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「えっ……。皆さん聞いてなかったんですか?カルラちゃん、親戚や実家のお客様に挨拶や死亡報告、亡くなったご両親の思い出のお話を聞く為に旅してるって言ってましたよ?ごめんね、カルラちゃん。皆さんに話したとばかり……」
「お嬢……本当?」
「ええ、それが何?ああ、そう言えばエンヤさんは、あたしが一人旅してるって知って、即、家出って決め付けてくれたものね。しかもはぐれたティファを保護しただけなのに、人拐いとも言われたわね。あたしの旅の理由を知れて満足?」
「あっ、あれは……」
「あたしにとって家族は、大好きな居場所なの。家を無くし、家族を亡くしたあたしが、どれ程家や家族に焦がれているか、知りもしないで軽々しく話題に出さないで。家出なんてする気も起きなかったし、好き好んで一人旅をしてた訳じゃないわ。出会ったばかりの赤の他人に、口出されるなんて最悪よ」
「えっ?……えっ?」
異様な空気に話題を出したシーラが焦り、カルラはそれを視界の端に捉える。
(焦るぐらいなら話題に出すなってのよ。まぁ、エンヤさんにしろ、彼女にしろ、印象が物凄く悪くなったでしょうね。人の不幸を同情する優しい女を演出したつもりが、家や家族に焦がれる想いを踏みにじった男と女になるんだもの)
「でっ、でも、カルラちゃんはお兄さんがまだ生きてらっしゃるのよね?!外に働きに出たお兄さんが!」
「その兄とも何年も会えてないわ。兄は仕事で職場を離れられないし、あたしは旅の最中だもの。どれだけ会いたくても会えないわ。兄の邪魔になんてなりたくないし」
「そっ、そう。カルラちゃんは偉いのね!一人で旅を続けられるなんて!」
「必然だっただけよ。それなのに、大切な家族との思い出を土足で踏みにじり、人の傷口に塩を塗るなんて、最低だと思わない?ねぇシーラさん」
カルラはにこりとシーラに微笑む。
「!!!」
彼女はカルラの意図に気付いたのだろう。
顔を真っ赤に染めて、言葉に出来ず口をパクパクさせている。
「どうしたの?シーラさん。気分でも悪いの?あんなに彼等を紹介してもらいたがってたじゃない。エンヤさんは知らずに最低発言する人だけど、他の二人はいい人よ?他の人も質問すればいいじゃない。ただし、不用意な発言は控えた方がいいわよ?エンヤさんみたいに、人の傷口を易々抉ってる発言をしてるかも知れないから」
カルラは自らシーラを責めない。
カルラが、シーラからも同じ事をされていると指摘しない事によって、周りは子供のカルラがそこまで気付いてないのかもと思い込み、そんな子供の過去を利用してまで彼等と話す切っ掛けが欲しかったのかと呆れる者もいれば、出し抜くチャンスだと思う者もいるだろうから。
「お嬢……本当?」
「ええ、それが何?ああ、そう言えばエンヤさんは、あたしが一人旅してるって知って、即、家出って決め付けてくれたものね。しかもはぐれたティファを保護しただけなのに、人拐いとも言われたわね。あたしの旅の理由を知れて満足?」
「あっ、あれは……」
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「えっ?……えっ?」
異様な空気に話題を出したシーラが焦り、カルラはそれを視界の端に捉える。
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「でっ、でも、カルラちゃんはお兄さんがまだ生きてらっしゃるのよね?!外に働きに出たお兄さんが!」
「その兄とも何年も会えてないわ。兄は仕事で職場を離れられないし、あたしは旅の最中だもの。どれだけ会いたくても会えないわ。兄の邪魔になんてなりたくないし」
「そっ、そう。カルラちゃんは偉いのね!一人で旅を続けられるなんて!」
「必然だっただけよ。それなのに、大切な家族との思い出を土足で踏みにじり、人の傷口に塩を塗るなんて、最低だと思わない?ねぇシーラさん」
カルラはにこりとシーラに微笑む。
「!!!」
彼女はカルラの意図に気付いたのだろう。
顔を真っ赤に染めて、言葉に出来ず口をパクパクさせている。
「どうしたの?シーラさん。気分でも悪いの?あんなに彼等を紹介してもらいたがってたじゃない。エンヤさんは知らずに最低発言する人だけど、他の二人はいい人よ?他の人も質問すればいいじゃない。ただし、不用意な発言は控えた方がいいわよ?エンヤさんみたいに、人の傷口を易々抉ってる発言をしてるかも知れないから」
カルラは自らシーラを責めない。
カルラが、シーラからも同じ事をされていると指摘しない事によって、周りは子供のカルラがそこまで気付いてないのかもと思い込み、そんな子供の過去を利用してまで彼等と話す切っ掛けが欲しかったのかと呆れる者もいれば、出し抜くチャンスだと思う者もいるだろうから。
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