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ヒューリーとザアイは驚きながら、互いに顔を見合わせる。
今まで、カルラのような態度を取るような女の子なんていなかったからだ。
そんな中、エンヤだけはカルラをずっと睨んでる。
(本っ当、迷惑。今直ぐこの場を離れたい!)
カルラが不機嫌な態度を取っていると、警戒されていると感じたのか、ザアイと呼ばれた男が声を出す。
「私達は怪しい者ではありません。そこにいるティファの連れの者です。何者かに拐われたティファを捜していました。教えて下さいカルラさん。あなたは何故、拐われたティファと一緒にいたのですか?」
ザアイの声は聞き慣れていなければ、その声に囚われ、警戒心をも失うだろう。それ程の美声だ。魔力が使用されている訳ではない。それでも人の心を捕らえられる声であり、その声を聞いた者は誰であろうと陶酔する。普通なら。
だが、カルラは違った。冷めた瞳と態度を変える事は、一切なかったのだ。
「彼女に聞いたら?そもそも、あたしとあなた達に信頼関係なんて無いんだし、相手を直ぐ信じるなんて無理でしょう?だったら、行ってもいいかしら?彼女と別れるのは名残惜しいけど、早くこの近辺から離れたいの」
(そして一刻も早くあなた達からバックレたいの)
笑顔でにっこりと男達を見返すが、その瞳は笑っていない。
「行く、とはどこへ?」
ザアイがカルラに問い掛ける。
「言う必要はあるの?」
カルラの問い返しに、ザアイが答える。
「この辺は物騒です。現にティファは拐われました。あなたを一人で家に帰すのは危険です。私達はこれでもそこそこ腕は立つので、送らせて下さい」
「遠慮します」
間髪入れずに断るカルラ。
「それは何故?」
天の御使いと言っても通じそうな美貌で首を傾げるザアイ。
「この近辺に住んでる訳じゃなく、旅の最中なの。だから、送らせる訳にはいかないわ」
きっぱりはっきり言い切るカルラに、戸惑い気味にヒューリーが聞く。
「連れは?どこにいるの?」
「一人よ。それが何?」
カルラの言葉に、エンヤの眉間に皺が寄る。
「家出か?」
その言葉に腹立たしさが込み上げ、カルラの声は自然と低くなる。
「誰しも護衛や傭兵が雇えるなんて思わないでくれる?言っとくけど、十やそこらで、旅をする事自体、稀じゃないのよ?確かに、一人旅ってのは少ないかもだけど、あたしにはあたしの事情があるの。それを、どこの誰かも分からない初対面の人達に、非難される謂れはないわ!」
今まで、カルラのような態度を取るような女の子なんていなかったからだ。
そんな中、エンヤだけはカルラをずっと睨んでる。
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カルラが不機嫌な態度を取っていると、警戒されていると感じたのか、ザアイと呼ばれた男が声を出す。
「私達は怪しい者ではありません。そこにいるティファの連れの者です。何者かに拐われたティファを捜していました。教えて下さいカルラさん。あなたは何故、拐われたティファと一緒にいたのですか?」
ザアイの声は聞き慣れていなければ、その声に囚われ、警戒心をも失うだろう。それ程の美声だ。魔力が使用されている訳ではない。それでも人の心を捕らえられる声であり、その声を聞いた者は誰であろうと陶酔する。普通なら。
だが、カルラは違った。冷めた瞳と態度を変える事は、一切なかったのだ。
「彼女に聞いたら?そもそも、あたしとあなた達に信頼関係なんて無いんだし、相手を直ぐ信じるなんて無理でしょう?だったら、行ってもいいかしら?彼女と別れるのは名残惜しいけど、早くこの近辺から離れたいの」
(そして一刻も早くあなた達からバックレたいの)
笑顔でにっこりと男達を見返すが、その瞳は笑っていない。
「行く、とはどこへ?」
ザアイがカルラに問い掛ける。
「言う必要はあるの?」
カルラの問い返しに、ザアイが答える。
「この辺は物騒です。現にティファは拐われました。あなたを一人で家に帰すのは危険です。私達はこれでもそこそこ腕は立つので、送らせて下さい」
「遠慮します」
間髪入れずに断るカルラ。
「それは何故?」
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「この近辺に住んでる訳じゃなく、旅の最中なの。だから、送らせる訳にはいかないわ」
きっぱりはっきり言い切るカルラに、戸惑い気味にヒューリーが聞く。
「連れは?どこにいるの?」
「一人よ。それが何?」
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「家出か?」
その言葉に腹立たしさが込み上げ、カルラの声は自然と低くなる。
「誰しも護衛や傭兵が雇えるなんて思わないでくれる?言っとくけど、十やそこらで、旅をする事自体、稀じゃないのよ?確かに、一人旅ってのは少ないかもだけど、あたしにはあたしの事情があるの。それを、どこの誰かも分からない初対面の人達に、非難される謂れはないわ!」
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