774 / 805
後日談
12
しおりを挟む
ルークスは三枚の署名欄に、ローレン侯爵とミルド侯爵に承諾のサインを書かせ、各々に一枚ずつ渡す。
「そちらの身内にも、必ずこの誓約書を理解させて下さいね。知らなかったからでは通用しませんから。暫くは監視が付くかも知れませんが、信頼を失墜させる行動を起こされたのはそちらなので、仕方が無いかと。それに、誓約を守れば問題は無い筈です。ただし、不穏な行動は控えて下さいね?賊退治で武力を集める場合でも、謀叛を起こすと勘違いされる可能性も有りますから、申請書を出すのが無難かと。まぁ、武力行使をされた所で、こちらは一向に構いませんが、ローレン家やローズウッド家、セイル家を敵に回したがる者は少ないでしょうね」
ルークスの言葉に、ミルド侯爵は顔色の悪いまま嘆願する。
「息子は、本当にミリアム嬢の事が好きだったんだ。せめて、最後に一度だけでも、ミリアム嬢と会わせてやってはくれないか?」
その言葉に、ルークスは軽蔑の眼差しを向けて、辛辣な言葉を述べる。
「そんな戯れ言を、何故こちらが聞き入れなければならないのです?ミリアムの事が好きなら尚の事、婚約破棄等言い出さなければ良かっただけですよね?好きなら、何をしても良いとでも?今更ミリアムに情で訴えても、何もなりませんよ。寧ろ、迷惑でしか無い。懺悔をすれば、そちらの気が済むのかも知れませんが、それを許せばミリアムに、応えられないと言う罪悪感を抱かせるだけです。ミリアムは既に、新たな婚約者と、共に歩む道を歩き始めています。その光り輝く道に、不要な影を落とさないで頂きたい。貴方の子息との道は、既に閉ざされているのだから」
今まで沈黙を貫いていた、ローレン侯爵も口を開く。
「そちらとの婚約は政略だ。だが私は、娘を私と同じように大切に扱い、幸せにするとの言葉に婚約を結んだ。娘を大切に、幸せにしてくれる男なら、平民だろうと下位貴族だろうと、貧しかろうと武芸が出来なかろうと、構わなかったんだ。勿論、貴方の息子でも。だが、貴方の息子はどうだった?大切にする所か、私の娘に暴言を吐き、世間の笑い者にして、娘を深く傷付けた。口先だけで、全く信用も出来ない、そんな男とその家族に、私の大切な娘を託す気は無い。息子共々、二度と近寄らないでくれ」
笑顔を消したルークスとローレン侯爵の、怒気の宿る冷たい眼差しを受け、ミルド侯爵はガックリと項垂れ、最後に謝罪だけを残し、ローレン邸を去ったのだった。
「そちらの身内にも、必ずこの誓約書を理解させて下さいね。知らなかったからでは通用しませんから。暫くは監視が付くかも知れませんが、信頼を失墜させる行動を起こされたのはそちらなので、仕方が無いかと。それに、誓約を守れば問題は無い筈です。ただし、不穏な行動は控えて下さいね?賊退治で武力を集める場合でも、謀叛を起こすと勘違いされる可能性も有りますから、申請書を出すのが無難かと。まぁ、武力行使をされた所で、こちらは一向に構いませんが、ローレン家やローズウッド家、セイル家を敵に回したがる者は少ないでしょうね」
ルークスの言葉に、ミルド侯爵は顔色の悪いまま嘆願する。
「息子は、本当にミリアム嬢の事が好きだったんだ。せめて、最後に一度だけでも、ミリアム嬢と会わせてやってはくれないか?」
その言葉に、ルークスは軽蔑の眼差しを向けて、辛辣な言葉を述べる。
「そんな戯れ言を、何故こちらが聞き入れなければならないのです?ミリアムの事が好きなら尚の事、婚約破棄等言い出さなければ良かっただけですよね?好きなら、何をしても良いとでも?今更ミリアムに情で訴えても、何もなりませんよ。寧ろ、迷惑でしか無い。懺悔をすれば、そちらの気が済むのかも知れませんが、それを許せばミリアムに、応えられないと言う罪悪感を抱かせるだけです。ミリアムは既に、新たな婚約者と、共に歩む道を歩き始めています。その光り輝く道に、不要な影を落とさないで頂きたい。貴方の子息との道は、既に閉ざされているのだから」
今まで沈黙を貫いていた、ローレン侯爵も口を開く。
「そちらとの婚約は政略だ。だが私は、娘を私と同じように大切に扱い、幸せにするとの言葉に婚約を結んだ。娘を大切に、幸せにしてくれる男なら、平民だろうと下位貴族だろうと、貧しかろうと武芸が出来なかろうと、構わなかったんだ。勿論、貴方の息子でも。だが、貴方の息子はどうだった?大切にする所か、私の娘に暴言を吐き、世間の笑い者にして、娘を深く傷付けた。口先だけで、全く信用も出来ない、そんな男とその家族に、私の大切な娘を託す気は無い。息子共々、二度と近寄らないでくれ」
笑顔を消したルークスとローレン侯爵の、怒気の宿る冷たい眼差しを受け、ミルド侯爵はガックリと項垂れ、最後に謝罪だけを残し、ローレン邸を去ったのだった。
1
お気に入りに追加
9,266
あなたにおすすめの小説
隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます
鳴宮野々花@軍神騎士団長1月15日発売
恋愛
一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────
私、この子と生きていきますっ!!
シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。
幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。
時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。
やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。
それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。
けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────
生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。
※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる