氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

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後日談

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 レオンがエリオールをエスコートして会場入りすると、会場のあちこちがざわめく。

 他国の王女が賓客として来ているとは噂で聞いていただろうが、本人を見るのは今回が初めてだからだろう。

 そして、情報収集に長けた者は、エリオールがショーン国の王女だと情報を得ている筈だ。

 ショーン国の王族は優秀だが、狡猾な者達が多く、他国だろうとお構い無しに、自国の熾烈な王位争いに巻き込む事が多く、知る人ぞ知る迷惑国家だ。

 そんな国の王女を王太子妃候補に据えるなんて、普通の国であれば正気を疑われる案件だが、マーウィンを知る古株達は、マーウィンなら相手を気に入れば平然とやると認識されてはいるだろう。

 そして、その案が通ると言う事は、後ろに控えるラスボス……元い、覇王だ死神だと、裏で物騒な渾名を付けられているジルギリスが許可を出したからこそだと理解している者が多い。

 そんな候補者エリオールにケチを付けた場合、無理難題を押し付けられるか、痛い腹の内……他人には知られたくない恥ずかしい性癖やら、妻子に知られたくない愛人の存在、他家に知られたくない内情等々を、『こんな奴、もしくはそんな奴が家族として居る者よりかは、彼女エリオール姫の方が断然良いと思いますが?』といった具合の例え話として暴露される事を、古株達は何度も目撃しているのだ。

 それは、本人であれば、他者には絶対に知られたくない話。

 それを本人なら絶対に気付く名称や、頻度割合等を世間話や例え話として、笑顔で口にするのだから、言われた本人は堪った物では無いだろう。

 だが、ジルギリスがそんな恐ろしい相手だと、今の若者達は知らない。

 そしてその情報が、ジェフからレオンに伝わっている事も。

 レオンは最初、他人の弱味なんて把握しなくともと、抵抗感があったようだ。

 しかし、


「エリオール姫の家名を聞いて、レオン様あなたを純粋に心配するだけなら良いですが、一部の者達は、内心エリオール姫を嘲笑し、子供ながらもディーラン国を乗っ取ろうとする悪女の本性を暴き、悪女から王太子を救う英雄になろうと持論の正義を振り翳す気満々の勘違い男だったり、賓客と言ってるが、人質や奴隷のような物で、何をしても構わないのでは、と勘違いしたりしてる者も居るのですが?そんな相手に対して、後手後手に回れば、被害を被るのはエリオール姫ですよ。履き違えないで下さい。これは脅しに使う材料では無く、牽制する為の交渉材料。そもそも、後ろめたい者で無ければ、こんな材料は出てきませんよ」


 とのジェフの言葉に、抵抗感と罪悪感がレオンの中で綺麗に消し飛ぶ。


 レオンにとって守るべき者は、忠義を履き違えた者でも無ければ、レオンにとっての最愛の女性を貶す輩でも無い。

 レオンの守るべき者の最優先は、伴侶となる予定のエリオールだ。

 だからレオンは、不穏分子の情報を、男女拘わらず、夜会の前日までに、頭の中に叩き込んだのだった。
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