妖精の愛し子と死霊使い ~真実が見えていたのは一人の令嬢だけだった~

カザハナ

文字の大きさ
上 下
7 / 8
本編

6 妖精界の入り口と妖精の王

しおりを挟む
 三人の妖精達は人に化けて、各々お菓子やお菓子作りの道具、材料等を入手する為に、認識阻害の魔法を掛けた馬車を店に横付けし、リリシアーナを馬車の中で待たせたまま、二人が店で買い物し、一人はリリシアーナと一緒に待機する。

 大量に買い過ぎるとさすがに目立つので、その分多くの店を回る。

 大きな街だし、認識阻害も有るので、店によっては二度三度と入っても、同一の客だと認識されないだろう。

 そうして荷馬車の中をお菓子や材料、道具等で埋めていき、道中の食べ物と飲み物を買って街を出て、妖精界の入り口へと向かう。

 妖精の王は、妖精界でリリシアーナが来るのを待っていた。

 妖精の王や女王は基本、妖精界から出ない。

 自身との波長が合い、相性がとても良い者が世界に産み落とされた時に祝福を与えに行く時か、妖精界に属する愛し子の付き添いをする時ぐらいだ。

 因みに妖精界は魔素が溢れていて、本来飲食は必要としない。

 人間でも、空腹や脱水状態になる事は無く、嗜好として口にする程度。

 そして、本や暇潰しになる物や道具の無い妖精界で長い年月を過ごすとなると、人間によっては堪えられない苦痛になる者も居る。

 それ故に、人間界に戻る愛し子もいるが、大概の愛し子は人間界に戻っても、馴染む事が出来ない。

 妖精界と人間界の時間の流れが違う為、知り合いや家族は既に亡くなられているか、居ても別人のような年月の変わり様に、受け入れ難くなるからだ。

 それを理解している妖精の王や女王は、妖精界に足を運んだ愛し子に付き添い、人間界に足を運ぶ事もある。

 妖精の王や女王は、愛し子に祝福を与えた時に愛し子との繋がりが出来、どれ程遠く離れていようと、愛し子からの感情を読み取る事が出来るからだ。

 それ故、妖精の王や女王にとって、愛し子の幸せが何よりで、住む場所が人間界でも妖精界でも大差無い。

 だからこそ、リリシアーナの心配は杞憂でしか無いのだ。

 愛し子のリリシアーナが、一時、妖精を拒んでいたのは知っている。

 だが、リリシアーナを祝福した妖精の王からすれば、それは些細な事でしか無い。

 仮に、父親がリリシアーナの言葉を信じ、フィオナを安らかに眠らせ、リリシアーナが家督を継ぎ、妖精達と距離を置いたまま一生を終えたとしても、構わなかった。

 リリシアーナを祝福した妖精の王にとって、リリシアーナが幸せに生きる事が、最大の喜びなのだ。

 そんなリリシアーナ愛し子に絶望を与え捨てた者達に、手を差し伸べる気は更々無いが、妖精達との共存共生を選ばせた事には褒めてやりたい。


「ああ、我が愛しきリリィ。ここに君を傷付ける者は居ない。ここで存分に心の傷を癒すが良い。私が君を甘やかし、その命が尽きるまで、君を愛し、慈しみ続けよう。だから、そう不安がる事は無い。私がずっと護り続けてみせるから。だから、早くおいで。私がずっと傍に居るから」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】彼女の名前は誰も知らない

ここ
ファンタジー
諜報活動をしている猫の獣人、No.115。推定年齢は8歳。任務についた公爵邸で、侍女見習いに化ける。公爵邸は失った娘によく似た侍女見習いに驚く。No.115はそれも利用して、命がけの任務遂行を目指す。 だが、失くした娘に似たNo.115に、公爵一家は優しくて…

旧転生者はめぐりあう

佐藤醤油
ファンタジー
リニューアル版はこちら https://www.alphapolis.co.jp/novel/921246135/161178785/

婚約破棄感謝します!~え!?なんだか思ってたのと違う~

あゆむ
ファンタジー
ラージエナ王国の公爵令嬢である、シーナ・カルヴァネルには野望があった。 「せっかく転生出来たんだし、目一杯楽しく生きなきゃ!!」 だがどうやらこの世界は『君は儚くも美しき華』という乙女ゲームで、シーナが悪役令嬢、自分がヒロインらしい。(姉談) シーナは婚約破棄されて国外追放になるように努めるが……

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

婚約破棄が成立しない悪役令嬢~ヒロインの勘違い~

鷲原ほの
ファンタジー
侯爵令嬢と男爵令嬢、三人の異世界転生者が関わる婚約破棄騒動。 乙女ゲームの登場人物が出会うところから終演の物語は動き出す。 『完結』

婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました

ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。 王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。 しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

お妃様に魔力を奪われ城から追い出された魔法使いですが…愚か者達と縁が切れて幸せです。

coco
恋愛
妃に逆恨みされ、魔力を奪われ城から追い出された魔法使いの私。 でも…それによって愚か者達と縁が切れ、私は清々してます─!

処理中です...