出会いと別れと復讐と

カザハナ

文字の大きさ
上 下
17 / 116

16

しおりを挟む
「カルラちゃんってさ、目的地とかってある?あるなら方角だけでもいいから教えてくれないかな?」

「……東よ。それと子供扱いしないで。あたしは子供じゃないわ。一人でだって野宿ぐらい出来るんだから」


 いかにも子供がよく使う言葉を、不自然に見えないよう、胸を張って言ってみる。実際、外見は子供の姿をしているが、成人は過ぎているのだ。年齢をバラす気はないが、似たような年齢の彼等に、子供扱いされたくないという本音も少しはあったり。

 まぁ、万一年齢がバレたとしても、だから子供じゃないと言ったでしょ。と、言ってやるつもりのカルラの思惑など、彼等は知るよしもないが。


「ちゃん付けは嫌かぁ……。じゃあお嬢で」

「……何でお嬢?」


 (ちゃん付けよりかは確かにマシだけど……)


「何となく?ザアイみたいにさん付けって、好きじゃないんだよね~。でも呼び捨ては、お嬢が嫌がりそうだし」


 (お嬢確定か。まぁいい。確かに呼び捨てよりは、断然いいし)


「ヒューリーさんは――」

「呼び捨てでいいよ。さん付けされるのも苦手だから」


 (本当は、呼び捨てもしたくないんだけどなぁ。こんな人達と親しいなんて他の人に思われたら、確実に変なやっかみ受けるもの)

 とはいえ、本人の希望だし、それ程長く行動を共にするつもりもないから、仕方ないか、と割り切るカルラ。


「ヒューリーは疑わないの?あたしが彼女を拐った奴等の仲間だって」


 ヒューリーの馬に乗せてもらいながら、問い掛ける。

 どうしてか、彼からは敵意というか、疑念といった嫌悪感っぽいものを感じない。エンヤと呼ばれてる男からはバシバシ来るのに。


「ん~、別にどっちでもいいんだよね、僕は。お嬢が人拐いの仲間だろうと何だろうと」


 さらっと答えるヒューリー。

 (いや、駄目だろそれ。神の愛し子に悪党かも知れない人間側に置いちゃあ)

 馬上で喋ると舌を噛みそうなので、歯を食いしばっていると、側を走っていた馬が、真横にピタリと寄せて並走する。

 その相手はザアイだ。


「大丈夫ですよ。もし見付かって追い付かれたとしても、我々が何とかしますから」


 その声は、相変わらずの洗脳悩殺ボイスだ。が、カルラは全く動じない。というか、まるで普通の声を聞いているかのような振る舞いだ。

 彼等には、それが物凄く不思議で仕方なかった。何故なら、ザアイの声を聞き慣れてるヒューリーもエンヤも、気を抜くと、ザアイの声に聞き惚れてしまう事があるからだ。神の愛し子であるティファが、ザアイの声に聞き惚れるという事はないが、一般人のカルラが聞き惚れずに平然としているなんて、不思議だとしか言い様がなかった。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...