奇跡の確率

カザハナ

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85 (クリス視点)

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「コーディーは置いて行かれる事に不満はなかったのか?」


 家族に対してこれ程愛情深いコーディーが、寂しがらない訳がない。猫の姿をした私にすら寂しいと言っていたぐらいだ。


「不満というか……不安だったかな?次はいつ会えるか分からないし、その時父様、魔物の邪気に当てられて、すっごく辛そうだったから」

「魔物?」

「えっと、前に言ってたでしょ?強い魔物に殺されかけたって。父様も強かったから、父様が撃退してくれたんだけど、その時魔物の邪気に当てられて、身動きが鈍くなっちゃったんだ。だから、邪気払いする為と、もっと強くなる為に旅に出たんだよ。あと、当てられた邪気は抜けるまで、一人でいた方がいいんだって」

「人間が魔物の邪気に当てられた場合、薄ければ放って置いても問題ないが、強い魔物程邪気が濃いからな。精神が弱ければ邪気によって衰弱する事もあるし、周りの者にも影響を及ぼすと聞く。人間が魔物の邪気を抜く場合、なるべく多くの精霊族の気に当たらねば抜けぬ物らしい」


 コーディーの説明に、ジード殿が補足を加えてくれる。周りに影響が出るのならば、確かに連れて行くのは危険だろう。


「ああ、だからコーディーを置いて旅に出たのか……」

「父様は強いから、邪気になんか負けないけど、僕もその時は十二才だったから、身元引き受け人が絶対必要だったんだよ。ただ僕、ジジ様や姉様とは会ってたけど、ルー兄とは会ったことなかったんだ。父様が言うには、ジジ様も姉様も遠く離れてるし、お仕事が忙しい人達だから、頼むのは難しいし、一番任せられそうなのはルー兄だったんだって。一応父様がルー兄に連絡してくれて、ルー兄が迎えに来てくれるって聞いてたけど、すれ違いにならないかちょっと心配してたんだ」

「アス兄さんは、僕がコーディーのお父さんと面識があるって知っていたからね。それに目印になる物をコーディーが持っていたし、すれ違いになっても、見付ける自信はあったよ。黒髪自体とても珍しいからね」


 そういえば、コーディーとナイツ殿以外に黒髪の人間は見た事がないな。居て焦〈こ〉げ茶か深紅、深緑や深青といった色なら見た事はあるが、黒や黒に近い色等は見た事がない。


「黒髪というのはそれ程珍しい色なのか」

「内陸部ではね。この街〈ヴェネック〉は大陸の中心部に近いから、この辺りでは非常に珍しいんだよ。海辺には多いけど、ここから海までは数ヶ月から半年は掛かる距離だからね」
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