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本編

プロローグ ~氷結の毒華~

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 きらびやかなシャンデリアの下、華々しく色鮮やかなドレスに品の良い衣装を身に纏う男女の群れ。

 そんな中、一人浮く美貌の侯爵令嬢、リラ=エヴァンスがいた。

 あまり流行を意識していないが、青みの強い青銀色の髪に、アイスブルーの瞳の美麗な令嬢は、良く似合う装飾の少ないシンプルな青のドレスと、アクセサリーも控え目ながら品質が高い物を身に付けている。

 普通であれば、男達が放って置かない好条件の令嬢であろう。

(お兄様の代理でなければ来なかったわよ。わたくしだって)

 一人だろうと背筋を伸ばし、近寄り難い雰囲気を醸し出すリラが、周囲に目を向けると、その場にいた者達は明らかに目が合わないよう視線を反らす。

 リラは、社交界では有名だった。

 大金持ち、未婚の侯爵令嬢、代々国の中枢を担う名家の娘、となれば、普通は求婚者が殺到する筈だが、二十歳になっても婚約者は未だいない。

 彼女には、将来性の高い有望株な兄が一人いるのだが、その兄にですら、他の者と同じように、蔑むような高飛車ぶりと厳しい口調で対応する。

 他人を睨み、寄せ付けない雰囲気の令嬢は、顔立ちだけなら美人の類いに入るのだろうが、いかんせん、目付きが鋭くきつい上に、令嬢でありながら殺気立った雰囲気を放ち、笑顔を見せず、その寒々しい雰囲気と毒舌で、野心を持って近付く者は何故かことごとく不幸な目に合う。

 その為、付いた渾名あだなは氷結の毒華。側に寄れば毒を放ち、手を伸ばせば凍り付く。

 それがリラに対する周りの評価だ。

 但し、それはリラ自身を本当の意味で知らない人々の周りの評価だった。

 彼女リラの本性を知る、家族や家の使用人達は、口を揃えてこう言うだろう。

 『あれは外用と家用のオンオフが激しいコミュ障だ』
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