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第4章 箱庭大拡張編
(閑話) 自由時間~キャラウェイ、セージ~
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「セージ君、ちょっとちょっと」
思いがけず、自由な時間を得たので、同胞を誘って人間界の生物を観察してみようと思う。そもそも私が魔王として人間界に来た時から数百年が経過しているので街の様子を見ているだけでもワクワクするのだ。この気持ち、誰かと共有せずにはいられない!
「なんですか? キャラウェイさん」
「この後の自由時間何をするつもりでした?」
「初めての人間界なので適当にぶらつくか、キーチローさんを適当につつくかしようとしてました」
ふむ。セージ君なら色々と感動を分かちあえそうですね。
「どうでしょう? この後人間界の散策など」
「キャラウェイさんから誘ってくるなんて……でも僕にはキーチローさんが……」
「わかりました。では一人で行ってきます」
「(半分)冗談ですよ! 行きましょう!」
ふふふ。私は人の恋路を邪魔する趣味はありませんからね。デボラさんだろうがセージ君だろうが好きにくっついて下さい。私の研究対象としてはどちらにしても楽しくなりそうですし。
「では、参りましょう」
「まずはどこへ行きますか?」
「そうですね。先ほど釣り人を見かけたのでそちらへ向かいましょうか。人間の多いところを抜けながら」
そう。いろんな生物がいますが、人間も一つの生物として見た時にこれほど興味を引く生き物はいませんからね。キーチロー君は別格としても。
「でもよく考えたらキャラウェイさんと二人というのも珍しい組み合わせですね」
「そうですね。セージ君はキーチロー君か魔物たちにくっついていることが多いですね」
海岸線を男二人が連れ立って歩く。別に不自然には見えていないはずなのになぜか視線を感じるが……。まあいいでしょう。
「最近思うんですが、キーチローさんをつついているとそっちより魔王様の反応が面白いんですよ。以前はもっと近寄りがたい雰囲気があったと思うんですけど、例の件以降さらに丸くなったというか」
「まあ、地獄の魔王らしく気取っていたんじゃないですかね? 色々ありますから」
そう、地獄の魔王にも色々あるんですよ。ドラ君の問題も先々代としては割と頭の痛い問題ですね。コンフリー君なんかはうちの代ですでに頭角を現していたぐらいですし。禁忌キッズの二人は生まれたころから知ってますし複雑な気持ちですね。
「ところでキーチローさんとは上手くいってるんですか?」
「ええ、仲のいい職場の同僚ですよ?」
「そんなもんなのですか?」
「ええ、あくまで男同士ですからね」
「シャレですか?」
「そうですね。魔王様の様子見てると手出ししづらいし。てか、あの人純粋にあくまなのかな?」
む、このセージ君。なかなか鋭い。他人をよく見ていますね。侮りがたし。
「さあ、着きましたよ!」
魚と言えば地獄の川魚しか見たことがありませんが、海の魚にはどんな特徴があるんでしょうねぇ!
「おじさん、釣れますか?」
「お? 兄ちゃんたち釣りに興味あるのかい?」
正確には生き物に興味があるのですが……。
「ええ、まあ」
「じゃあ俺のフィッシング、見ていきな! 魚も触らなければ見てってもいいぞ」
ふむ。何やらゲジゲジした地獄の生き物みたいですね。
「兄ちゃん! そっちはエサ! 魚はこっちだろ!」
わ、笑われてしまった……。しかしこれがエサとは。どんな醜悪な生き物が釣れているのか楽しみですね……!
「なんか、あまり川魚と変わり映えしないですね」
「そう……ですね」
何という事でしょう。あのような凶悪な形をしたエサを好んで食べるぐらいですからてっきり牙ぐらいは生えているのかと思いきや……。
「なるほど。おじさん、ありがとうございました!」
食べているものとそのものの醜悪さは比例しないという事でしょうかね。また一つ良い知識を手に入れました。しかし、フナムシのような感動は今一つ得られませんでしたね。
「あの……、キャラウェイさん?」
「なんでしょう」
「我々二人になってから妙に視線を感じるというか……」
なんと、セージ君も感じていましたか! となると私の思い過ごしではなさそうですね。ドラ君の一派でしょうか……?
「警戒はしておいた方が良さそうですね」
「……はい!」
すると突然人間の女性が声をかけてこられたではないですか。これはもしや何かの罠……?
「あの……突然で失礼なんですけど……お二人ってお付き合いなさってるんですか?」
「は?」
「キャー聞いちゃった!」
「え?」
何を言っているのだこの女は。
「二人のイケメンが尊い距離感で歩いていらっしゃったのでこれはもう……ねっ!」
「うんうん! あたし達そういうの大好物なんです! どうか写真撮らせていただけませんか!?」
あれよあれよの内にセージ君とツーショット写真を撮られてしまいました……。
「人間の考えることはよくわかりませんね……」
「尊いって我々、神とは一番縁遠い存在なんですけどね」
何やら、疲れました。人間観察を続けながら宿に帰るとしましょう。
「しかし、私が以前来たころとは文明レベルが段違いです。デボラさんがご執心なのもよくわかりますね」
周りを見渡すと、当り前のようにビニール袋やガラス、鉄製品が溢れかえっている。これが僅か数百年のうちに発展したというのだから驚くほかない。
「見てください! 本屋です! 人間界の!」
「私、少しだけベルさんからお小遣いもらってるんです! 少し見て行ってもいいですか!?」
最近、ステビアさんの影響で暇なときはセージ君も読書をしているようでおススメの地獄図書を聞かれたりするのですが……。人間界の図書! これはステビアさんにもお土産になりそうです!
「見てください! 図鑑です!」
「買います!」
素晴らしい……! こんな出会いがあるとは……! 丁寧に前頁写真と解説付き!
しかも、魚、陸上生物、虫と種類別に! 買って帰らねば!!!
「全冊買います! お値段……なにぃ!?」
一冊、3,500円だと……? ぐぅぅぅ。お小遣いは5,000円……。一冊しか買えない……。ベルさんに連絡するか……? いや、私とて先々代魔王、金の貸し借りなど……。 いや……しかし……。
「どおおおしたらいいいいんだああああ!!!」
思いがけず、自由な時間を得たので、同胞を誘って人間界の生物を観察してみようと思う。そもそも私が魔王として人間界に来た時から数百年が経過しているので街の様子を見ているだけでもワクワクするのだ。この気持ち、誰かと共有せずにはいられない!
「なんですか? キャラウェイさん」
「この後の自由時間何をするつもりでした?」
「初めての人間界なので適当にぶらつくか、キーチローさんを適当につつくかしようとしてました」
ふむ。セージ君なら色々と感動を分かちあえそうですね。
「どうでしょう? この後人間界の散策など」
「キャラウェイさんから誘ってくるなんて……でも僕にはキーチローさんが……」
「わかりました。では一人で行ってきます」
「(半分)冗談ですよ! 行きましょう!」
ふふふ。私は人の恋路を邪魔する趣味はありませんからね。デボラさんだろうがセージ君だろうが好きにくっついて下さい。私の研究対象としてはどちらにしても楽しくなりそうですし。
「では、参りましょう」
「まずはどこへ行きますか?」
「そうですね。先ほど釣り人を見かけたのでそちらへ向かいましょうか。人間の多いところを抜けながら」
そう。いろんな生物がいますが、人間も一つの生物として見た時にこれほど興味を引く生き物はいませんからね。キーチロー君は別格としても。
「でもよく考えたらキャラウェイさんと二人というのも珍しい組み合わせですね」
「そうですね。セージ君はキーチロー君か魔物たちにくっついていることが多いですね」
海岸線を男二人が連れ立って歩く。別に不自然には見えていないはずなのになぜか視線を感じるが……。まあいいでしょう。
「最近思うんですが、キーチローさんをつついているとそっちより魔王様の反応が面白いんですよ。以前はもっと近寄りがたい雰囲気があったと思うんですけど、例の件以降さらに丸くなったというか」
「まあ、地獄の魔王らしく気取っていたんじゃないですかね? 色々ありますから」
そう、地獄の魔王にも色々あるんですよ。ドラ君の問題も先々代としては割と頭の痛い問題ですね。コンフリー君なんかはうちの代ですでに頭角を現していたぐらいですし。禁忌キッズの二人は生まれたころから知ってますし複雑な気持ちですね。
「ところでキーチローさんとは上手くいってるんですか?」
「ええ、仲のいい職場の同僚ですよ?」
「そんなもんなのですか?」
「ええ、あくまで男同士ですからね」
「シャレですか?」
「そうですね。魔王様の様子見てると手出ししづらいし。てか、あの人純粋にあくまなのかな?」
む、このセージ君。なかなか鋭い。他人をよく見ていますね。侮りがたし。
「さあ、着きましたよ!」
魚と言えば地獄の川魚しか見たことがありませんが、海の魚にはどんな特徴があるんでしょうねぇ!
「おじさん、釣れますか?」
「お? 兄ちゃんたち釣りに興味あるのかい?」
正確には生き物に興味があるのですが……。
「ええ、まあ」
「じゃあ俺のフィッシング、見ていきな! 魚も触らなければ見てってもいいぞ」
ふむ。何やらゲジゲジした地獄の生き物みたいですね。
「兄ちゃん! そっちはエサ! 魚はこっちだろ!」
わ、笑われてしまった……。しかしこれがエサとは。どんな醜悪な生き物が釣れているのか楽しみですね……!
「なんか、あまり川魚と変わり映えしないですね」
「そう……ですね」
何という事でしょう。あのような凶悪な形をしたエサを好んで食べるぐらいですからてっきり牙ぐらいは生えているのかと思いきや……。
「なるほど。おじさん、ありがとうございました!」
食べているものとそのものの醜悪さは比例しないという事でしょうかね。また一つ良い知識を手に入れました。しかし、フナムシのような感動は今一つ得られませんでしたね。
「あの……、キャラウェイさん?」
「なんでしょう」
「我々二人になってから妙に視線を感じるというか……」
なんと、セージ君も感じていましたか! となると私の思い過ごしではなさそうですね。ドラ君の一派でしょうか……?
「警戒はしておいた方が良さそうですね」
「……はい!」
すると突然人間の女性が声をかけてこられたではないですか。これはもしや何かの罠……?
「あの……突然で失礼なんですけど……お二人ってお付き合いなさってるんですか?」
「は?」
「キャー聞いちゃった!」
「え?」
何を言っているのだこの女は。
「二人のイケメンが尊い距離感で歩いていらっしゃったのでこれはもう……ねっ!」
「うんうん! あたし達そういうの大好物なんです! どうか写真撮らせていただけませんか!?」
あれよあれよの内にセージ君とツーショット写真を撮られてしまいました……。
「人間の考えることはよくわかりませんね……」
「尊いって我々、神とは一番縁遠い存在なんですけどね」
何やら、疲れました。人間観察を続けながら宿に帰るとしましょう。
「しかし、私が以前来たころとは文明レベルが段違いです。デボラさんがご執心なのもよくわかりますね」
周りを見渡すと、当り前のようにビニール袋やガラス、鉄製品が溢れかえっている。これが僅か数百年のうちに発展したというのだから驚くほかない。
「見てください! 本屋です! 人間界の!」
「私、少しだけベルさんからお小遣いもらってるんです! 少し見て行ってもいいですか!?」
最近、ステビアさんの影響で暇なときはセージ君も読書をしているようでおススメの地獄図書を聞かれたりするのですが……。人間界の図書! これはステビアさんにもお土産になりそうです!
「見てください! 図鑑です!」
「買います!」
素晴らしい……! こんな出会いがあるとは……! 丁寧に前頁写真と解説付き!
しかも、魚、陸上生物、虫と種類別に! 買って帰らねば!!!
「全冊買います! お値段……なにぃ!?」
一冊、3,500円だと……? ぐぅぅぅ。お小遣いは5,000円……。一冊しか買えない……。ベルさんに連絡するか……? いや、私とて先々代魔王、金の貸し借りなど……。 いや……しかし……。
「どおおおしたらいいいいんだああああ!!!」
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