氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
756 / 805
後日談

24

しおりを挟む
「言い忘れて居たが、アシュリー夫人は我が妃、アナスタシアの数少ない、気に入る女性の一人で、今回の事に酷く心を痛めていた。エヴァンス家当主は我が妃の後見人で有り、その娘は我が実弟の嫁で有る。その後見人の息子の嫁に、貴殿の娘は命令をしたんだぞ?国王で有る私が自ら下した裁決を無視する言葉で!王家主催の夜会に騒動を起こし、王弟を侮辱する馬鹿な婚約者を止める事すら出来ない無能な息子を助けろと、筋違いにも当時の被害者だった元婚約者の女性にだ!!」


 アレクシスが、怒気を隠さず侯爵達を睨み付ける。

 高位貴族に嫁いだとは言え、アシュリーは元辺境伯令嬢。

 大人しく地味な印象しか抱いてなかったアシュリーが、まさか王都で王妃と親しくなっているなんて、思ってもいなかった侯爵達の顔色は悪くなるばかり。


「エヴァンス家は代々国の中枢を担う為、エヴァンス家に権力が集中しないよう、王女が嫁ぐ事も王子が婿入りする事も一切していない。それでも経済力や発言力は、王族の血を引く公爵家と大差無い状態だ。そして何より、エヴァンス家の者達は、人材育成や経営力に優れており、新しい事業を始めても、数年後には利益を生むようになるので、商売人達はこぞって手を組みたがる。しかも仕事は利益よりも品質重視。その総資産は、国から独立しても充分やっていける程だが、国王は性に合わないからと税を払い、独立せずにいるだけの家だ。そんな家を敵に回す意味を、お前達は理解しわかっているのか?」


 アレクシスは容赦無く威圧する。

 エヴァンス家はかなりの資産家だと言う認識は有ったが、まさかそこまでとは思ってもいなかった侯爵達は、思考が追い付かない状態だ。

 それに追い打ちを掛けるように、ジーンがネイルに付いての情報を出す。


「それを言うならネイルの方が凄いですよ。ネイルはどんな土地だろうと、その場に合った作物を育て、改良し、不作に陥る事を減らしていますし、貴重な薬の原料となる植物の増殖も可能にしてるのですから。ネイルの個人・・資産は、既にそちらの侯爵家と同等以上、そんな相手の邸に断りも無く押し掛け、挨拶も無く無視するような身内なんて持ちたくは無いし、育てたく無いですね」

「そう言えば、そんなネイル殿の初期投資者も、エヴァンス家だったな」


 ジーンの言葉にアレクシスは、どうせそんな事すらも知らなかったのだろうとばかりに侯爵達に氷の刃のような視線を向ける。


「まぁ、ネイルはエヴァンス家の領内に有る学校で、数名の植物学者が教鞭を取っていると聞き、貴族を辞めてでもこちらの学校に通うとまで言い出した人ですから。そこまでの熱意と才能と将来性が有るのに、投資しない方がおかしいですよ」

「そんなエヴァンス家の次期当主夫妻と、場所を提供しただけのネイル殿に無礼を働き、国王で有る私の裁決に異議を唱えるなんて、余程その女は地位の高い家に生まれ、高等の教育を受けたのだろうな?国王で有る私よりも偉いのだから」


 アレクシスの強烈な嫌味に、当然ジーンも便乗する。


「妄想の国では唯一無二の女王なのかも知れませんね。そうで無ければ現実で貴族の礼儀ぐらいは最低限でも学ぶでしょうから。さてと、前置きはこれぐらいにして、本題に入りましょうか。嫁に出しているとは言え、実家の責任問題に付いて、国王陛下が直々に裁決をして下さいますよ」


 侯爵達は一言も喋る事すら出来ず、凍り付いた池に落ちたかのように震えていた。
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...