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パシッと音が鳴るが、カルラに痛みは全く無い。それもその筈、彼女の手は、違う手により阻まれていたからだ。
「ねぇ君、僕の連れに何する気?」
彼女の後ろに、いつの間にかヒューリーがいて、彼女の手を止めていた。
「あの、これはその……」
彼女の顔色が、赤から青へと変わっていく。
「待っててって言ったのに……」
「ええっ?!まさかのお嬢が駄目出しするの?!ってか、お嬢、何やってるの?」
「喧嘩を売られたから買ってんのよ。何か問題が?」
「いや、問題あるよね?!喧嘩売られたの?何で僕達に言いに来ないの?」
「言ったら被害者面しそうだからよ。だから上の人に直接抗議したの。自分の食べ物に、ブルームバムを入れる客は普通いないから」
「ブルームバム?って何?」
「不味い色付けの木の実。本来単体ではなく、別の果実と混ぜて使えば美味しくなる物だけど、ティファとあたしの食べ物にだけ混ざってたの。そもそも、デザートとかには使うけど、普通の料理には使わないわ」
「じゃあ、お嬢が持って行ったあの料理……」
ヒューリーが彼女を見下ろす。
「わ、私はそんなの知らないわ!あなたの勘違いよ、それか、あなたが混入させたんじゃないの?!」
「じゃあ、何であたしを追って来たの?料理の受け渡しはここじゃないでしょ?」
「わっ私は、関係者じゃないあなたがここに入るのを見て止めに来たのよ!」
「じゃあ、何であなたの指先は青く染まってるの?」
「そんな筈は……!?」
彼女は指先を見て、カルラの言うように染まっている事に驚く。
「ブルームバムは粉の場合、払っても時間差で染まるわよ?正しい対処法はラムラの果汁で流すか、ラムラ入りの石鹸を使うかだもの。そんな事すら知らないで、よく使う気になったわね」
カルラが呆れていると、奥から店長の男が出て来る。
「今までの給金だ。?……お嬢さん、何かあったのか?」
「この女に殴られそうになっただけよ。彼は連れのお兄さんで、助けてくれたから大丈夫」
「お前という奴は……。本当に申し訳ない。おいっ、誰か警邏隊を呼んで来い!この忙しい時に馬鹿な事しやがって!」
「ちがっ……!」
彼女は拘束具で縛られながらも、助けを求める為に周りを見回し、物凄く冷めた目で彼女を見るヒューリーに気付く。こんな目で見られるとは思ってなかったのだろうが、証拠もある上目の前でカルラが殴られそうになっていたのを目撃してるのだから、女の言葉を信じる筈もない。そもそも、カルラが可愛がるティファに手を出した時点で自業自得と言う物だ。
(悪いのは全面的に彼女だけだし、よりにもよってピーク時でだもの。しかもこれからが稼ぎ時の時間帯だものね。仕方ない、手伝うか……)
「食べてからで良いなら、この人の代わりにあたしが手伝うわ。道中旅の資金集めで食堂とかの手伝いもした事があるから、要領は分かるし。後、警邏隊は店の表から出入りさせた方が良いわよ、店の無実を訴える為に」
「ちょっとお嬢?!」
「本当に良いのか?助かる!お願いするよ!」
これで店がグルではないと、印象付ける事が出来るだろう。更にカルラを雇う事で、カルラは店に、店はカルラに害意はないと言ってるものだ。
「ヒューリー達は先に帰ってて良いわよ。邪魔だから」
「無理だって!お嬢を置いて帰れる訳ないよ!ティファはお嬢が帰ってくるのをずっと待ってたんだから!」
「でも、店に居座られると邪魔なんだけど」
「ああ、それなら営業中は殆ど使わない休憩室を使ってくれ。連れに謝罪と状況説明もいるだろう。そっちに料理を運ぼう。そこで食べてからでいいから、手伝いをお願いするよ」
「ねぇ君、僕の連れに何する気?」
彼女の後ろに、いつの間にかヒューリーがいて、彼女の手を止めていた。
「あの、これはその……」
彼女の顔色が、赤から青へと変わっていく。
「待っててって言ったのに……」
「ええっ?!まさかのお嬢が駄目出しするの?!ってか、お嬢、何やってるの?」
「喧嘩を売られたから買ってんのよ。何か問題が?」
「いや、問題あるよね?!喧嘩売られたの?何で僕達に言いに来ないの?」
「言ったら被害者面しそうだからよ。だから上の人に直接抗議したの。自分の食べ物に、ブルームバムを入れる客は普通いないから」
「ブルームバム?って何?」
「不味い色付けの木の実。本来単体ではなく、別の果実と混ぜて使えば美味しくなる物だけど、ティファとあたしの食べ物にだけ混ざってたの。そもそも、デザートとかには使うけど、普通の料理には使わないわ」
「じゃあ、お嬢が持って行ったあの料理……」
ヒューリーが彼女を見下ろす。
「わ、私はそんなの知らないわ!あなたの勘違いよ、それか、あなたが混入させたんじゃないの?!」
「じゃあ、何であたしを追って来たの?料理の受け渡しはここじゃないでしょ?」
「わっ私は、関係者じゃないあなたがここに入るのを見て止めに来たのよ!」
「じゃあ、何であなたの指先は青く染まってるの?」
「そんな筈は……!?」
彼女は指先を見て、カルラの言うように染まっている事に驚く。
「ブルームバムは粉の場合、払っても時間差で染まるわよ?正しい対処法はラムラの果汁で流すか、ラムラ入りの石鹸を使うかだもの。そんな事すら知らないで、よく使う気になったわね」
カルラが呆れていると、奥から店長の男が出て来る。
「今までの給金だ。?……お嬢さん、何かあったのか?」
「この女に殴られそうになっただけよ。彼は連れのお兄さんで、助けてくれたから大丈夫」
「お前という奴は……。本当に申し訳ない。おいっ、誰か警邏隊を呼んで来い!この忙しい時に馬鹿な事しやがって!」
「ちがっ……!」
彼女は拘束具で縛られながらも、助けを求める為に周りを見回し、物凄く冷めた目で彼女を見るヒューリーに気付く。こんな目で見られるとは思ってなかったのだろうが、証拠もある上目の前でカルラが殴られそうになっていたのを目撃してるのだから、女の言葉を信じる筈もない。そもそも、カルラが可愛がるティファに手を出した時点で自業自得と言う物だ。
(悪いのは全面的に彼女だけだし、よりにもよってピーク時でだもの。しかもこれからが稼ぎ時の時間帯だものね。仕方ない、手伝うか……)
「食べてからで良いなら、この人の代わりにあたしが手伝うわ。道中旅の資金集めで食堂とかの手伝いもした事があるから、要領は分かるし。後、警邏隊は店の表から出入りさせた方が良いわよ、店の無実を訴える為に」
「ちょっとお嬢?!」
「本当に良いのか?助かる!お願いするよ!」
これで店がグルではないと、印象付ける事が出来るだろう。更にカルラを雇う事で、カルラは店に、店はカルラに害意はないと言ってるものだ。
「ヒューリー達は先に帰ってて良いわよ。邪魔だから」
「無理だって!お嬢を置いて帰れる訳ないよ!ティファはお嬢が帰ってくるのをずっと待ってたんだから!」
「でも、店に居座られると邪魔なんだけど」
「ああ、それなら営業中は殆ど使わない休憩室を使ってくれ。連れに謝罪と状況説明もいるだろう。そっちに料理を運ぼう。そこで食べてからでいいから、手伝いをお願いするよ」
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