだ! 手当たり次第吸ったせいで、人間界で吸血鬼が認知され過ぎたのは俺のせいだが、どうせ死んだらみんな地獄に来るんだからいいじゃない!
むしろ、地獄や天国に来た人をたまに人間界に送り返しているのを俺は知ってるからな! そのせいでだんだん人間界の連中が地獄や天国を微妙に誤解したまま死ぬようになったことの方が悪影響だと思ってるからな!!
はぁ……はぁ……。血が足りないのに血圧は上がってしまった。もう嫌だ。こんな生活。決めたぞ! 吾輩はこの大会に参加する! 魔王になれればまず良し。なれなければこのドラメレクとやらの配下になって好き放題してやる! 勝手気ままに血を吸ってやる! どうせ一回天界に喧嘩を売ってる男だ。気にしないだろう。よし、そうと決まれば早速エントリーだ。受付は……、ない! 場所も時間もない! コレ書いた奴アホだろ!
「誰かおらぬか!」
「お呼びでしょうか、クリストフ様」
「しばらくの間、城を空ける! 食糧庫は随時解放せよ! 吾輩が戻らぬ時はお前が血液の確保! 頼んだぞ!」
「はっ!」
☆☆☆
ハァ……。暇。多分この大会を思い付いた人も暇なんだろう。不思議なシンパシーを感じる。僕もこの大会に参加してみたいけど肉弾戦なら秒で死ぬ自信がある。ただ地上に降りない戦いなら負けない……気がする。相手が鬼とか鬼人とかの脳筋タイプなら勝利は揺るがないだろう。
「ねぇ、お姉様はどう思う? コレ」
「相手にする必要……ある?」
「いや、そうは言っても僕たち地獄の住人の王が決まるわけだしさ」
「こんな大会を開かなくても強い者が魔王っていうのは普通の話よね?」
「それはそうだけど……」
「あなたもダークエルフの姫としてやるべき事があるんじゃないの?」
「僕が……? お姉様がいれば安泰でしょ」
お姉様こと姉のモルリエンは椅子に座って呼んでいた本を脇におき、ベッドでゴロゴロしていた僕の横に座り直した。
「モリエル、私に何かあったときはあなたが女王として一族を率いるかとになるのですよ! こんな暇人の戯言に付き合ってる暇があったら少しでも狩りの練習をしなさいな」
うぅ……。お姉様の説教モードが始まった。こうなると長くなるんだよなぁ。
「聞いているの? モリエル! あなたの狩りの腕はダークエルフの一族でも並ぶものはいません! もちろん、私もです」
そう、弓矢さえあれば何十キロ先からだって眉間にぶち込む自信はある。例えば………魔王だって狙撃すればもしかしたらサクッと倒せるかもしれない。四六時中警戒なんてできないしね。あれ? なんかイケそうな気がしてきた。どうせ暇だし狩りの練習がてら大会に参加してみるか?
「さりとて、日々の鍛練がいかに重要かはあなたが一番よく知っているはずです!」
「ハイ! お姉様! 大変よく存じております! おりますので訓練に行ってきても宜しいでしょうか!」
「とにかくあなたは……えっ!? 今なんと!?」
「だから訓練に行ってきますってば!」
「あのものぐさなモリエルが……」
え、ちょっと素直に言うこと聞いたからって泣くことないじゃない。こっちは下心アリアリなのに。
「今回は精神面も鍛える為、しばらく旅に出ます」
「なんと言うことでしょう……なんと言うことでしょう!! モリエル……」
「だから心配しないで僕を待っててください」
「あぁ! 私は今逆に心配です!」
訓練に出ろと言ったり心配してみたり忙しい人だ。確かに今まで自堕落に暮らしてきたかど腕試しぐらい構わないよね。いざとなったら地獄最速級の羽ばたきで飛んで逃げれば良いわけだし。
――という訳で早速出立の準備をしたわけだが。
「それじゃあ、お姉様、しばらくの間おさらばです!」
「パンツの替えは持ちましたか? 歯ブラシは? 腹が立った相手は必ず殺すのですよ!? わかりましたか!?」
「ハイハイ、持ってます持ってます。僕の邪魔になる奴も必ず殺します。だからもうお城にお戻り下さいって」
「そうですか? なら………あ! 後、女の子なのですから野蛮な男には注意するんですよ!」
「かしこまりました! では!」
野蛮な男か。まあ、弓矢でぶち抜けばいいか。でも、素敵な人だったらそのまま……イカンイカン。でもついでに参加者にいい人がいないか探すのもアリだな。
ま、何はともあれ大会に向けて出発しますか!
……あれ? 目的地どこだ?
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