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後日談

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 アシュリー達が王都に帰って来た三日後。

 昨日は外が少し騒がしかったような気はするが、ジーン曰く、『無作法者達が、約束も取り付けずに押し掛けて来ただけだから。たまに居るんだよ。私達の不在中に押し掛けて来て、自分達の都合を優先したがる考え無しが。当然抗議をさせて貰うから、アーシュは気にしなくて大丈夫だよ』との事なので、アシュリーは旅の疲れも取れていないのに押し掛けて来るなんて、確かに非常識だなと思ったようだ。


「しかも、面識すら無いのだから、いい迷惑だ」

「名家と言うのは、色々と大変な事が多いのですね」


 使用人達が全て対応してくれてるので、報告は入るが、ジーンの手を煩わせる事は無いと聞き、エヴァンス家の優秀な使用人達に、いつもながら尊敬の念を抱いたアシュリーだった。

 そして今日は、久々のクルルフォーン邸に訪問する予定だ。

 約三ヶ月も会えず仕舞いだったので、旅の出来事を話せるのが、とっても楽しみなようだ。

 ジーンはアシュリーをクルルフォーン邸に送って、旅から戻った事を報告する為に王宮へと顔を出すつもりらしい。

 因みに貴族は、王都に入った時点で、王都の入り口の門番から王宮へと伝達されるが、王宮で働く者達は、通常帰還の挨拶を王都入りした三日後を目処にする習慣が有る。

 実は今回使用した旅行の馬車は、エヴァンス家所有の馬車では無い。

 お忍びの旅行の場合、貴族は馬車の家紋を隠すが、宿を使用する際には家紋を見せる。

 他家の家紋を無断で使用する事は出来ないし、相当の信頼関係が無いと貸し借り出来る物では無い。

 馬車を悪用された時、その責任は全て馬車の所有家で有り、知らなかったでは済まないからだ。

 当然、馬車を盗まれたという言い訳も通用しない。

 馬車の管理責任を問われるし、家紋入りの馬車を持つ事が出来なくなる。

 家紋入りと無しとでは、信頼の度合いがまるで違い、その差は歴然だ。

 そんな家紋入りの馬車を、誰がエヴァンス家に貸したのか?

 その答えはセイル家だ。

 セイル家当主はアシュリーにとって義兄で有り、先代当主とジーンとは血の繋がった伯父甥の関係だから出来たような物だ。

 セイル家には、『道中余計な横槍が無いよう、家紋入りの馬車を貸して欲しい』と手紙を出すと、二つ返事で了承された。

 セイル家はからの侵入を阻むディーランの守護家と呼ばれているが、当然海からだけで無く、地上戦も得意だ。

 そんなセイル家の家紋が入った馬車に、喧嘩を売る国内貴族は皆無と言っても良い。

 だからこそジーンはアシュリーに、伯父からの心配と厚意によるお守りのような物だと言った。

 そしてエヴァンス家の使用人達は、セイル家の血縁者の子息夫婦と言う触れ込みで宿に泊まっていたのだ。

 お陰で今回、エヴァンス家の馬車を探していたどこぞの・・・・侯爵の使用人達は、当然見付けられずに困惑した事だろう。
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