氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
上 下
788 / 805
後日談

8

しおりを挟む
 ジルギリスとショーン国国王達との話が終わりに差し掛かった頃。

 廊下が騒がしくなったかと思うと、突如扉が開かれた。

 そこに佇むのは、二人の男女で、王位継承権を持つ側妃達の子供だ。

 その姿を認めた国王は、当然憤るが、二人は全く気付かず、あろう事か、そのままジルギリスに話し掛けた。


「お初にお目に掛かります、ディーランの使者殿。我々は、この国の王子、王女で、王位継承権を持つ者です。どうしてもお話ししたい事が有りまして、こうして押し掛けさせて頂きました。無礼の程、重々承知しておりますが、何卒ご容赦願いたい」


 堂々と言い放つ王子と、縮こまるように佇む王女。まるで王子に、無理矢理連れて来られたように装っているが、焚き付けたのは王女の方だ。

 今までの調査結果でも、彼女は小賢しい手を使い、他人を思い通りに操っているし、何より、エヴァンス家の潜入組から、報告も貰っているのだ。

 そんな二人を一瞥し、国王が口を挟まないようにと声を掛け、ジルギリスは笑顔で口を開く。


「本当に、礼儀のなっていないお二方ですね。こんなのが、王位継承者ですか。この国の優秀基準に疑念しか抱けませんよ。お二方は確か、今現在、謹慎中の身ですよね?」


 当然ジルギリスの目は笑っていない。

 だが、ジルギリスに馬鹿にされたと思った側妃の王子は、怒りを顕にする。


「それはそちらがっっ!!」


 大声を上げる王子に、ジルギリスは笑みを消し、絶対零度の眼差しを向けて黙らせた後、再度口を開く。


「ええ。我々ディーラン側が抗議した結果です。しかし、我々ディーラン側は、最初に『我々とエリオール姫には近付くな』と、この国の国王陛下経由で忠告しています。それを無視したのはお二方ですよね?そんなお二方の更なる無礼を、何故こちらが容赦しなければならないのか、この国の国王陛下の決定に従わないのはどうしてか、こちらとしては、教えて頂きたいですね。ああ、因みに、子供だからと言う理由は止めて下さいね。ここは国同士の交渉の場です。礼儀もなっていない子供が居て良い場所では無い」


 ジルギリスの言葉に、王女は必死に言い訳を口にする。


「わっ、わたしは、エリオール姉さまが心配だったのです!エリオール姉さまは人見知りで、大国の使者さまを相手にするのは荷が重いかと思って……」

「心配だったら、何をしても良いとでも?少なくともエリオール姫は、お二方よりは礼儀を弁えていらっしゃいますよ。国同士の交渉の場で有るこの場所に、無理矢理押し掛けて来る事も無く、お部屋で大人しくして下さっているのだから」

「でっ、ですが、それなら兄さまも……」


 この場に最初から居た正妃の兄をチラッと見るので、ジルギリスは事実を述べる。


「彼は謹慎中では無いし、礼儀もきちんと弁えていますよ。だからこの場に居る事を許されているのです。それより、私の質問には答えられていませんが?」


 ジルギリスの容赦無い問いに、瞳を潤ませ、泣き落としに掛かる王女。


「ふぇ……」

「ああ、泣いて誤魔化そうとしても無駄です。言いましたよね。ここは、礼儀のなっていない子供が居て良い場所では無い、と。子供扱いされたければ、他所でして下さい。国の醜態にしかなりませんよ。ショーン国国王陛下、陛下も大変ですね。国王の命令を軽んじる輩が後継者候補だなんて。心中お察し致します」


 ジルギリスの言葉を受け、国王は直ぐに衛兵を呼び、二人を拘束。

 地下牢へと指示を出し、只管ディーラン側に謝罪をするのだった。
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...