出会いと別れと復讐と

カザハナ

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「……暫くは一緒にいるわ。だけど、エンヤさんはティファの事に口出ししないで。ティファの意思を尊重して。でないと、ティファが泣くだけじゃ済まないし、確実に嫌われるわよ?まぁ、エンヤさんがティファに嫌われた所であたしの知った事じゃないけどね」

「っっ~~~!!」

「気付いてないようだけど、あなたのそういう態度、ティファの中の評価でも確実に下がってるから。当然よね?仲良くなりたい相手との交流を、一方的に邪魔するんだから」


 カルラの言葉で反射的にティファを見るエンヤに、ティファは涙に濡れた瞳で抗議するかのようにエンヤを見返し、カルラに抱き付く腕に、ギュッと力を込める。


「お嬢はティファにとって、初めて信頼の出来る同性なんだよ。他の子達とは感性が違うんだよ。お嬢がこの先どう変わるかは分かんないけど、大事なのはティファがお嬢と離れたがらない事。逆はあったけど、ティファからは無いよね?だから、いい加減諦めなよ。でないと本気でティファに嫌われるよ?」


 真眼持ちが守護者を本気で嫌うという事は、下手すると、守護者の立場を解任させられる可能性も出てくる。真眼持ちは多くはないが、守護者となれる者は多い。勿論今のように旅をしている場合なら、解任よりも他に、素質のある者を雇い入れる方が多いだろう。

 そして、カルラなら、充分その素質もあるのだが、それも含めた『他を当たれ』なので、カルラは彼等に言う気はない。復讐を企てる者が守護者だなんて、皮肉もいい所だと、カルラなら思うだろう。


「それで、このペースだと、お嬢の目指す街まではどれぐらい掛かるの?」

「何も無ければ10日間ぐらいじゃないかしら?」

「何も無ければ、だと?」

「あたしだって、予測出来ない事は多々あるわよ。同じ方向に行く荷馬車があれば、交渉次第で乗せて貰えるし、逆に道中人拐いとかの賊に出会す可能性だってあるし。それこそ野犬や野生の獣とかと遭遇しないとも限らないのよ。それなのに、言い切るなんて出来ないわ」

「あー、そういや似たような事が前にもあったとか言ってたね。クズが多いとも。それってやっぱそんなにいるんだ?人拐い連中が」

「野犬とかより多いわよ。売り飛ばされる前に逃げるけどね。ああ、どうやって?とか聞かないでね。その時々だし、逃げられたから旅を続けてるのよ。そもそも、捕まりたい訳じゃないしね」


 人拐いに関して言えば、賊連中もいれば、魔力研究所関連の奴等もいる。世の中、魔力持ちは多いが、魔力研究所が望む魔力持ちは意外と少ない。だが、実験台モルモットにする魔力持ちは何人いても良いし、能力が増えれば儲け物とでも思っている事だろう。研究員によっては人の死など些細な事だと思う者も多いのだから。
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