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後日談

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 クルルフォーン邸へと訪れたその日の夕方、レオンから、今まで顔合わせをしなかった謝罪文と、面会を希望する内容の手紙と共に、花が贈られて来た。

 チラ見程度しか見ていなかったレオンに対して、当然恋愛感情等は持ち合わせていないが、悪意や損得勘定の無い贈り物等貰った事が無かったので、エリオールは戸惑う。


「……これは、どうすれば良いのかしら?」


 ポツリと呟くエリオールに、エリオールの専属侍女が問い返す。


「エリオール様は、花はお嫌いですか?」

「嫌いじゃないけど、普通のお花なんて、今まで一度も貰った事が無いの。棘が沢山付いてる上に、毒が塗ってあるとか、毒性の強い虫を仕込んでいるとかなら有ったのだけど……」


 エリオールの返答に、専属侍女は内心、あの国滅びろ!と悪態を吐くが、笑顔をキープしたまま、会話を続ける。


「何であれ、害が有る物なら、わたし達が一切持ち込ませないので、安心して下さいね。花は愛でる物ですので、お部屋に飾りましょう!今度、王宮の庭師に頼んで、エリオール様好みの花を探して、沢山飾りましょうね!」

「わたくし好みのお花……」


 自国では、今まで花を愛でる余裕も無かったが、これからは花を愛でたり、好きな物を見付けたりも出来るのだと思えば、口許が自然と弛んでしまうエリオール。

 そんなエリオールの心境を察した侍女達は、王太子妃候補云々よりも、誰もが感じる人並みの幸せを感じて貰う為に、アナスタシアとリラに話を持ち掛けようと頷き合う。

 専属とは言え、決定権は少なく、身分差は埋められない。

 だからこそ、そんな時は上司や主人、権力を持つ者を利用しろと教えられている。

 真っ当な相手なら報告連絡相談(所謂いわゆる報連相ほうれんそう)、不当な相手なら嘘では無いが、どうとでも取れる言葉選びをして、言質を取られず難を逃れろと叩き込まれているのだ。

 因みに、報連相は身分差上下関係を念頭に入れず、互いにする事で信頼関係を築く手段だとも伝えられている。

 それもそうだろう。一方通行でどうやって信頼を得ると言うのか。

 報告したのに、その後の経過や結果の報告が無ければ、どうなったかが分からず、忘れられたのかと言う疑問や不満しか残らない。

 そんな事が続けば言っても無駄、と捉えられ、報連相が成り立たなくなるし、信頼性が無くなってしまうのだ。

 だからこそエヴァンス家内や、エヴァンス家が出資しているエヴァンス領の学校では、これを浸透させるようにと徹底的に教えているので、結束や連携がとても強いし、重要度の高い情報の共有等も速い。

 そして今回、花に限らずエリオールの好む物、色等を含めて探し、誰が一番多く見付けられるかを競う事にした。
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