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本編

4 追放されたリリシアーナ(三人の元使用人(?)視点)

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 家を追い出されたリリシアーナ達は、そのまま荷馬車を走らせ、人気の無い森の中で荷馬車を停め、三人の使用人達は人に見えないように荷馬車に魔法を掛け、口々に話し出す。


「ああ、やっとリリィを連れて行けるわ。リリィの傍に居られるのは嬉しかったけど、人間に化けるのは疲れちゃった~」

「本当よ。あの家は死臭臭くて、リリィが居なけりゃ近寄りたくも無いわ。もう、本当に鼻が曲がりそうな程だったし……」

「人間って不思議だよな~。あんなに臭いのに、気付かないなんて」

「リリィの妹の部屋にあった、あの甘ったるいお香のせいじゃない?だからって、あの臭いに気付かないなんて、人間って不思議~」


 そう言いながら、三人の使用人だったモノ達は、もう用が無いとばかりに人間の姿から、元の小さな姿へと戻る。

 彼等三人は、人間に化けた妖精だったのだ。


「それよりリリィ、このお金はどうするの?わたし達の国じゃ、こんなの使わないわよ?」

「人間の国じゃあ必要だけど、僕達の国じゃあ邪魔になるだけだよ?」

「触れなくはないけど、あたし金属嫌ぁ~い」

「僕も」

「わたしも。でも、リリィがナナカマドの銀の腕輪を外してくれて嬉しかった。あれがあると、わたし達は近寄れなくなっちゃうから」

「でも、置いてきて良かったの?あれ、リリィのお母さんの形見でしょ?」

「僕達は触れないけど、持ってきても良かったんだよ?」


 三人の妖精はリリシアーナをじっと見る。


「良いのよ、もう。だって、これからは貴方達の国で、妖精達とずっと一緒に過ごすんだから。それなのに、妖精達が嫌う物を持ってなんて行けないわ」

「これからはずっと一緒……」

「妖精の愛し子であるリリィと一緒。すっごく嬉しい~」

「僕達の国で、ずっと一緒に過ごせる……」


 妖精達は、リリシアーナの言葉に、顔がにやけて仕方無い。


「それと、お金はお菓子やお菓子作りの材料を沢山買って、お土産にしましょう。残ったお金は時々こちらに来て、お菓子やお菓子の材料を補充すればどうかしら?」

「いいね、それ!」

「うん!」

「賛成!!」


 妖精達は人間の作るお菓子やご飯が大好きだ。

 勿論果物や木の実も大好きだが、生のままなので、味が単調になる。

 それなのに人間が手を加わえると、味が幾多にも広がるのだから、好きになるのは当然だろう。

 とは言え、好きだからと、交渉する事無く、窃盗する事は許されない。

 もしそれがバレたら、妖精の王や女王から、罪人の証を付けられた上で、妖精界との繋がりを切られ、人間界に追放される。

 妖精は、妖精界との繋がりを切られると、魔力の供給を断たれ、徐々に衰弱するのだ。

 強い魔力を持つ人間と契約すれば助かるが、妖精の姿を見れる者は、魔力を持つ者でも僅かしか居ない。

 そして、相手が善い人間なら良いが、悪さをして追放されるような妖精の場合、波長の合う人間は碌でも無い人間の方が多い。

 妖精を見れるのは、純粋だからでは無く、波長が合うかどうかだからだ。

 波長さえ合えば、魔力の有無は関係無い。

 因みに妖精の愛し子とは、妖精の王、もしくは女王と波長が合い、妖精の王、もしくは女王からの祝福を受けた者の名称で、普通の妖精からの祝福を受けた者だと、妖精の愛し子とは言われず、妖精の友と言われるのだが、人間にはその区別が出来ないようだ。

 妖精の愛し子は妖精の王や女王と相性が良く、同性なら親友として、異性なら伴侶にする事もある程の溺愛振りだ。

 大昔には、同じ時代に複数人の愛し子が居た事もあるが、時代の流れか、近年では、一人居るか居ないかで、人間界に居ない時期の方が長くなりつつある。

 そして妖精達は、愛し子や友の同意無く、妖精界に連れて来る事は出来ない。

 興味を持たせたり、言葉で誘導する事は出来るが、本人の意思や言葉が無いと、妖精界の扉が開かないようになっているのだ。

(馬鹿だよね、人間達って~)

(愛し子の居る国や土地は、愛し子が住みやすいように、僕達が色々干渉してたりするのにね)

(リリィが居たから、態々あの家を浄化してたのに)

(((ねぇ~)))

 三人の妖精は念話で喋り、互いに顔を見合せ、同じタイミングでにっこりと首を傾げて笑った。
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