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本編
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(信じられない……。わたくし、今、家族以外の人と触れ合ってる……)
公爵はリラをスマートにエスコートしているが、リラからすれば驚きと戸惑いと緊張の連続だ。まず、家族以外で好意的に話し掛けてくれる者もいなければ、近付いてくる者もいない。当然異性との触れ合いも無ければ同性ですら仲の良い話し相手もいない。
そんなリラが、ダンスを申し込まれたのだ。
夜会といった公の場自体苦手で、極力参加を避けているリラ相手に、近付くだけでなくダンスを申し込んでくるなんて、何が起きてるのかさっぱりだった。
(やっぱり、賭け事か何かよね。わたくしを誘うなんて)
女性に人気があり、政界でも活躍している美貌の王弟公爵が、自身に好意を持っているという思考は一切ないリラからすれば、それぐらいしか思い当たる事はなく、少し残念な気分になっていた。
(わたくしだからいいようなものの、他の女性だと絶対勘違いされてしまいますよ。こんなに綺麗な異性に好意的な微笑を浮かべてダンスを誘うなんて、期待するなと言う方が間違いなのですよ?)
互いに対面し、密着して踊り出す。優雅に、軽やかに、会場内の視線を釘付けにして、それは完璧に息の合った見事なダンスを披露する。
「とてもお上手ですね」
「これぐらい、侯爵令嬢として当然の嗜みですわ」
[訳=わたくしなんてまだまだです。他にもダンスの上手な令嬢は沢山いらっしゃいますよ]
公爵の言葉にリラは表情を動かさない。公爵の笑みと言葉に、他の令嬢であれば即見惚れて足を止めるかぎこちない足運びになった事だろう。だが、リラは変わらずに完璧な足運びを崩さずにいる。
ダンスが終盤、残り僅かに差し掛かると、リラは自ら切り出した。
「失礼ながら公爵様、今度女性を誘う時は、好意のある相手をお選び下さい。賭け事や罰ゲーム等の遊びで誘われるのは迷惑ですし、相手に多大なる勘違いをさせてしまいます。わたくしも殿方のお遊びに巻き込まれたくはありませんし、何より非常に不愉快ですわ」
[訳=わたくし、自惚れる気はありませんが、気のない相手に好意的な優しさを振り撒いていると、本命に逃げられますよ。賭け事や罰ゲーム等の遊びで女性を誘うと相手も周りも誤解して、自身の評判も落ちますから。わたくしを巻き込んでも正しい対応が解りませんし、不愉快な思いをさせるだけですわ]
「……遊び?」
公爵がリラに聞き返すと共にダンスの曲が終わる。
「わたくしを誘う理由なんて、それぐらいしかありませんもの」
リラは公爵から離れ、お辞儀をしてその場から直ぐに立ち去る。
その後ろ姿を公爵がずっと見ている事にすら気付かないままに。
公爵はリラをスマートにエスコートしているが、リラからすれば驚きと戸惑いと緊張の連続だ。まず、家族以外で好意的に話し掛けてくれる者もいなければ、近付いてくる者もいない。当然異性との触れ合いも無ければ同性ですら仲の良い話し相手もいない。
そんなリラが、ダンスを申し込まれたのだ。
夜会といった公の場自体苦手で、極力参加を避けているリラ相手に、近付くだけでなくダンスを申し込んでくるなんて、何が起きてるのかさっぱりだった。
(やっぱり、賭け事か何かよね。わたくしを誘うなんて)
女性に人気があり、政界でも活躍している美貌の王弟公爵が、自身に好意を持っているという思考は一切ないリラからすれば、それぐらいしか思い当たる事はなく、少し残念な気分になっていた。
(わたくしだからいいようなものの、他の女性だと絶対勘違いされてしまいますよ。こんなに綺麗な異性に好意的な微笑を浮かべてダンスを誘うなんて、期待するなと言う方が間違いなのですよ?)
互いに対面し、密着して踊り出す。優雅に、軽やかに、会場内の視線を釘付けにして、それは完璧に息の合った見事なダンスを披露する。
「とてもお上手ですね」
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[訳=わたくしなんてまだまだです。他にもダンスの上手な令嬢は沢山いらっしゃいますよ]
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ダンスが終盤、残り僅かに差し掛かると、リラは自ら切り出した。
「失礼ながら公爵様、今度女性を誘う時は、好意のある相手をお選び下さい。賭け事や罰ゲーム等の遊びで誘われるのは迷惑ですし、相手に多大なる勘違いをさせてしまいます。わたくしも殿方のお遊びに巻き込まれたくはありませんし、何より非常に不愉快ですわ」
[訳=わたくし、自惚れる気はありませんが、気のない相手に好意的な優しさを振り撒いていると、本命に逃げられますよ。賭け事や罰ゲーム等の遊びで女性を誘うと相手も周りも誤解して、自身の評判も落ちますから。わたくしを巻き込んでも正しい対応が解りませんし、不愉快な思いをさせるだけですわ]
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「わたくしを誘う理由なんて、それぐらいしかありませんもの」
リラは公爵から離れ、お辞儀をしてその場から直ぐに立ち去る。
その後ろ姿を公爵がずっと見ている事にすら気付かないままに。
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