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エピローグ
永遠〈とわ〉に続く
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リリシアーナが家を出て、数十年。
リリシアーナが住んでいた家は、周辺の人間からは、化け物屋敷と呼ばれていた。
その家からは腐敗臭が漂い、瘴気が発せられているからだ。
この家の当主が、娘が死人だと知った後に、元凶の娘に内緒で国に助けを求めて事態が発覚。
当然国はこの事を問題視したが、聖職者を何人も送り込んだ所で、誰も問題の解決は出来なかった。
当主からの手紙によれば、追放してしまった娘、リリシアーナが妖精の愛し子だったから、リリシアーナを探して欲しいと書かれていた。
しかし、その娘の行方を追っても、途中でぷっつりと形跡が途絶え、追うに追えない。
極稀に、オッドアイのリリシアーナと特徴が一致する人物の目撃情報が入るものの、王都からは距離が有り、駆け付けた時には既に姿形も見当たらない。
不思議な事に、姿を目撃された前と後、目撃された街中を入る前と出た後の足取りが、全く掴めないのだ。
その街の近くに住んでいて、人目を避けているようなら、その街を中心に探せば良いが、目撃された街はバラバラで、どうやって国境を越えたのか、目撃情報は国外にすら及ぶ。
そして、彼女の傍らには、人とは思えぬ程の美貌と威厳と品位を兼ね備えた青年が居たそうだ。
国王は、苦肉の策として、聖職者にリリシアーナが住んでいた家の周りを聖属性の結界で取り囲み、瘴気が広がらないよう定期的に浄化を頼んでいるが、聖女、聖人と呼ばれる者達ですら、屋敷の中には手が出せず、普通の聖職者程度なら屋敷の敷地内に足を踏み入れただけで、下手をすれば命すら危うくなるとの事。
当主からの情報で、リリシアーナが妖精の愛し子だったようだが、彼女なら何とか出来たのかと国王が問うと、聖職者はこう答えた。
「妖精は、生命その物。死霊使いにとって、妖精は天敵と成り得る真逆の存在です。その方が本当に妖精の愛し子で、妖精達に何とかして欲しいと願っていれば、妖精達はその方の為に動いてくれたかも知れませんね。妖精達は気紛れなので、絶対とは言い切れませんが、可能性は高かった筈です。その当主は愚かな事をしましたね。愛し子の居る国は、豊作が続くと言われていますが、調べた所、この国が豊作続きだったのは、その方が産まれてから追放された時までです。なので、その方が愛し子だった可能性は高いでしょう」
「この国にはもう居ない……と言う事か?」
「推測ですが、人の世に属さないかと。移動距離や目撃情報等からして、妖精達の世界に移り住んだ可能性が濃厚です。妖精達は愛し子をとても大切にすると言われてますし、人の世に未練は無いのでしょうね。事実を伝えていたのに信じて貰えず、実の父親と婚約者に、家を追い出されたのなら、尚更戻る気は無いでしょう」
普通の令嬢ならば、家を追い出された時点で真面な生活は無理ですよと、冷淡に告げる聖職者。
聖職者は、平民の暮らしを間近で見ている。当然貴族の家にも呼ばれる為、貴族の暮らしも知っているから、貴族の令嬢が一人で暮らして行けるとは思えない。
三人程度の使用人がいたとて同じ事。
普通の令嬢で無く、良かったと思う反面、今では滅多に生まれない、妖精との掛け橋となる妖精の愛し子を失った損失は大きい。
国王と聖職者は、深い深い溜め息を吐いた。
リリシアーナが住んでいた家は、周辺の人間からは、化け物屋敷と呼ばれていた。
その家からは腐敗臭が漂い、瘴気が発せられているからだ。
この家の当主が、娘が死人だと知った後に、元凶の娘に内緒で国に助けを求めて事態が発覚。
当然国はこの事を問題視したが、聖職者を何人も送り込んだ所で、誰も問題の解決は出来なかった。
当主からの手紙によれば、追放してしまった娘、リリシアーナが妖精の愛し子だったから、リリシアーナを探して欲しいと書かれていた。
しかし、その娘の行方を追っても、途中でぷっつりと形跡が途絶え、追うに追えない。
極稀に、オッドアイのリリシアーナと特徴が一致する人物の目撃情報が入るものの、王都からは距離が有り、駆け付けた時には既に姿形も見当たらない。
不思議な事に、姿を目撃された前と後、目撃された街中を入る前と出た後の足取りが、全く掴めないのだ。
その街の近くに住んでいて、人目を避けているようなら、その街を中心に探せば良いが、目撃された街はバラバラで、どうやって国境を越えたのか、目撃情報は国外にすら及ぶ。
そして、彼女の傍らには、人とは思えぬ程の美貌と威厳と品位を兼ね備えた青年が居たそうだ。
国王は、苦肉の策として、聖職者にリリシアーナが住んでいた家の周りを聖属性の結界で取り囲み、瘴気が広がらないよう定期的に浄化を頼んでいるが、聖女、聖人と呼ばれる者達ですら、屋敷の中には手が出せず、普通の聖職者程度なら屋敷の敷地内に足を踏み入れただけで、下手をすれば命すら危うくなるとの事。
当主からの情報で、リリシアーナが妖精の愛し子だったようだが、彼女なら何とか出来たのかと国王が問うと、聖職者はこう答えた。
「妖精は、生命その物。死霊使いにとって、妖精は天敵と成り得る真逆の存在です。その方が本当に妖精の愛し子で、妖精達に何とかして欲しいと願っていれば、妖精達はその方の為に動いてくれたかも知れませんね。妖精達は気紛れなので、絶対とは言い切れませんが、可能性は高かった筈です。その当主は愚かな事をしましたね。愛し子の居る国は、豊作が続くと言われていますが、調べた所、この国が豊作続きだったのは、その方が産まれてから追放された時までです。なので、その方が愛し子だった可能性は高いでしょう」
「この国にはもう居ない……と言う事か?」
「推測ですが、人の世に属さないかと。移動距離や目撃情報等からして、妖精達の世界に移り住んだ可能性が濃厚です。妖精達は愛し子をとても大切にすると言われてますし、人の世に未練は無いのでしょうね。事実を伝えていたのに信じて貰えず、実の父親と婚約者に、家を追い出されたのなら、尚更戻る気は無いでしょう」
普通の令嬢ならば、家を追い出された時点で真面な生活は無理ですよと、冷淡に告げる聖職者。
聖職者は、平民の暮らしを間近で見ている。当然貴族の家にも呼ばれる為、貴族の暮らしも知っているから、貴族の令嬢が一人で暮らして行けるとは思えない。
三人程度の使用人がいたとて同じ事。
普通の令嬢で無く、良かったと思う反面、今では滅多に生まれない、妖精との掛け橋となる妖精の愛し子を失った損失は大きい。
国王と聖職者は、深い深い溜め息を吐いた。
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