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第3章 魔草マンドラゴラ編
地獄の34丁目 効能24時間?/生命と命名
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「ところでキーチロー君。ここの生物は私が知っているものより少々、平均的に魔力が高いように感じられますが?」
カブタンに寄りかかって少し涙目になっていた俺はその一言で思い出した。そしてキャラウェイさんに相談してみた。
「……なるほど。トレントやキラービーに名付けを行った時に一瞬キラキラして見えたと」
「そうなんです。本当に一瞬でしたからもしかしたら見間違いかもしれないと思ったんですが。そもそも、この子たちに名前を付ける時はその場にいなかったり見てなかったりで、確証もないですし」
「いや、それは恐らく見間違いでも勘違いでもないでしょう。現にこのカブタンと呼ばれているヘルワームは成長の速度が早いようですし、何より魔力値も通常のものより高いです」
おお、そうなのか。よかったな! カブタン達!
「名前を与えることで魔力を帯びる……。確かにそれはあり得ます。デボラさんはそれを利用してこのアルカディア・ボックスを強化しているようですし」
「魔力が高いと狂暴になったり、魔法を使い始めたりするんですか?」
「いえ、そういう事は無いと思いますが手当たり次第に名前を付けるのは一度検討した方が良いかもしれませんね」
「と言いますと?」
「どうなるか分からないというのが私からの答えです」
「なるほど。わかりました。新職員が来たら一度、全員で集まって相談しましょう」
「ぜひ!」
キャラウェイさんは中々に話の分かる人物だ。地獄という場所のイメージが少しずつ自分の中でズレていく。前にベルの話していた地獄の住人の人物像とはかけ離れた人しかいない。裁判所にしてもそうだ。あれは単に脅しだったんだろうか……。
「ところでこの、ケルべロスと散歩しながら回ってもいいですか!?」
「ええ、どうぞ。 名前は左からダン、マツ、マーです」
「気を付けてくださいねぇ? あまり人に懐かないタイプですからぁ」
「え? そうですか?」
ダママはすでにキャラウェイさんの手に『お手』をしていた。これには少しローズも凹んでいたようだ。表情は笑顔のままだったが。
「おやつのクッキーです」
ダママにあげようと思って部屋から持ってきたクッキーをキャラウェイさんに手渡した。
「ありがとうございます! じゃあ、行きましょう! ローズさん」
「さんはいりませんわ! ローズって呼んでくださぁい!」
「では、ローズ! あちらからお願いします!」
「はぁい!」
うむ。ある意味厄介払いができたかもしれん。俺は少し見回ったら部屋に戻るとするか。なぜかわからないが少し貧血気味だ。
そうだ、一応魔王様とベルにキャラウェイさんが来ていることを伝えておこう。あの雰囲気だと本当に今日にも引っ越してきそうだし。
********************
グループ名【ヘルガーディアンズ】
キ:今日、ワクワクが止まらないキャラウェイさんがアルカディア・ボックスにいらっしゃいました。大層お気に入りの様子です。
デ:何!? そういう事は早く言え! 我もすぐ行く!
キ:すぐって
********************
返信を打ち終わる前に目の前に魔王様が現れた。
「行動早すぎませんか!?」
「思い立ったが吉日だ!」
「色々と忙しいはずでは……?」
「最重要案件の最重要人物だ! 丁重にお迎えせねば!」
お迎えと言っちゃあいるが俺には分かる。これは自分の作品を同じ趣味の話が分かる奴に見てもらいたくてウズウズしてるやつだ。俺も小学生の頃、描いた怪獣の絵を同じクラスの怪獣マニア佐藤君と語り合うのは楽しかった。地獄生物オタクという極めてニッチな趣味なのだから、語り合う喜びも一入《ひとしお》だろう。
「今、ローズとダママと一緒に暫定フィールドを見に行ってると思いますよ」
「そうか! ではさらばだ! ゲンキーチロー! プッ」
そうそう。元気なキーチロー……ってやかましいわ。すっかり自分の体調の事忘れてた。帰って昼寝しよう。
そして起きたらベルから通知が来ていた。
********************
【ベル】
ベ:体調の方はどうですか?
キ:元気です!
ベ:それはどちらの
ベ:いや、なんでもないです
キ:副作用は未だ健在です……
ベ:阿久津さんが気にしてましたよ。あなたに聞きたいことがあったのにとかで
キ:どうせ、ベルさんか広瀬さんの事だと思います。しつこい奴だな
ベ:私の事で何か?
キ:食事に誘うように言われてます。適当にはぐらかしてますが
ベ:いざとなったら私はどうとでも処理できますので
キ:すいません。会社にいる時は普通の女性にしか見えなくてつい悪魔だって事を忘れがちに
ベ:ご心配どうも
キ:それはそうと今日からキャラウェイさん(図鑑の作者)がアルカディア・ボックスに来られてます
ベ:そういえばそのような話になっていましたね。デボラ様ももうすでに?
キ:はい。大層楽しそうでしたよ!
ベ:わ、私も早くそっちに行きたい……!!
********************
最近、というか割ずっと思っていたことだがベルは、こと魔王様の事になると自分のキャラ設定を忘れがちになる。もうちょっとキリっとしてたはずなんだがな……。
さて、ベルは今は俺と会いたくないだろうし、この機会にアニメの消化や読書でも楽しむか! 限りある時間を有効に使わなくては真の社会人とは言えない。ましてや、やっと手に入れた有休を一日使ったのだ。戦士に休息の時間は必要不可欠なのである!
しかし、やっと手に入れた休息も束の間、なんと阿久津から電話がかかってきた。
新入社員の歓迎会で酔いつぶれた際にうっかり教えてしまったのだ。
「おい、キーチロー君よ! なんで今日休んでんの?」
「病欠の連絡はベルさんにしておりますが……」
「お前が病気かどうかは関係ないんだよ。いつになったら約束果たしてくれんの?」
いつの間にか食事の件は約束になっていたらしい。
「すいません、本人に確認してみます……」
「あんまり遅いと査定に響くかもしんないよ?」
「勘弁してくださ……プツッ」
え……? 切れた……? いや、ほんと勘弁してくださいよ。そもそも“病欠”だっつってんだろ!“常識”をコインロッカーにでも預けてんのか!? こいつが地獄の生き物だったらバカツ マヌケと命名してやるところだ!
俺はむしゃくしゃしながらゴロ寝グータラモードに何とか気持ちを切り替えた。
はぁ……、アニメ最高!!
カブタンに寄りかかって少し涙目になっていた俺はその一言で思い出した。そしてキャラウェイさんに相談してみた。
「……なるほど。トレントやキラービーに名付けを行った時に一瞬キラキラして見えたと」
「そうなんです。本当に一瞬でしたからもしかしたら見間違いかもしれないと思ったんですが。そもそも、この子たちに名前を付ける時はその場にいなかったり見てなかったりで、確証もないですし」
「いや、それは恐らく見間違いでも勘違いでもないでしょう。現にこのカブタンと呼ばれているヘルワームは成長の速度が早いようですし、何より魔力値も通常のものより高いです」
おお、そうなのか。よかったな! カブタン達!
「名前を与えることで魔力を帯びる……。確かにそれはあり得ます。デボラさんはそれを利用してこのアルカディア・ボックスを強化しているようですし」
「魔力が高いと狂暴になったり、魔法を使い始めたりするんですか?」
「いえ、そういう事は無いと思いますが手当たり次第に名前を付けるのは一度検討した方が良いかもしれませんね」
「と言いますと?」
「どうなるか分からないというのが私からの答えです」
「なるほど。わかりました。新職員が来たら一度、全員で集まって相談しましょう」
「ぜひ!」
キャラウェイさんは中々に話の分かる人物だ。地獄という場所のイメージが少しずつ自分の中でズレていく。前にベルの話していた地獄の住人の人物像とはかけ離れた人しかいない。裁判所にしてもそうだ。あれは単に脅しだったんだろうか……。
「ところでこの、ケルべロスと散歩しながら回ってもいいですか!?」
「ええ、どうぞ。 名前は左からダン、マツ、マーです」
「気を付けてくださいねぇ? あまり人に懐かないタイプですからぁ」
「え? そうですか?」
ダママはすでにキャラウェイさんの手に『お手』をしていた。これには少しローズも凹んでいたようだ。表情は笑顔のままだったが。
「おやつのクッキーです」
ダママにあげようと思って部屋から持ってきたクッキーをキャラウェイさんに手渡した。
「ありがとうございます! じゃあ、行きましょう! ローズさん」
「さんはいりませんわ! ローズって呼んでくださぁい!」
「では、ローズ! あちらからお願いします!」
「はぁい!」
うむ。ある意味厄介払いができたかもしれん。俺は少し見回ったら部屋に戻るとするか。なぜかわからないが少し貧血気味だ。
そうだ、一応魔王様とベルにキャラウェイさんが来ていることを伝えておこう。あの雰囲気だと本当に今日にも引っ越してきそうだし。
********************
グループ名【ヘルガーディアンズ】
キ:今日、ワクワクが止まらないキャラウェイさんがアルカディア・ボックスにいらっしゃいました。大層お気に入りの様子です。
デ:何!? そういう事は早く言え! 我もすぐ行く!
キ:すぐって
********************
返信を打ち終わる前に目の前に魔王様が現れた。
「行動早すぎませんか!?」
「思い立ったが吉日だ!」
「色々と忙しいはずでは……?」
「最重要案件の最重要人物だ! 丁重にお迎えせねば!」
お迎えと言っちゃあいるが俺には分かる。これは自分の作品を同じ趣味の話が分かる奴に見てもらいたくてウズウズしてるやつだ。俺も小学生の頃、描いた怪獣の絵を同じクラスの怪獣マニア佐藤君と語り合うのは楽しかった。地獄生物オタクという極めてニッチな趣味なのだから、語り合う喜びも一入《ひとしお》だろう。
「今、ローズとダママと一緒に暫定フィールドを見に行ってると思いますよ」
「そうか! ではさらばだ! ゲンキーチロー! プッ」
そうそう。元気なキーチロー……ってやかましいわ。すっかり自分の体調の事忘れてた。帰って昼寝しよう。
そして起きたらベルから通知が来ていた。
********************
【ベル】
ベ:体調の方はどうですか?
キ:元気です!
ベ:それはどちらの
ベ:いや、なんでもないです
キ:副作用は未だ健在です……
ベ:阿久津さんが気にしてましたよ。あなたに聞きたいことがあったのにとかで
キ:どうせ、ベルさんか広瀬さんの事だと思います。しつこい奴だな
ベ:私の事で何か?
キ:食事に誘うように言われてます。適当にはぐらかしてますが
ベ:いざとなったら私はどうとでも処理できますので
キ:すいません。会社にいる時は普通の女性にしか見えなくてつい悪魔だって事を忘れがちに
ベ:ご心配どうも
キ:それはそうと今日からキャラウェイさん(図鑑の作者)がアルカディア・ボックスに来られてます
ベ:そういえばそのような話になっていましたね。デボラ様ももうすでに?
キ:はい。大層楽しそうでしたよ!
ベ:わ、私も早くそっちに行きたい……!!
********************
最近、というか割ずっと思っていたことだがベルは、こと魔王様の事になると自分のキャラ設定を忘れがちになる。もうちょっとキリっとしてたはずなんだがな……。
さて、ベルは今は俺と会いたくないだろうし、この機会にアニメの消化や読書でも楽しむか! 限りある時間を有効に使わなくては真の社会人とは言えない。ましてや、やっと手に入れた有休を一日使ったのだ。戦士に休息の時間は必要不可欠なのである!
しかし、やっと手に入れた休息も束の間、なんと阿久津から電話がかかってきた。
新入社員の歓迎会で酔いつぶれた際にうっかり教えてしまったのだ。
「おい、キーチロー君よ! なんで今日休んでんの?」
「病欠の連絡はベルさんにしておりますが……」
「お前が病気かどうかは関係ないんだよ。いつになったら約束果たしてくれんの?」
いつの間にか食事の件は約束になっていたらしい。
「すいません、本人に確認してみます……」
「あんまり遅いと査定に響くかもしんないよ?」
「勘弁してくださ……プツッ」
え……? 切れた……? いや、ほんと勘弁してくださいよ。そもそも“病欠”だっつってんだろ!“常識”をコインロッカーにでも預けてんのか!? こいつが地獄の生き物だったらバカツ マヌケと命名してやるところだ!
俺はむしゃくしゃしながらゴロ寝グータラモードに何とか気持ちを切り替えた。
はぁ……、アニメ最高!!
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