115 / 116
110
しおりを挟む
娯楽の街に辿り着く前に、カルラには見慣れた制服が目に入る。
と言っても、コートに隠れてチラチラとしか見えないが、そのコートも特徴的と言えるだろう。
彼等は馬で、大急ぎでこちらに向かって来るが、先を見据えている所為か、旅人達には見向きもしない。
それもそうだろう。
彼等の資金源で有る膨大な魔石が、魔力研究所の研究員に依って、全て、何の価値にもならない只の石になったとの報告があの街から入った為、他者に構う余裕が全く無いからだ。
そんな研究も指示も出して無い彼等にとっては寝耳に水だし、それが事実なら、早急に対応しなければならない。
まぁ、対応と言っても、カルラが変質させた石は、元に戻る事も、変質させる事も出来ないが。
そんな彼等がカルラ達の横を勢い良く通り過ぎるのを、カルラは冷めた目で見送る。
「ねぇ。あの制服が何を意味するか、あなた達は知ってる?」
カルラの問いに、首を傾げる三人。
どうやら魔力研究所の制服を知らないようだ。
「なら、一応忠告して置くわ。あれは魔力研究所の研究員達が着る制服よ。奴等には絶対に近付かない事ね。あいつ等、魔力持ちなら些細な能力でも捕まえたがるし、魔力持ちに対する扱いは家畜同然、その能力が実用的なら、洗脳して服従させると言われてるわ」
「あれが、魔力研究所の……」
「……」
「……おい、お前。何でそんな事まで知っている?」
エンヤが敵意剥き出しで、カルラに問うので、カルラはエンヤに冷めた視線を返す。
「あたしが住んでた村に来た事が有るのよ、あいつ等。その時に大人が話してたわ。ティファは魔力持ちでしょう?初めてあなた達と出会った時、ティファは迷い無くあなた達の居る方向に進んでいったわ。だから、世間知らずのあなた達にも、一応注意しとかなきゃと思っただけよ。そもそも、何でそんな事も知らないのかが不思議なくらいよ。まぁ、今までの事を考えたら、知らない可能性が高いと思ったから、一応話題に出してみたんだけど」
カルラが、ティファは魔力持ちでしょう?と口にした瞬間から、三人の空気がピリッとしたものに変わる。
思わず警戒してしまったのだろうが、カルラは気にしない。寧ろ、彼等はカルラに対して警戒しなさ過ぎだと思っていたからだ。
知人だろうと家族だろうと、売る奴は売る。
カルラの住んでいた村は田舎で、主要街道沿いでも無ければ隣国と接するような場所でも無く、娯楽も無ければ名産品も無い。
魔力や機械が無くても自給自足が成り立ち、旅人からの収入が少ない故に、村人同士の結束が高い場所だったからこそ、魔力研究所等に売り渡そうとする裏切り者は直ぐに特定されるし、止むに止まれぬ事情が有るなら未だしも、ただ単に、自身の小遣い稼ぎの為だけに、カルラの情報を売った少年とその家族は、村人達に白い眼を向けられ続けた。
魔力を持たなくても、魔力研究所に情報を売る人間も居る。
彼等は子飼いと呼ばれ、お金の為なら血の繋がった我が子でも売る。
そんな世界で、素性の知れないカルラへの警戒を弛めるのがおかしいと思うのだ。
ティファが警戒しないからとの理由なら、尚更もっと、守護者達が警戒するべきだろうにとカルラが思うのは仕方の無い事だった。
と言っても、コートに隠れてチラチラとしか見えないが、そのコートも特徴的と言えるだろう。
彼等は馬で、大急ぎでこちらに向かって来るが、先を見据えている所為か、旅人達には見向きもしない。
それもそうだろう。
彼等の資金源で有る膨大な魔石が、魔力研究所の研究員に依って、全て、何の価値にもならない只の石になったとの報告があの街から入った為、他者に構う余裕が全く無いからだ。
そんな研究も指示も出して無い彼等にとっては寝耳に水だし、それが事実なら、早急に対応しなければならない。
まぁ、対応と言っても、カルラが変質させた石は、元に戻る事も、変質させる事も出来ないが。
そんな彼等がカルラ達の横を勢い良く通り過ぎるのを、カルラは冷めた目で見送る。
「ねぇ。あの制服が何を意味するか、あなた達は知ってる?」
カルラの問いに、首を傾げる三人。
どうやら魔力研究所の制服を知らないようだ。
「なら、一応忠告して置くわ。あれは魔力研究所の研究員達が着る制服よ。奴等には絶対に近付かない事ね。あいつ等、魔力持ちなら些細な能力でも捕まえたがるし、魔力持ちに対する扱いは家畜同然、その能力が実用的なら、洗脳して服従させると言われてるわ」
「あれが、魔力研究所の……」
「……」
「……おい、お前。何でそんな事まで知っている?」
エンヤが敵意剥き出しで、カルラに問うので、カルラはエンヤに冷めた視線を返す。
「あたしが住んでた村に来た事が有るのよ、あいつ等。その時に大人が話してたわ。ティファは魔力持ちでしょう?初めてあなた達と出会った時、ティファは迷い無くあなた達の居る方向に進んでいったわ。だから、世間知らずのあなた達にも、一応注意しとかなきゃと思っただけよ。そもそも、何でそんな事も知らないのかが不思議なくらいよ。まぁ、今までの事を考えたら、知らない可能性が高いと思ったから、一応話題に出してみたんだけど」
カルラが、ティファは魔力持ちでしょう?と口にした瞬間から、三人の空気がピリッとしたものに変わる。
思わず警戒してしまったのだろうが、カルラは気にしない。寧ろ、彼等はカルラに対して警戒しなさ過ぎだと思っていたからだ。
知人だろうと家族だろうと、売る奴は売る。
カルラの住んでいた村は田舎で、主要街道沿いでも無ければ隣国と接するような場所でも無く、娯楽も無ければ名産品も無い。
魔力や機械が無くても自給自足が成り立ち、旅人からの収入が少ない故に、村人同士の結束が高い場所だったからこそ、魔力研究所等に売り渡そうとする裏切り者は直ぐに特定されるし、止むに止まれぬ事情が有るなら未だしも、ただ単に、自身の小遣い稼ぎの為だけに、カルラの情報を売った少年とその家族は、村人達に白い眼を向けられ続けた。
魔力を持たなくても、魔力研究所に情報を売る人間も居る。
彼等は子飼いと呼ばれ、お金の為なら血の繋がった我が子でも売る。
そんな世界で、素性の知れないカルラへの警戒を弛めるのがおかしいと思うのだ。
ティファが警戒しないからとの理由なら、尚更もっと、守護者達が警戒するべきだろうにとカルラが思うのは仕方の無い事だった。
0
お気に入りに追加
132
あなたにおすすめの小説
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
幼い頃に魔境に捨てたくせに、今更戻れと言われて戻るはずがないでしょ!
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
ニルラル公爵の令嬢カチュアは、僅か3才の時に大魔境に捨てられた。ニルラル公爵を誑かした悪女、ビエンナの仕業だった。普通なら獣に喰われて死にはずなのだが、カチュアは大陸一の強国ミルバル皇国の次期聖女で、聖獣に護られ生きていた。一方の皇国では、次期聖女を見つけることができず、当代の聖女も役目の負担で病み衰え、次期聖女発見に皇国の存亡がかかっていた。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる