出会いと別れと復讐と

カザハナ

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「お嬢、取り敢えず落ち着いて」

「あたしは至って冷静よ」

「あー、うん、そうだね。でも、一応は前言撤回して欲しいなぁと。多分、今のままだとティファがお嬢から離れない。泣いてるし」


 カルラの角度からではティファの顔が見えず、泣いてる事に気付けなかったカルラが、やり過ぎた?いや、でも、どの道別れなきゃいけないんだけど、と思いながらも、泣いてるティファを放置は出来ずに頭を撫でる。

 相手がティファでなければ、泣いた所でどうにもならない事なんて、世の中腐る程あるのよと、言い切っていただろうが、愛する弟と同じ性質な上、人拐いに拐われても泣いてなかったティファが、カルラが別れる事を泣いて嫌がるなんて、悪い事をした訳でも無いのに罪悪感に似た感情が胸を占める。


「この場合、あたしが泣かせたんじゃなくてエンヤさんが泣かせたような物だからね」

「なっ?!?」

「ああ、うん。僕もそう思う」

「私もそう思います。エンヤ、少しは反省して下さい。カルラさんは好意で旅を同行して下さっているんですから」


 (ティファへの好意のみ・・だけどね)

 鬼門に好意なんて、これっぽっちも抱けないカルラが、心の中でのみ突っ込む。

 (そもそも、同行って言ってるけど、無理矢理に近い状況での同行者の癖に、何が好意よ、この腹黒!)

 ザアイはその美貌と美声で、親しい者以外には気付かれ難いが、腹黒策略者だ。それを見事に見抜いてるカルラは、そういった面でも非常に珍しい、惑わされない者であり、心を読ませない者だ。

 現にカルラは、エンヤを冷めた目で見ながら思っているのだから。

 (この三人の中で、一番マシなのはヒューリーよね。腹黒外見詐欺と、短気な世話焼き(※ただし、ティファ限定!)姑男と、軽薄そうに見えて物事を多面的に見る油断ならない男なんて、どれも嫌だけど、一番害がなさそうなのが油断ならない男って、どうよ?この腹黒外見詐欺は、外見と声は神の遣いとか、清廉潔白に見えるだろうけど、中身は絶対真っ黒だわ。自分の思い通りに事を運ぼうとするけど、相手が好意を向けてくる異性の予測は出来てない気がするわ。腹黒な癖に詰めが甘い。今後も要注意。短気な姑男は問題外。ティファを構いまくるから妬みや敵意がティファに向くのよ)

 カルラは真眼こそ持っていないが、魔力目視解析と言う特殊な眼を持っている。この解析能力は眼で視えない魔力を解析しているが、カルラの場合は元々の能力が高かったので、無意識に視えない内面の感情や機微に鋭く、外見や外面に惑わされる事なく見抜くのだ。
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