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後日談

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 ここ、カルハゼ領域にのみ、王族や外交官といった首脳達の一部に伝わる逸話が有る。

 ディーラン王国と、青み掛かった銀髪の男とは、絶対に敵対するな、と言った内容の物だ。

 曰く、ディーラン国の領土を狙い、旅行中の王太子に暗殺者を送り込んだら、その暗殺者の首が暗殺を企んだ者の執務室に忽然と置かれていた。

 曰く、旅行先の国で、内乱が起きているので巻き込まれても責任は取れないと言われ、それなら自己防衛で対処しますので、後々賠償等求めないと言う誓約書を下さいと言い、彼等の去った後には、彼等を襲ったであろう者達の屍が築かれた。

 曰く、幾度隣国に戦を仕掛けられようとも、その都度勝利し、王位の交代と多額の賠償金等を支払わせた、等々。

 その他諸々、数多くの噂が囁かれているが、その真偽を知る者は当事者ぐらいだろう。

    ただ、彼等を怒らせたであろう国の悉くは、同盟国同士が集まる首脳会談や、同じ領域内の者達が集う首脳会合等で、居ない者として扱われるか、同盟や関わり合いを絶とうとされるかで、そうなると他国の支援等が受けられず、大変な苦労を強いられる事になるだろう。

 元々ディーラン王国は、このカルハゼ領域内の三本の指に入る大国で有り、潤沢な資金や国力を持つ強国だ。中小国に位置するショーン王国が勝てる相手では無い。

 そんな相手に武器を向けたのだ。

 襲った男が殺されたとて、ショーン王国が文句を言える立場では無い。


「我が国の愚かな者が、とんだ無礼を致しました事、その者に成り代わり、深くお詫びを申し上げますと同時に、我が命をお救い下さった事、深く感謝致します。この愚か者に関しましては、国の威信に掛けて、厳罰に処する事をお約束致しますので、何卒ご容赦下さいますようお願い申し上げます」


 深々と頭を下げるエリオールに、マーウィンは感心する。


「まだ幼いと言うのに、確りした王女だな」

「ここでは子供らしさなんて、命取りにしかなりませんよ。まぁ中にはそれを装い、利用する者も居るようですが、所詮は浅知恵。子供時代でしか通用しないし、幼さは理由になり得ませんよ。そうでなければ、年齢制限を設けるでしょうし、歴史を振り返れば、子供でも王位争奪戦を勝ち抜いたり、人質から返り咲いた者も居た国ですから。エリオール姫、頭を上げて下さい。この者に付いてはそちらにお任せしますが、この者を処刑する事だけで終わらせないで頂きたいのと、今回の事は公に公表して頂き、我々が滞在中の間は、このような事は二度と無いようショーン王国陛下に伝えて下さい。それと、謝罪する気が有るのなら、エリオール姫を我々の世話役にして頂きたいとも。ああ、他の方は要りませんよ?面識の無い方に言い寄られても不愉快になるだけですから。エリオール姫以外の方を寄越されたなら、ショーン王国は、我々ディーラン王国を敵に回したい、もしくは侮っていると認識させて頂きますので」


 笑顔で喋ってはいるが、その内容は脅迫とも取れる内容だ。

 そして、エリオールの立場は人質とも言えるだろう。

 だが、エリオールにとってその内容は、この国から逃れられる最大のチャンスに思えたのだった。
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