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第3話 魔王様、ニホンに憧れます!
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「やりたいことリストその2 ニホンとつながりたい」
快適な自分の城を手に入れたことで、色々と余裕が出てきたのか、逆にやりたいことが増えてくる。だが、それらを叶えるためにはまず、ニホンの知識が必要だ。例えばエアコンなどは冷却魔法で代用が可能だ。ただ、電力に当たる部分が魔法では魔力になるので、ただ魔法を垂れ流すのは即ち、自転車をこいで発電しながらエアコンの風に当たることに等しい。魔法を使うだけで発汗したりはしないがそれでも、相応の疲労感はいずれ襲ってくる。
魔力を補うのなら魔石という手段がある。魔石とは鉱山などで高濃度に濃縮された魔素の塊だが、純度の高いものはあいにくそこらにホイホイ落ちているものではない。この世界では、エビルマウンテンという鉱山からのみ産出する。前は部下がせっせと掘り出していたがそのダンジョンもすでに勇者たちによって攻略済み。採掘を任せていた部下はことごとく勇者によって葬られてしまったし、入り口は激しい戦闘で崩落してしまったし……。ゆくゆくはそれも自分で解消するとしても……。
「やれやれ、ままならんものだ」
軽い溜息をつくと、おもむろに俺の脳に電流が走る。
「魔法の力で、ニホンと繋がればいいんじゃね? そしたら俺の生活は一気に上向くんじゃね?」
「いや、待てよ。次元の超越となると何が必要になる?」
「肉体の転移は相応の代償が必要か……。情報だけなら? むしろ電波だけでも? こちらで情報を受け取るツールさえ作れば……」
あ、驚かれましたか? 私、こう見えて(どう見えてるか知らんが)魔学に明るかったりするんですよ。魔法の製作やこちらの世界における理の領域に踏み込んだりしましてね。そんなこんなで気が付けば『魔王』なんて呼ばれてたりしてたわけでして。
「情報だけでも送受信出来たら相当こっちの生活楽しいぞ!! そうと決まればストーキンg……、いや、監視と並行してニホンとの交信を試みる!! そしてゆくゆくはニホンとこちらの世界を行き来してやる!」
おお、これだ。邪心の無い野心。いや、俺も最初はこうだったはずだ。ある日気まぐれで筋トレ始めたらガンガン成長して、いつの間にか近所に並ぶ者の居ない荒くれもの扱いになってしまったために道を踏み外したが、根っこは学者系というか研究家というかそんな一面もあったりして、何か一つに打ち込むのも嫌いじゃない。むしろ好きな部類。今はやりたいことが多すぎて悩ましい限りだが。
「ニホンと交信出来たらまず何をする? 紙の作り方? スマホの作り方? あらゆる電子機器、電化製品の仕組みを理解して……魔法で再現できるものは再現してだな」
フムフム。大筋固まってきたな。まずは情報。兎にも角にも情報だ。ニホンから情報を引き出せるようになったら我が城Ver.2の快適さもマシマシになる事請け合いだ。エアコンの例で言えば、二つの世界の技術を融合したっていい。魔力で動くエアコンとか。
「よし、なんやかんやしてる間に勇者一行は去っていったようだな。この辺にいないとなればいくら何でも感知されたりなどしないだろう」
そうとなれば製作用の素材や魔術媒体を掻き集められるだけ掻き集めよう。どこがいいだろうか。幸いこの魔大陸“エンドヴァルド”には魔石以外にも、魔素を含んだ物は色々ある。それらを採取して実験を繰り返していればこの魔王に不可能など無い。とりあえず、有力なのは元の我が城あたりか。あそこなら食料もあるし宝物庫が無事なら魔道具や魔導書なんかも手に入る。そうすればニホンへの道はグッと近づくはずだ。
「異世界への次元の扉を開く……か。ここだけ見るといかにも魔王らしくていいじゃないか」
一人、自画自賛してみるが、誰が聞いているわけでもなく。それはそうと次元を超越する魔法となると相応の代償が見込まれる。それこそ全人類の魔力とか屍とか血とか臓物とか。
うわ。それはマズイ。全人類が居なくなったこの世界になんの魅力もないもの。俺が普通の魔王だったらそれでも構わないぐらいの心意気なんだろうけどそもそも欲しいものがニホンの暮らしだしなあ……。そんなもんのために犠牲になるのはさすがにお気の毒すぎる。何より勇者達がいよいよ黙ってないだろう。やりたい事①に反するのでこれは却下。
俺は色々、今後のストーリーを考えながら、ついにこの城から一歩踏み出すことにした。
「さてさて、久々のエンドヴァルドか」
我が城Ver.2に地上への階段を取り付け、一歩一歩噛みしめるように昇る。何せ約90年ぶりの我が支配領域だ。こっちの時間では数時間程度しか経ってないようだが。どんな景色だっただろうか。いまいち日本の記憶が強すぎて思い出しづらい。
勇者たちが一体どこに我が墓標を立ててくれたのかも気になる。大陸端の見晴らしのいい崖なんかだと嬉しいが、それはそれで我が城拡張計画にも響いてくる。立地を確認しなかったのは俺様痛恨のミスだ。
「さぁ、我が懐かしきエンドヴァルド!!」
俺は階段の終わりに石製の扉を備え付けた。鉄が足りないのでしかたない。だが、魔王たる者、常在戦場、常に鍛練を怠らぬものだ。腕力はあるに越したことは無い。
「ぬおっ!!! くうぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」
いざ!!!
ガチッ! ガチッ!
開かない!!!!
「え、嘘でしょ!? 何が邪魔してるんだ!? 空気穴はさっき空けられたが!?」
もういっちょ穴をあけてみるか? いや、待て待て。これは下手に穴をボコボコ空けるとこの上にある物体Xが我が城Ver.2内に侵入して来ないとも限らないぞ。空気穴を空けた方面は無事なわけだからそこから出てみることにしよう。
「何やらケチがついてしまったが……、いざ!!!」
石製の扉を再度、空気穴付近に作成し、ガチャリと開けるとそこには予想だにしない驚愕の結果が!!!
快適な自分の城を手に入れたことで、色々と余裕が出てきたのか、逆にやりたいことが増えてくる。だが、それらを叶えるためにはまず、ニホンの知識が必要だ。例えばエアコンなどは冷却魔法で代用が可能だ。ただ、電力に当たる部分が魔法では魔力になるので、ただ魔法を垂れ流すのは即ち、自転車をこいで発電しながらエアコンの風に当たることに等しい。魔法を使うだけで発汗したりはしないがそれでも、相応の疲労感はいずれ襲ってくる。
魔力を補うのなら魔石という手段がある。魔石とは鉱山などで高濃度に濃縮された魔素の塊だが、純度の高いものはあいにくそこらにホイホイ落ちているものではない。この世界では、エビルマウンテンという鉱山からのみ産出する。前は部下がせっせと掘り出していたがそのダンジョンもすでに勇者たちによって攻略済み。採掘を任せていた部下はことごとく勇者によって葬られてしまったし、入り口は激しい戦闘で崩落してしまったし……。ゆくゆくはそれも自分で解消するとしても……。
「やれやれ、ままならんものだ」
軽い溜息をつくと、おもむろに俺の脳に電流が走る。
「魔法の力で、ニホンと繋がればいいんじゃね? そしたら俺の生活は一気に上向くんじゃね?」
「いや、待てよ。次元の超越となると何が必要になる?」
「肉体の転移は相応の代償が必要か……。情報だけなら? むしろ電波だけでも? こちらで情報を受け取るツールさえ作れば……」
あ、驚かれましたか? 私、こう見えて(どう見えてるか知らんが)魔学に明るかったりするんですよ。魔法の製作やこちらの世界における理の領域に踏み込んだりしましてね。そんなこんなで気が付けば『魔王』なんて呼ばれてたりしてたわけでして。
「情報だけでも送受信出来たら相当こっちの生活楽しいぞ!! そうと決まればストーキンg……、いや、監視と並行してニホンとの交信を試みる!! そしてゆくゆくはニホンとこちらの世界を行き来してやる!」
おお、これだ。邪心の無い野心。いや、俺も最初はこうだったはずだ。ある日気まぐれで筋トレ始めたらガンガン成長して、いつの間にか近所に並ぶ者の居ない荒くれもの扱いになってしまったために道を踏み外したが、根っこは学者系というか研究家というかそんな一面もあったりして、何か一つに打ち込むのも嫌いじゃない。むしろ好きな部類。今はやりたいことが多すぎて悩ましい限りだが。
「ニホンと交信出来たらまず何をする? 紙の作り方? スマホの作り方? あらゆる電子機器、電化製品の仕組みを理解して……魔法で再現できるものは再現してだな」
フムフム。大筋固まってきたな。まずは情報。兎にも角にも情報だ。ニホンから情報を引き出せるようになったら我が城Ver.2の快適さもマシマシになる事請け合いだ。エアコンの例で言えば、二つの世界の技術を融合したっていい。魔力で動くエアコンとか。
「よし、なんやかんやしてる間に勇者一行は去っていったようだな。この辺にいないとなればいくら何でも感知されたりなどしないだろう」
そうとなれば製作用の素材や魔術媒体を掻き集められるだけ掻き集めよう。どこがいいだろうか。幸いこの魔大陸“エンドヴァルド”には魔石以外にも、魔素を含んだ物は色々ある。それらを採取して実験を繰り返していればこの魔王に不可能など無い。とりあえず、有力なのは元の我が城あたりか。あそこなら食料もあるし宝物庫が無事なら魔道具や魔導書なんかも手に入る。そうすればニホンへの道はグッと近づくはずだ。
「異世界への次元の扉を開く……か。ここだけ見るといかにも魔王らしくていいじゃないか」
一人、自画自賛してみるが、誰が聞いているわけでもなく。それはそうと次元を超越する魔法となると相応の代償が見込まれる。それこそ全人類の魔力とか屍とか血とか臓物とか。
うわ。それはマズイ。全人類が居なくなったこの世界になんの魅力もないもの。俺が普通の魔王だったらそれでも構わないぐらいの心意気なんだろうけどそもそも欲しいものがニホンの暮らしだしなあ……。そんなもんのために犠牲になるのはさすがにお気の毒すぎる。何より勇者達がいよいよ黙ってないだろう。やりたい事①に反するのでこれは却下。
俺は色々、今後のストーリーを考えながら、ついにこの城から一歩踏み出すことにした。
「さてさて、久々のエンドヴァルドか」
我が城Ver.2に地上への階段を取り付け、一歩一歩噛みしめるように昇る。何せ約90年ぶりの我が支配領域だ。こっちの時間では数時間程度しか経ってないようだが。どんな景色だっただろうか。いまいち日本の記憶が強すぎて思い出しづらい。
勇者たちが一体どこに我が墓標を立ててくれたのかも気になる。大陸端の見晴らしのいい崖なんかだと嬉しいが、それはそれで我が城拡張計画にも響いてくる。立地を確認しなかったのは俺様痛恨のミスだ。
「さぁ、我が懐かしきエンドヴァルド!!」
俺は階段の終わりに石製の扉を備え付けた。鉄が足りないのでしかたない。だが、魔王たる者、常在戦場、常に鍛練を怠らぬものだ。腕力はあるに越したことは無い。
「ぬおっ!!! くうぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」
いざ!!!
ガチッ! ガチッ!
開かない!!!!
「え、嘘でしょ!? 何が邪魔してるんだ!? 空気穴はさっき空けられたが!?」
もういっちょ穴をあけてみるか? いや、待て待て。これは下手に穴をボコボコ空けるとこの上にある物体Xが我が城Ver.2内に侵入して来ないとも限らないぞ。空気穴を空けた方面は無事なわけだからそこから出てみることにしよう。
「何やらケチがついてしまったが……、いざ!!!」
石製の扉を再度、空気穴付近に作成し、ガチャリと開けるとそこには予想だにしない驚愕の結果が!!!
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