出会いと別れと復讐と

カザハナ

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 (え~っと、これは……)

 ティファと呼ばれた少女が、カルラに抱き付いていたのだ。この状態で歩けば少女を引き摺る羽目になる。

 そして何より、馬上の男達からの視線が痛い。


「お前、ティファに何をした!ティファから離れろ!!」


 (いや、離れろと言われても……)

 どう考えてもカルラはしがみつかれてる方だ、言う相手を間違っている。

 とはいえ、無理矢理振り払うのも出来なくはないが、自分になついて来た子供相手にそんな対応したくない。


「あの、ティファ、だっけ?離してくれるかな?」


 少女に優しく声を掛けてみるが、背後で首を横に振り、更にギュッと服を握り締められる。

 (うん、どうしようか……)

 カルラは前方の何もない空間を遠い目で眺める。


「えっと、君は誰かな?何でティファと一緒にいるの?」


 その声に、背筋がゾワッとする。

 離れろと言った男とは別の声だ。その声に先程の男のような敵意は感じない。感じないのだが、問題はその声にあった。

 (顔といい声といい、心底関わり合いたくない!!)

 彼等はカルラでいう鬼門、つまり美形であった。そしてカルラに疑問を投げ掛けた人物の声は、誰もが聞き惚れる程の美声である。

 カルラは心の中で絶叫した。

 (頼むから放っといてーーー!!)




「エンヤ、女の子に対して敵意向け過ぎ。ザアイ、今は声出さないで、話が出来ない。で、君は誰?奴等の仲間?」


 最後の一人が声を出す。が、カルラは誰がどの声かは分からない。何故なら、最後に彼等の方へと顔を向けたのは顔が確認出来る距離に入った直後まで。それ以降、カルラは彼等の方を見ていないからだ。

 カルラの本能が告げる。厄介事以外の何物でもないと。

 カルラの背後で、カルラにしがみつくティファの動く気配がする。

 カルラからは見えないが、多分、男の言葉、奴等の仲間との問いに首を振り、否定しているのだろう。


「違うの?そっか、ごめんね疑って」

「おい、ヒューリー!」


 カルラは全く動かない。


「何?エンヤはティファを疑うの?」

「違う!そうじゃなくて!」

「そもそも、でっかい男三人が、女の子に詰め寄ったら怖がるのは当たり前じゃない?特にエンヤ、君顔怖いし。それで、君の名前は何ていうの?」


 カルラの後ろで会話は続く。

 (心底、今直ぐ去りたいんだけど!)
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