出会いと別れと復讐と

カザハナ

文字の大きさ
上 下
87 / 116

84

しおりを挟む
 これならこの街を直ぐに出なくても、大浴場のアイドルとなったティファに危害を加えようと企む女性は少ないだろう。

 それ程長居は出来ないが、2~3日程滞在して、保存食の補充や作り置きも作り揃えれる。カルラが守護者達を残念な馬鹿兄扱いしてれば、ティファへの同情は増える筈だから。

 あいつ等が他の女性にどう思われようと知った事ではない。寧ろ、カルラが残念過ぎる酷い兄の印象をアピールしまくり強めれば、守護者達に好かれようとする女も減るし、ティファを遠目で見守り愛でる女達が、カルラの後ろで頑張るティファの姿に、悶える姿が想像出来る。

 (よし、その方向性で行こう)

 カルラはティファを連れて建物を出ると、そこには多少苛ついてるエンヤとヒューリーがいた。


「お前は着替えにどれだけ時間を掛ける気だ?!」

「女の子の身支度に時間が掛かるのは当然でしょ?それぐらい待ちなさいよ。言っとくけど、化粧とかするようになったらもっと時間が掛かるわよ」

「ティファはそんな物するか!」

「する、しないは本人の自由よ。そもそも、エンヤさんが妹可愛さにティファに着替え方を教えないのが悪いんでしょ?ティファが一生懸命、時間を掛けても自分で服を着たってのに、怒らなくてもいいじゃない。エンヤさんの短気!」


 カルラに、時間を無駄にしたのはお前だろうがと、反論しようとしていたエンヤだったが、ティファが一生懸命自分で服を着ていたとの言葉を大にしたカルラに反論が出来なくなってしまう。


「酷いよね~、ティファを褒めてあげなきゃなんないのに怒鳴るなんて。しかも可愛がるだけで教えもしないなんて。ティファは人形じゃないんだから、着替えぐらい一人でやらせてあげたって良いじゃない。大きくなって困るのはティファなのに、理不尽よ」


 そして、エンヤは周りからの非難の眼差しが注がれる。

 口が回るとは言え、カルラの見た目はどう見ても子供にしか見えない。そんなカルラを相手に人前で怒鳴っているのだから、非難の目を向けられても当然と言えようものだ。


「そう言えば、ザアイさんは?」


 カルラとエンヤの応酬を黙って見ていたヒューリーに、カルラは声を掛ける。

 カルラが提案した出入り口を見張ればとの言葉を実行したのだろうと予想しながらも、残念な兄の印象を強める為にわざと聞いてみたのだ。


「ああ、ザアイは裏口の方だよ。万一ティファが拐われたりしたら困るからね」

「その過剰な兄妹愛を受けるティファの身にもなりなさいよね。ティファの喜ぶ基準が物凄く低くて、他人のあたしにすがり付くのも納得の、異常束縛状態よ」


 カルラは胡乱うろんな眼差しで彼等を見る。

 勿論カルラは彼等が守護者と言う立場だと言う事を認識しているが、彼等はそれを隠す方向性で旅をしている筈だ。それなのに、一般人では有り得ない程の過保護っぷりを見せているので隠す気はあるのかと疑いたくなるのは仕方ない事だろう。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

好色一代勇者 〜ナンパ師勇者は、ハッタリと機転で窮地を切り抜ける!〜(アルファポリス版)

朽縄咲良
ファンタジー
【HJ小説大賞2020後期1次選考通過作品(ノベルアッププラスにて)】 バルサ王国首都チュプリの夜の街を闊歩する、自称「天下無敵の色事師」ジャスミンが、自分の下半身の不始末から招いたピンチ。その危地を救ってくれたラバッテリア教の大教主に誘われ、神殿の下働きとして身を隠す。 それと同じ頃、バルサ王国東端のダリア山では、最近メキメキと発展し、王国の平和を脅かすダリア傭兵団と、王国最強のワイマーレ騎士団が激突する。 ワイマーレ騎士団の圧勝かと思われたその時、ダリア傭兵団団長シュダと、謎の老女が戦場に現れ――。 ジャスミンは、口先とハッタリと機転で、一筋縄ではいかない状況を飄々と渡り歩いていく――! 天下無敵の色事師ジャスミン。 新米神官パーム。 傭兵ヒース。 ダリア傭兵団団長シュダ。 銀の死神ゼラ。 復讐者アザレア。 ………… 様々な人物が、徐々に絡まり、収束する…… 壮大(?)なハイファンタジー! *表紙イラストは、澄石アラン様から頂きました! ありがとうございます! ・小説家になろう、ノベルアッププラスにも掲載しております(一部加筆・補筆あり)。

処理中です...