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閑話 泡沫の夢~ボクの大好きなお姉ちゃん~
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ボクには大好きな大好きなお姉ちゃんがいる。名前はカルラと言って、ボクにとってもとっても優しいお姉ちゃんだ。
たとえば、僕が熱を出した時、ずっとそばにいてくれる。お父さんとお母さんは忙しいから、お姉ちゃんで我慢してねと言いながら、ボクの手をずっと握ってくれたり、頭のぬるくなったタオルを取り替えてくれたりしてくれる。
ボクは生まれつき体が弱いからよく熱を出すんだってお医者さんが言ってたから、ボクは大人になれないのかなってお姉ちゃんに言ったら、『大丈夫、ヒースは大人になれるわよ!身体が弱いのは子供の頃だけ。きっと将来あたしよりも大きくなるわ』って、笑顔で答えてくれた。
お姉ちゃんは魔力持ちといって、不思議な力を持っていた。ボクもお姉ちゃんに見せてもらったことがある。
それは水や物の形を好きな形にできる力。水をボールみたいにして持ったり、刃物を使わず積み木の一つを動物の形にしたり、パンを星の形にしたり。
でも、他人には知られちゃいけない力だからって、ボクが熱の時に見せてってお願いした時しか見せてもらえないけど。でも、それが原因で、村の子に見られて、お姉ちゃんが余所の人に連れて行かれた時は本当に怖かった。
ボクのせいでお姉ちゃんが帰って来なかったらどうしようって。結局お姉ちゃんは無事に帰って来てくれたけど、しばらくお姉ちゃんのそばを離れるのが怖かった。お姉ちゃんはボクのせいじゃない、村の子がベラベラとしゃべったせいだって言ってたけど、ボクはそのあとお姉ちゃんに見せてってお願いしないようにした。
家のお手伝いをしてるお姉ちゃんをボクはよく追いかけた。ボクに気付くとお姉ちゃんは、いつもボクが追いつけるようにとゆっくり歩いてくれた。ボクがお姉ちゃんの足元にまとわりついても嫌な顔一つせず、笑顔でボクを待っててくれる。
そんなお姉ちゃんだけど、ボクを叱ったこともある。
お客さんでとってもお顔の恐いおじさんがいて、ボクはお姉ちゃんにしがみつき、来ないでって、お姉ちゃんに近づかないでって言った。そのおじさんの顔に、大きな傷のあとがあったから、余計に怖かったんだ。
そしたらお姉ちゃんに怒られた。
顔や傷跡で判断しちゃダメ!って。そのおじさんはお姉ちゃんを助けてくれた優しいお客さんなのよって。ボクがそのおじさんにごめんなさいしたら、お姉ちゃんはいい子いい子してくれた。
ボクは大きくなったら、お姉ちゃんを助けられる大人になるんだ。いまはまだ、お姉ちゃんを助けることができないけど。いつか、大きくなったらヴィートお兄ちゃんと一緒に、お姉ちゃんを守るんだ!
彼は知らない。
魔力研究所の者達が、研究の実験と成果の実証をする為だけに村を実験場にした事を。それにより、村人達の人生が狂わされる事を。そして彼自身の夢を、願いを、命もろとも潰される事を。
たとえば、僕が熱を出した時、ずっとそばにいてくれる。お父さんとお母さんは忙しいから、お姉ちゃんで我慢してねと言いながら、ボクの手をずっと握ってくれたり、頭のぬるくなったタオルを取り替えてくれたりしてくれる。
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お姉ちゃんは魔力持ちといって、不思議な力を持っていた。ボクもお姉ちゃんに見せてもらったことがある。
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