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カルラはティファから預かった干し肉を、荷物の中から取り出した一人用の小さな鍋に入れて、飲み水を適度に注ぎ、携帯用の着火装置で火をおこす。
その手際の良さに三人は驚くが、カルラからすれば、どうという程の事でもない。
寧ろ、こんな簡単単純作業すらしていない彼等に呆れる程だ。
本来追っ手がいるならば、火をおこすのは得策ではないが、馬で稼いだ距離は充分あるし、人拐いは追い掛けてくる余裕はないだろう。
(多分今頃は、他の逃げた女性を保護した住民が、総出で人拐いのアジトに踏み込んでいる筈だわ。人拐いをそのまま放置なんて、今後自分達の家族が拐われるリスクを背負いたい者なんてそう多くいないでしょうから)
干し肉がふやけた頃合いを見計らって肉を取り出し、残った茹で汁に少々の水を嵩増しし、手持ちのハーブ類で味を調える。
簡易スープの出来上がりだ。食欲をそそる香りがふわりと漂う。
「これで少しは食べ易い筈よ。さあどうぞ」
カルラは自身の器を使い、ティファへと渡す。受け取るティファの顔はキラキラとして、とっても嬉しそうだ。
「お嬢、僕も!僕にも作って!」
「私もお願いします!」
ヒューリーとザアイがティファと同じような顔でカルラに頼む。
(そんな顔向けて来ないで!人目がないから良いものの、あったら確実にトラブル発生するわよ!)
カルラが苦虫を噛み潰したような顔をする。
「悪いけど、器も鍋も一人分しかないの」
「じゃあ一人ずつで良いから作って!器は水筒があるからそれに入れる!ここ暫くろくに食事が取れてないんだよ。ちょっとはまともな食事を取りたい!」
切実なヒューリーの言葉に頷くザアイ。
まともなと言うが、カルラからすれば手抜きも手抜き。料理とすら呼びたくない代物だ。
ただ、このまま断り続けても、きっと粘り強く頼んでくるだろう。人は食が絡むとしつこいから。
「分かったわよ。で、そこの人はいいの?」
カルラは黙り込んでるエンヤに聞く。
「俺はいい。何を入れられるか分かったもんじゃないからな」
(警戒なのか意地なのか、まぁどっちでもいいわ。元々彼等の警戒心が足りなさ過ぎるんだから。一人ぐらい警戒心を持ってる方がよっぽどマシよね。ただ、嫌悪感を隠しもせずに、ガンガン向けられるのは非常に不愉快だけど)
その手際の良さに三人は驚くが、カルラからすれば、どうという程の事でもない。
寧ろ、こんな簡単単純作業すらしていない彼等に呆れる程だ。
本来追っ手がいるならば、火をおこすのは得策ではないが、馬で稼いだ距離は充分あるし、人拐いは追い掛けてくる余裕はないだろう。
(多分今頃は、他の逃げた女性を保護した住民が、総出で人拐いのアジトに踏み込んでいる筈だわ。人拐いをそのまま放置なんて、今後自分達の家族が拐われるリスクを背負いたい者なんてそう多くいないでしょうから)
干し肉がふやけた頃合いを見計らって肉を取り出し、残った茹で汁に少々の水を嵩増しし、手持ちのハーブ類で味を調える。
簡易スープの出来上がりだ。食欲をそそる香りがふわりと漂う。
「これで少しは食べ易い筈よ。さあどうぞ」
カルラは自身の器を使い、ティファへと渡す。受け取るティファの顔はキラキラとして、とっても嬉しそうだ。
「お嬢、僕も!僕にも作って!」
「私もお願いします!」
ヒューリーとザアイがティファと同じような顔でカルラに頼む。
(そんな顔向けて来ないで!人目がないから良いものの、あったら確実にトラブル発生するわよ!)
カルラが苦虫を噛み潰したような顔をする。
「悪いけど、器も鍋も一人分しかないの」
「じゃあ一人ずつで良いから作って!器は水筒があるからそれに入れる!ここ暫くろくに食事が取れてないんだよ。ちょっとはまともな食事を取りたい!」
切実なヒューリーの言葉に頷くザアイ。
まともなと言うが、カルラからすれば手抜きも手抜き。料理とすら呼びたくない代物だ。
ただ、このまま断り続けても、きっと粘り強く頼んでくるだろう。人は食が絡むとしつこいから。
「分かったわよ。で、そこの人はいいの?」
カルラは黙り込んでるエンヤに聞く。
「俺はいい。何を入れられるか分かったもんじゃないからな」
(警戒なのか意地なのか、まぁどっちでもいいわ。元々彼等の警戒心が足りなさ過ぎるんだから。一人ぐらい警戒心を持ってる方がよっぽどマシよね。ただ、嫌悪感を隠しもせずに、ガンガン向けられるのは非常に不愉快だけど)
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