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第6章 魔王降臨編

地獄の75丁目 復活に際しての諸注意

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 にゃ、にゃんと! キーチローさん僕の成長をレポートし漏らしてるにゃ!? 僕の事もちゃんと書いといて欲しいのにゃ! 確かに僕は一番の新参者だけど、これでも少しは成長してるのにゃ! 何が変わったか知りたいにゃ?

 ……それは! ローズさんから隠れるスキルにゃ!!! 僕の生存本能が隠密スキルを磨けとそう囁いているのにゃ。次回より、『暗殺猫、ノリオ』お楽しみににゃ!


  ☆☆☆


「キーチロー、すまぬ。遅くなった。寂しかったか?」
「え、いや……まあみんないるしそれほどは……」

 デボラの目が少し不満そうに吊り上がったので、慌ててフォローした。

「いやぁ、デボラが居ないと生活に張りが無くて困ったよ! 寂しかったって? 答えは勿論イエスさ! HAHAHA!!!」
「うむ、なら良い。これからはしばらく一緒に居られるからな」

 えっ。いや、別に嫌じゃないんだけどむしろ全然嬉しい限りなんだけど地獄の方は大丈夫なんだろうか。

「閻魔様とどんな話し合いをしてきたの?」
「奴が魔王を名乗った以上、地獄の掟に従い、強い方が魔王だ。これは、もう仕方がない。我らが奴を打ち倒すまで地獄の魔王はドラメレクという事になる。残念だがな。だが、今は奴らなぜか大きな動きを見せておらんのだ。特にドラメレクは自分の城から出てきていないらしい」
「アイツが動かなくても部下が十分にヤバいけどね」
「ああ、中には以前、奴の考えに賛同していたものがまた徐々に集結しているという話もある」

 ああ、デボラも一時期居たヤツか。

「それってやっぱりほっとけない動きだよね」
「ああ、閻魔に依頼して、こちらはこちらで結束を高めているところだが、いかんせん無法者の中でも選りすぐりの無法集団だ。どこまで効果があるか……」

 前に言ってた地獄は無法者だらけって話、本当だったんだ……。出会う人が良い意味で普通(?)過ぎて気付かなかった。

「次にキーチローの処遇に関してだが、事情が事情だけに、天界の見解も聞かねばやはり軽々に復活は出来ない。人間界でひっそり魔族に殺される人間はいるが、地獄のいざこざに首を突っ込んで死ぬ奴はそうそう居ないからな」
「首を突っ込んだつもりは無いんだが……」
「閻魔自体は地獄の再生に尽力してくれているので復活に異論はないと言っていた。こんな徳を積んだところで天界に行けとは言えんしな」

 そういうとデボラは少し笑った。まあ、確かに地獄を豊かにしたからと言ってじゃあ、天国へ行きましょうとはならないだろうな。

「まあ、ここ以外の地獄どこかで働けと言われないだけマシかも。ここの暮らしに少し順応し始めてる自分が怖いけど」
「閻魔は復活が叶わなかったら内に来いと言っておったぞ! 我が断ったがな! キーチローは我のものだ!」

 血の池で亡者を沈める手伝いをしろとか言われても嫌だし、まあデボラの下にいた方が幸せ……か?

「ともかく、天界からの通達が来たら閻魔が知らせてくれる手筈なので、こちらは可決された場合を想定して動こう」
「動くって何かすることあるの?」
「色々あるぞ! お前の魂のケア、体の再生、儀式の準備!」

 それぞれ、意味が分かるようで分からん。

「もうちょっと具体的に……」
「まず魂のケアだが、お前の魂は地獄の瘴気に順応し始めている。今までは肉体の殻で魔力を以って状態だったのだが、魂が地獄の瘴気に染まるともう裁判によって下された刑罰か煉獄へ行く以外祓う方法が無い! 本来なら裁判の過程で四十九日かけて完全に順応するのだが、お前はまだ六日目だからな」
「お、俺はどどどどうすれば」
「地獄と天国の狭間、煉獄。その第一層にある清めの滝で滝修行! こちらは裁判停止中という名目で許可は得てある」

 滝修行……。猛烈に悪い予感がするが……。

「次に体の再生だが、お前は……その……」

 急にトーンが下がった。お互いに思い出したくないところではあるが、生き返るには必要なことだからしょうがない。乗り越えないと。

「心臓がないよね」
「ああ……。これはお前の髪や血や皮膚からユグドラシルの葉の再生成分で作り出す。キャラウェイ殿の得意分野なので任せる事にした」

 キャラウェイさんて何の研究をしている人なんだろうか。とはいえ、生物には詳しそうだから任せるしかないが。

「最後に儀式の準備。これは復活の時に魔法陣やら供物やら必要になるのだが、大抵のものは地獄と人間界で揃うのでこちらで手配しよう。他に質問は?」

 質問か……。正直何から聞いたらいいかわからないくらい混乱しているが、一番気になるのは……。

「滝修行ってどれぐらい厳しい?」
「煉獄に行くものの罪によって落ちてくる水の量が違うらしい。天国への道が開かれたとはいえ、現世での罪の量には大小あるからな」
「うへぇ、どれくらい落ちてくるだろう」
「なあに、所詮は天国へ上がる為の儀式みたいなものだから死にはせんさ! もう死んでるがな!」

 明るく振舞ってくれてるが、俺、裁判受けて無いんだよね。なんかの間違いで地獄行が決まってたりしたら、それこそ水に押し流されて地獄へ舞い戻るんじゃないだろうか。

「という訳で、またしばらく会えなくなるのでこの後一日は我に付き合ってもらうぞ!」

 そうか、フェニックスは一週間で可能とは言ってたけど、こっちにも色々用意するものがあるからな。最短でってことだったのか。となればもうしばし魂のまま我慢我慢、か。

 という訳でその後デボラと二人で池のほとりにいったり散歩やなんやかんやして楽しく過ごした。

 そして翌朝。俺は、デボラの付き添いで地獄に行き、煉獄との境まで送ってもらった。本当に不気味なほど妨害だの襲撃だのは無かった。単純に興味がなくなってしまったのだろうか。

 興味がなくなってしまったとしても出会ったら敵同士だ。気を付けるに越したことはない。いきなり襲われたら……あれ? 魂の状態で攻撃を受けたらどうなるんだ?

「あの……デボラサン」
「ん? なんだ?」
「魂の状態で攻撃は有効なのでしょうか。もう一回攻撃を受けて致命的なダメージだったら……?」
「……いいか、キーチロー。煉獄にいる間は奴等も手出しできん。天界のすぐそばだからな。復活してすぐに喧嘩を売るような真似はしないだろう。だが修行が終わっても我が迎えに来るまでその場を動くな。いいな?」

 うん、最悪の事態も想定しておいた方が良さそうだ。
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