上 下
794 / 803
後日談

15

しおりを挟む
 アナスタシアに、断っても良いとは言われたが、それだと話は先送りになるばかりなので、レオンにお受けすると返事を返すと決め、その事をアナスタシアにも報告する。

 そうしてレオンとの顔合わせの日になった。


「エリオール姫、こちらの急な申し出を受けて頂き、有難うございます」


 レオンがエリオールに頭を下げる。


「その……お恥ずかしい話ですが、この国の令嬢、特に婚約者の居ない令嬢や、年の近い令嬢達は、私の……と言うよりは、王太子の婚約者になりたがり、今は体調を崩して療養中の祖母が居ますが、過去にその祖母の茶会で、祖母からの呼び出しに顔を出せば、参加していた令嬢達から、媚びたり言い寄られた挙げ句、私が退出した後でも互いに罵り合ったりして、争いが絶えず、煩わされていたので、突然婚約者候補を連れて来たと言われて、どう対応していいのか、悩んでもいたのです。それに、祖母が勝手に婚約者候補として令嬢達を招いていた事も有り、私がエリオール姫と何度も顔を合わせた場合、それを聞き付けた令嬢達が、エリオール姫に何かしでかしそうでも有り、心配で……」


(それはわたくしが、ぬるま湯に浸かりきった令嬢達に、なす術も無く負けるとお思いで?)

 エリオールはこれでも、あのショーン国で、殺されそうな目に合いながらも、負ける事は一度も無かった。

 負けたら、死を覚悟しなければならないような国で、腹違いの妹は、常にマウント優位を取ろうと、言葉巧みに周囲を嗾けてきたり、周りを巻き込んだりするのが得意なのだ。

 そんな妹を正論で難なくあしらっていたのは、間違い無くエリオールだ。

 そんなエリオールが、平和な国でぬくぬくと育った令嬢に、喧嘩を売られて負ける要素等、有る筈も無い。

 そもそもエリオールは、身内だろうと、心配されると言う出来事自体が、殆ど無かったと言える環境だ。

 心配=弱い、もしくは無能、未熟。不安の顕れ、不信感。

 エリオールの頭を過るのは、そんな言葉の意味でしか無い。

 これがレオンでは無く、アナスタシアやリラ、ジルギリス達のような年上の大人達に言われたならば、別の言葉の意味合いも浮かんだだろう。

 しかし、レオンは同年代。

 正式な顔合わせは、今日が初めて。

 大国の王太子からすれば、小中国の姫等、自国の貴族達に負けると思われていたのだと、エリオールは認識した。

 レオンにそんな思惑は毛頭無いが、そうと認識したエリオールが、内心面白く無いのは仕方が無いだろう。

 ただ、レオンの祖母は、碌でも無い人物だと聞いている。

 その祖母がジルギリスの手の者に、療養と言う名の監禁生活を強いられている事も聞いているのだ。

 勿論その理由も。

 王家にとって、重要な役割を担っているなら未だしも、優秀ですら無いただの国母だと聞いて、監禁されてる事に納得したエリオールだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【R18】私の担当は、永遠にリア恋です!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:120pt お気に入り:376

桜天女

恋愛 / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:0

花冷えの風

BL / 連載中 24h.ポイント:71pt お気に入り:11

[R18]えちえち四面楚歌

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:5

お兄ちゃんと内緒の時間!

BL / 連載中 24h.ポイント:113pt お気に入り:59

【完結】出て行ってください! 午前0時 なぜか王太子に起こされる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:241pt お気に入り:1,390

処理中です...