奇跡の確率

カザハナ

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 村を三つ程回った後、ヴェネックから一番近い街を目指し、僕達はまた走り出す。

 そしてその日の夕暮れ時、日が落ちる前に少し開けた場所を見付け、野宿の準備を始める。

 森で薪〈たきぎ〉を集め、獣避けの木の木屑を混ぜる。この獣避けは、燃やすと火が黄色に燃える。だから見た目でもすぐ分かるのだ。ルー兄曰く、人間には分からない独特の匂いがあり、普通の獣はそれを嫌うらしい。僕としては、赤い炎はトラウマを呼び起こすから、こっちの色の炎の方がありがたい。

 両親が亡くなった原因の火事は、家への放火。その時僕は家の中にいて、熱くて苦しくて息が出来なくて、どうしようもなくなった時、お母さんが僕を見付け、守り、助けてくれた。僕は火傷を負うこともなく、お母さんの力で助かったけど……翌日、炎の中に取り残されたお母さんと、僕とお母さんのいる家の中へと駆け込んだお父さんの遺体が重なるように見つかったらしい。それ以来僕は、大きな赤い炎を見るとその時のことを思い出し、パニックに陥り記憶が曖昧になる。だから僕は火を使う時は、必ずこの獣避けを混ぜ込む。まあ一応、小さな火なら赤いのでも克服できたけどね。


「うっしゃ、準備完了~♪」


 火を起こし、クリスへと声を掛ける。


「もう他に人は来ないし、人型に戻っても大丈夫だよクリス」

「ああ、そのようだな」


 クリスが猫から青年の姿に変わる。


「おお~。翼を出さなくても変われるんだね」

「あれは注目を寄せるための演出みたいなものだ。あの場は私が何かを思い知らせてやるためにやったのだから」


 さらっとクリスは言うけど、あれって僕のためだよね。そのためにわざわざ目立つ行動を取ってくれたんだよね。本当にクリスって優しいなぁ!


「ありがとうね、クリス。僕、クリスの恋人になれて嬉しいよ♪」

「……私の加護をコーディーに付けたい。出来れば今直ぐ」


 そういえば僕、クリスに了承してたなぁ。でも、具体的にどうやって付けるんだろう?


「あー……それなら僕は暫く席を外そうか?僕は全然気にならないけれども、コーディーは気にしそうだしね」


 ???ルー兄は気にならないけど僕は気になるの?


「え?それってどう付けるの?」


 僕が首を傾げながら聞いてみる。


「普通の加護と言われる契約は皮膚接触、手を触れ合わせたりして私の魔力を相手に送るが、コーディーの場合は翼有人から見て恋人だと分かるよう、口付けしながら魔力を乗せた気を練り込む。ただ、私の気をコーディーに馴染ませるために、暫くの間毎日コーディーと口付けをする事になるが」


 ……くっ、口、付、けぇ~~~?!?

 まさかのクリスの爆弾発言に、僕がフリーズしたのは言うまでもない。
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