氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
上 下
789 / 805
後日談

9

しおりを挟む
 その後、側妃達の子供から継承権が剥奪されて、エリオールの実兄が王太子として発表された。

 発表内容は、エリオールを気に入った大国からエリオールへの縁談の打診を不服とし、使者の滞在場所やエリオールの部屋へと押し掛け国の信用を失墜し、抗議を受けた国王が謹慎を言い渡したにも拘わらず、交渉の場にまで押し掛け、大国の使者に無礼な態度で接し、国の存続をも脅かした為、継承権を剥奪するとの事。

 その過程で、大国側は今後一切、ショーン国の要望を聞き入れない事や、エリオールを唆したり、不遇な扱いにしたり、エリオールに何か有れば、徹底調査をした上で、その者には両国から厳しい罰則が与えられる事も、貴族達には公表された。

 エリオールの周辺には、大国の手の者が手厚く保護してる事も添えて。

 そうして、二年程が過ぎたある日の事。

 ジルギリスから派遣された教育係り達から、沢山の事を学びながらも、充実した日々を送っていると、ジルギリスからの手紙と荷物が、エリオールに届く。

 その手紙の内容は、ディーランの王太子の婚約者候補として、ディーランに来て欲しいと言う内容の物で、荷物は道中に必要な物や、衣類品等も含まれている。

 ショーン国の物を持ち出しても構わないが、嫌な想いしか無かった国の物を持って行きたいとは思わないだろうとの配慮からで、衣類品等の身に付ける物は、荷物と共に迎えに来た女性の使用人が選んだ物だ。

 それと万が一候補が外れたとしても、二度とショーン国には帰らなくて良いように手配はしているから、心配は要らないとの言葉も手紙に明記されている。

 そして、ディーランや王太子の大まかな情報も、参考資料として荷物の中に入っていた。

 道中はその資料を読んだり、エリオール付きのエヴァンス家関係者に質問をしたりしながら、ディーランへと向かう。

 そうして数ヶ月掛けて、エリオールはディーランへと辿り着いたのだが。

 婚約者候補で有るレオンが、姿を現さない。

 どうやら婚約自体を嫌がっているらしい。

(自国を捨てる気満々のわたくしが、思う事では無いのかも知れないけれど、王族や貴族が義務や責任を放り出して、自身の好き勝手に生きれると、本気で思っているのかしら?もし本気なら、どこまでも考えが甘いのね。わたくしの国なら、絶対に生き残れないと思うわ)

 マイナスとまでは行かないが、エリオールの中でレオンは、同年齢だが精神面では甘ったれた子供、と言う印象を植え付けた。

 この婚約はジルギリスとエリオールの契約みたいな物だ。

 だが、ジルギリスはエリオールに、こうも告げていた。


「本人と会って、嫁ぎたくないと、信用出来ないと心底思うなら、私が責任を持って婚約を破棄するので、その時は言って下さいね。彼が嫌なら、新しい嫁ぎ先を紹介しますし、我慢してまで婚約をする必要は有りません。この婚約は強制では有りませんから、その事を忘れないで下さいね」


 その言葉を、鵜呑みにしても良い物なのかと、エリオールは多少悩んだが、そんなエリオールの心情を察したのか、ジルギリスは笑顔で言い切った。


「私は貴女の味方です。愛娘に似た貴女を、不幸にはしたく有りませんから」
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...