44 / 135
42
しおりを挟む
村を三つ程回った後、ヴェネックから一番近い街を目指し、僕達はまた走り出す。
そしてその日の夕暮れ時、日が落ちる前に少し開けた場所を見付け、野宿の準備を始める。
森で薪〈たきぎ〉を集め、獣避けの木の木屑を混ぜる。この獣避けは、燃やすと火が黄色に燃える。だから見た目でもすぐ分かるのだ。ルー兄曰く、人間には分からない独特の匂いがあり、普通の獣はそれを嫌うらしい。僕としては、赤い炎はトラウマを呼び起こすから、こっちの色の炎の方がありがたい。
両親が亡くなった原因の火事は、家への放火。その時僕は家の中にいて、熱くて苦しくて息が出来なくて、どうしようもなくなった時、お母さんが僕を見付け、守り、助けてくれた。僕は火傷を負うこともなく、お母さんの力で助かったけど……翌日、炎の中に取り残されたお母さんと、僕とお母さんのいる家の中へと駆け込んだお父さんの遺体が重なるように見つかったらしい。それ以来僕は、大きな赤い炎を見るとその時のことを思い出し、パニックに陥り記憶が曖昧になる。だから僕は火を使う時は、必ずこの獣避けを混ぜ込む。まあ一応、小さな火なら赤いのでも克服できたけどね。
「うっしゃ、準備完了~♪」
火を起こし、クリスへと声を掛ける。
「もう他に人は来ないし、人型に戻っても大丈夫だよクリス」
「ああ、そのようだな」
クリスが猫から青年の姿に変わる。
「おお~。翼を出さなくても変われるんだね」
「あれは注目を寄せるための演出みたいなものだ。あの場は私が何かを思い知らせてやるためにやったのだから」
さらっとクリスは言うけど、あれって僕のためだよね。そのためにわざわざ目立つ行動を取ってくれたんだよね。本当にクリスって優しいなぁ!
「ありがとうね、クリス。僕、クリスの恋人になれて嬉しいよ♪」
「……私の加護をコーディーに付けたい。出来れば今直ぐ」
そういえば僕、クリスに了承してたなぁ。でも、具体的にどうやって付けるんだろう?
「あー……それなら僕は暫く席を外そうか?僕は全然気にならないけれども、コーディーは気にしそうだしね」
???ルー兄は気にならないけど僕は気になるの?
「え?それってどう付けるの?」
僕が首を傾げながら聞いてみる。
「普通の加護と言われる契約は皮膚接触、手を触れ合わせたりして私の魔力を相手に送るが、コーディーの場合は翼有人から見て恋人だと分かるよう、口付けしながら魔力を乗せた気を練り込む。ただ、私の気をコーディーに馴染ませるために、暫くの間毎日コーディーと口付けをする事になるが」
……くっ、口、付、けぇ~~~?!?
まさかのクリスの爆弾発言に、僕がフリーズしたのは言うまでもない。
そしてその日の夕暮れ時、日が落ちる前に少し開けた場所を見付け、野宿の準備を始める。
森で薪〈たきぎ〉を集め、獣避けの木の木屑を混ぜる。この獣避けは、燃やすと火が黄色に燃える。だから見た目でもすぐ分かるのだ。ルー兄曰く、人間には分からない独特の匂いがあり、普通の獣はそれを嫌うらしい。僕としては、赤い炎はトラウマを呼び起こすから、こっちの色の炎の方がありがたい。
両親が亡くなった原因の火事は、家への放火。その時僕は家の中にいて、熱くて苦しくて息が出来なくて、どうしようもなくなった時、お母さんが僕を見付け、守り、助けてくれた。僕は火傷を負うこともなく、お母さんの力で助かったけど……翌日、炎の中に取り残されたお母さんと、僕とお母さんのいる家の中へと駆け込んだお父さんの遺体が重なるように見つかったらしい。それ以来僕は、大きな赤い炎を見るとその時のことを思い出し、パニックに陥り記憶が曖昧になる。だから僕は火を使う時は、必ずこの獣避けを混ぜ込む。まあ一応、小さな火なら赤いのでも克服できたけどね。
「うっしゃ、準備完了~♪」
火を起こし、クリスへと声を掛ける。
「もう他に人は来ないし、人型に戻っても大丈夫だよクリス」
「ああ、そのようだな」
クリスが猫から青年の姿に変わる。
「おお~。翼を出さなくても変われるんだね」
「あれは注目を寄せるための演出みたいなものだ。あの場は私が何かを思い知らせてやるためにやったのだから」
さらっとクリスは言うけど、あれって僕のためだよね。そのためにわざわざ目立つ行動を取ってくれたんだよね。本当にクリスって優しいなぁ!
「ありがとうね、クリス。僕、クリスの恋人になれて嬉しいよ♪」
「……私の加護をコーディーに付けたい。出来れば今直ぐ」
そういえば僕、クリスに了承してたなぁ。でも、具体的にどうやって付けるんだろう?
「あー……それなら僕は暫く席を外そうか?僕は全然気にならないけれども、コーディーは気にしそうだしね」
???ルー兄は気にならないけど僕は気になるの?
「え?それってどう付けるの?」
僕が首を傾げながら聞いてみる。
「普通の加護と言われる契約は皮膚接触、手を触れ合わせたりして私の魔力を相手に送るが、コーディーの場合は翼有人から見て恋人だと分かるよう、口付けしながら魔力を乗せた気を練り込む。ただ、私の気をコーディーに馴染ませるために、暫くの間毎日コーディーと口付けをする事になるが」
……くっ、口、付、けぇ~~~?!?
まさかのクリスの爆弾発言に、僕がフリーズしたのは言うまでもない。
0
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。
無言で睨む夫だが、心の中は──。
【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】
4万文字ぐらいの中編になります。
※小説なろう、エブリスタに記載してます

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話7話。

親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました
空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが当たり前になった世界。風間は平凡な会社員として日々を暮らしていたが、ある日見に覚えのないミスを犯し会社をクビになってしまう。その上親友だった男も彼女を奪われ婚約破棄までされてしまった。世の中が嫌になった風間は自暴自棄になり山に向かうがそこで誰からも見捨てられた放置ダンジョンを見つけてしまう。どことなく親近感を覚えた風間はダンジョンで暮らしてみることにするが、そこにはとても可愛らしいモンスターが隠れ住んでいた。ひょんなことでモンスターに懐かれた風間は様々なモンスターと暮らしダンジョン内でのスローライフを満喫していくことになるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる