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後日談

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「さて、まどろっこしいのは抜きにして、本音で語り合いましょうかエリオール姫。ここには我々しか居ません。言葉を取り繕う必要は有りませんので、本心をお聞かせ下さい。貴女は何をお望みですか?貴女の答え次第で、手助け出来るかも知れません。ただ、その場合、こちらの条件も呑んで頂く事になるでしょうが」


 ジルギリスの言葉は、本来子供相手に向ける物では無いだろう。

 そして、エリオールにとってのジルギリスの言葉は、甘いだけの物では無いからこそ、一番の望みが叶うのではと期待してしまいそうになる。

 ただ、交渉もしない内から期待して、後からがっかりするのは嫌だった。

 期待した後の失望は、それはもう、嫌と言う程既に味わっている。

 それでもこのチャンスを逃せば、次が有るのかすらも分からないのだから、エリオールは、このチャンスを逃す気は無い。


「わたくしの一番の望みは、この国を出て、平穏無事に過ごす事。興味の無い王位なんていらない。奴隷のような劣悪な環境でなければどこでも良い。裏切り者なんていらない。心から信頼出来る者が一人も居ないこの国なんて、大嫌い」


 エリオールの脳裏に過るのは、長年仕えてくれていた侍女で、数ヶ月前にエリオールを裏切り、毒入りのお茶を差し出した、内心では姉のように慕っていた者。

 彼女の顔色が悪いので、二人切りにして欲しいと周囲に頼み、彼女に問い質せば、涙を流しながら必死に謝罪し、惚れた男にこれを盛れと毒を渡された事、そんな事は出来ないと断ったら、今度は幼い弟を人質に取られ、双方に見張りを付けられ、どうする事も出来なかったらしい。

 その男は他の王位継承者に与する者で、エリオールが邪魔だと思ったのだろう。

 王位継承者の信頼する身近な者達が、真っ先に狙われる事はよく有る事だと言ってもいいが、この陰険な遣り口に、エリオールは心底嫌気がさしたのだ。

 エリオールは正妃の娘だ。

 血の繋がった兄もそうだが、正妃の子供と言うだけで、有利だと思われる。

 実際正妃と側妃の子供で学力が同じなら、正妃の子供の継承順位の方が高い。

 その為、他の王位継承者やその取り巻き達に、逸早く狙われるのも、正妃の子供やその取り巻き達だ。

 エリオールに毒を盛った彼女は本来死刑だが、直ぐに自供をした事、人質がいた事、弟が嫡男で、両親は既に他界し、他に家族は居ない事、エリオールはその毒を飲んでいない事、王妃が後見人をしていた事等、様々な要因が重なり死刑は免れたが、当然罪人として刑が下されたし、エリオールは二度と彼女に会う事は出来ないだろう。

 因みに、相手の男は捕縛前に毒を飲んで死んでいた。

 男が捕まるのを恐れた王位継承者黒幕が殺す指示をしたのか、男が自死を選んだのか、真相は分からない。

 見張りをしていた者達も捕まりはしたが、大金で雇われただけで、彼が誰に仕えていたのかは知らなかったようだ。

 そして金で雇われただけで後見人の居ない彼等は、拷問された後に処刑されたが、エリオールの心には、深い傷だけが残ったのだった。
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