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第21話 特殊不明生物対策本部<イレギュラーズ>③

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この目で見るまで半信半疑でしたが、何らかの超常の能力を持っているのは確かですね」

 キワム達との面談を終えた後、佐渡島は本部に帰って幹部を緊急招集した。

 仮定をいくら積み重ねても不毛でしか無いが、想定はいくらでもしておくべきだ。例えば、魔王討伐後、彼等がその力を放棄しなかったら? 例えば他国が彼等の家族を人質にとったら? 例えば、魔王に寝返ったら? イレギュラーズの面々はは最悪を想定した。起こり得る事態を可能な限り想像した。

「取り敢えずは飛ばしますよ? あの力を監視もつけずに放置するのはあり得ない」

 一際影が薄く、人相の悪い男が発言する。諜報部の羽山だ。集まった面々も異議なしの体で頷く。

「それは、向こうも想定内でしょう」
「しかしですね。彼等は魔法も使えるようだし、役に立ちますかね? 洗脳なんてされた日には目も当てられないのでは?」

 研究開発部のグランツ博士は机に足を乗せながら気だるげに答えた。博士の言う通り、魔法の存在が事態をさらに厄介なものにしているのは間違いない。どんな魔法が使えるのかわからない現状、想定は無限に膨らんでしまう。

「僕は虫を飛ばすのに反対してる訳じゃないですよ? ただ、下手に刺激しないほうがいいとは思いますけどね」

 睨むような眼差しで博士を見つめる羽山に博士は宥めるように諭した。

「情報部にも同じ事が言えますがね」
「なぁに? ウチが勘付かれるようなヘマするとでも?」

 情報部の東郷女史もグランツ博士に噛みつく。

「勘付かれるどころか相手の懐にすら潜り込めていないようですが」

 薄笑いを浮かべて挑発するグランツ博士に東郷が青筋を立てて机を殴る。東郷とて、特殊作戦に召集されるだけの腕は持っているし、相手取ってきた敵もまた相応のハッカー、クラッカーだ。だが、本物の魔法という仕組みも理屈も分からないものを相手に戦った経験は当然ながら無い。周辺情報はグランツ博士に押さえられ、身動きが取れなくなっていたところでの事態の進展である。

「俺の力が必要になる場面になったら呼んでくれ、こんなくだらん小競り合いで無い、本物のいくさの場面でな」

 戦闘部門の荒巻は、そう言い残すと席を立って部屋を出て行ってしまった。残された面々も関心なさげにするばかり。

「……落ち着いて、情報を整理しましょう。ともかく彼らに必要以上の接触はしないこと。彼らを刺激して不測の事態を招くよりは、当面、共闘という形をとるというのが望ましいこと。私からは以上です」

 佐渡島は強引にまとめた。分野のエキスパートを招集するという事はこういうリスクがある事も承知していた。個性というか我というか、とにかく自負の強いメンバーが集まりやすい。それらをまとめ上げて統制する事が佐渡島に求められた使命だったが、とかく独断専行が目立つメンバーが多い。そして、もあることを承知していた。佐渡島は最初から特災だけで対応させてもらえば良かったのにと、鉄面皮を崩さず落胆した。



  ☆☆☆



 佐渡島は会議を終えて自宅に戻り、シャワーを浴び、ビール一杯だけの晩酌を終えて寝床についた。そして、電気を消し、を確認すると自らを包む布団にだけ、ごく薄い結界を張った。

「一般人のふりをし続けるというのも難しい。特災だけで動ければ制限なく事に当たれるというのに」

 監視に対する目くらましならこの結界程度で十分だろう。自分にそういったものが付くことも予想の範囲内だ。問題は、どうやって特殊不明生物対策本部を牽制し、彼らに対してどのように信頼を得ていくか。これまで通りのやり方では通用しない。敵が異質で強力であるという事は、で分かっている。それに、政府内部にも獅子身中の虫が入り込んでいるという情報もある。

「ともかく、ゲンカイジャーとは友好的な関係を築かないと」

 そう呟くと、彼女は特災のメンバーに連絡を取り、そして今度こそ本当に就寝した。
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