753 / 805
後日談
21
しおりを挟む
アシュリー達が王都に帰って来た三日後。
昨日は外が少し騒がしかったような気はするが、ジーン曰く、『無作法者達が、約束も取り付けずに押し掛けて来ただけだから。たまに居るんだよ。私達の不在中に押し掛けて来て、自分達の都合を優先したがる考え無しが。当然抗議をさせて貰うから、アーシュは気にしなくて大丈夫だよ』との事なので、アシュリーは旅の疲れも取れていないのに押し掛けて来るなんて、確かに非常識だなと思ったようだ。
「しかも、面識すら無いのだから、いい迷惑だ」
「名家と言うのは、色々と大変な事が多いのですね」
使用人達が全て対応してくれてるので、報告は入るが、ジーンの手を煩わせる事は無いと聞き、エヴァンス家の優秀な使用人達に、いつもながら尊敬の念を抱いたアシュリーだった。
そして今日は、久々のクルルフォーン邸に訪問する予定だ。
約三ヶ月も会えず仕舞いだったので、旅の出来事を話せるのが、とっても楽しみなようだ。
ジーンはアシュリーをクルルフォーン邸に送って、旅から戻った事を報告する為に王宮へと顔を出すつもりらしい。
因みに貴族は、王都に入った時点で、王都の入り口の門番から王宮へと伝達されるが、王宮で働く者達は、通常帰還の挨拶を王都入りした三日後を目処にする習慣が有る。
実は今回使用した旅行の馬車は、エヴァンス家所有の馬車では無い。
お忍びの旅行の場合、貴族は馬車の家紋を隠すが、宿を使用する際には家紋を見せる。
他家の家紋を無断で使用する事は出来ないし、相当の信頼関係が無いと貸し借り出来る物では無い。
馬車を悪用された時、その責任は全て馬車の所有家で有り、知らなかったでは済まないからだ。
当然、馬車を盗まれたという言い訳も通用しない。
馬車の管理責任を問われるし、家紋入りの馬車を持つ事が出来なくなる。
家紋入りと無しとでは、信頼の度合いがまるで違い、その差は歴然だ。
そんな家紋入りの馬車を、誰がエヴァンス家に貸したのか?
その答えはセイル家だ。
セイル家当主はアシュリーにとって義兄で有り、先代当主とジーンとは血の繋がった伯父甥の関係だから出来たような物だ。
セイル家には、『道中余計な横槍が無いよう、家紋入りの馬車を貸して欲しい』と手紙を出すと、二つ返事で了承された。
セイル家は海からの侵入を阻むディーランの守護家と呼ばれているが、当然海からだけで無く、地上戦も得意だ。
そんなセイル家の家紋が入った馬車に、喧嘩を売る国内貴族は皆無と言っても良い。
だからこそジーンはアシュリーに、伯父からの心配と厚意によるお守りのような物だと言った。
そしてエヴァンス家の使用人達は、セイル家の血縁者の子息夫婦と言う触れ込みで宿に泊まっていたのだ。
お陰で今回、エヴァンス家の馬車を探していたどこぞの侯爵の使用人達は、当然見付けられずに困惑した事だろう。
昨日は外が少し騒がしかったような気はするが、ジーン曰く、『無作法者達が、約束も取り付けずに押し掛けて来ただけだから。たまに居るんだよ。私達の不在中に押し掛けて来て、自分達の都合を優先したがる考え無しが。当然抗議をさせて貰うから、アーシュは気にしなくて大丈夫だよ』との事なので、アシュリーは旅の疲れも取れていないのに押し掛けて来るなんて、確かに非常識だなと思ったようだ。
「しかも、面識すら無いのだから、いい迷惑だ」
「名家と言うのは、色々と大変な事が多いのですね」
使用人達が全て対応してくれてるので、報告は入るが、ジーンの手を煩わせる事は無いと聞き、エヴァンス家の優秀な使用人達に、いつもながら尊敬の念を抱いたアシュリーだった。
そして今日は、久々のクルルフォーン邸に訪問する予定だ。
約三ヶ月も会えず仕舞いだったので、旅の出来事を話せるのが、とっても楽しみなようだ。
ジーンはアシュリーをクルルフォーン邸に送って、旅から戻った事を報告する為に王宮へと顔を出すつもりらしい。
因みに貴族は、王都に入った時点で、王都の入り口の門番から王宮へと伝達されるが、王宮で働く者達は、通常帰還の挨拶を王都入りした三日後を目処にする習慣が有る。
実は今回使用した旅行の馬車は、エヴァンス家所有の馬車では無い。
お忍びの旅行の場合、貴族は馬車の家紋を隠すが、宿を使用する際には家紋を見せる。
他家の家紋を無断で使用する事は出来ないし、相当の信頼関係が無いと貸し借り出来る物では無い。
馬車を悪用された時、その責任は全て馬車の所有家で有り、知らなかったでは済まないからだ。
当然、馬車を盗まれたという言い訳も通用しない。
馬車の管理責任を問われるし、家紋入りの馬車を持つ事が出来なくなる。
家紋入りと無しとでは、信頼の度合いがまるで違い、その差は歴然だ。
そんな家紋入りの馬車を、誰がエヴァンス家に貸したのか?
その答えはセイル家だ。
セイル家当主はアシュリーにとって義兄で有り、先代当主とジーンとは血の繋がった伯父甥の関係だから出来たような物だ。
セイル家には、『道中余計な横槍が無いよう、家紋入りの馬車を貸して欲しい』と手紙を出すと、二つ返事で了承された。
セイル家は海からの侵入を阻むディーランの守護家と呼ばれているが、当然海からだけで無く、地上戦も得意だ。
そんなセイル家の家紋が入った馬車に、喧嘩を売る国内貴族は皆無と言っても良い。
だからこそジーンはアシュリーに、伯父からの心配と厚意によるお守りのような物だと言った。
そしてエヴァンス家の使用人達は、セイル家の血縁者の子息夫婦と言う触れ込みで宿に泊まっていたのだ。
お陰で今回、エヴァンス家の馬車を探していたどこぞの侯爵の使用人達は、当然見付けられずに困惑した事だろう。
1
お気に入りに追加
9,266
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
夫の書斎から渡されなかった恋文を見つけた話
束原ミヤコ
恋愛
フリージアはある日、夫であるエルバ公爵クライヴの書斎の机から、渡されなかった恋文を見つけた。
クライヴには想い人がいるという噂があった。
それは、隣国に嫁いだ姫サフィアである。
晩餐会で親し気に話す二人の様子を見たフリージアは、妻でいることが耐えられなくなり離縁してもらうことを決めるが――。
継母の品格 〜 行き遅れ令嬢は、辺境伯と愛娘に溺愛される 〜
出口もぐら
恋愛
【短編】巷で流行りの婚約破棄。
令嬢リリーも例外ではなかった。家柄、剣と共に生きる彼女は「女性らしさ」に欠けるという理由から、婚約破棄を突き付けられる。
彼女の手は研鑽の証でもある、肉刺や擦り傷がある。それを隠すため、いつもレースの手袋をしている。別にそれを恥じたこともなければ、婚約破棄を悲しむほど脆弱ではない。
「行き遅れた令嬢」こればかりはどうしようもない、と諦めていた。
しかし、そこへ辺境伯から婚約の申し出が――。その辺境伯には娘がいた。
「分かりましたわ!これは契約結婚!この小さなお姫様を私にお守りするようにと仰せですのね」
少しばかり天然、快活令嬢の継母ライフ。
■この作品は「小説家になろう」にも投稿しています。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる