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後日談

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 アシュリーは久々にマディソンの兄、ヘンリーと対面する。

 ヘンリー夫妻と会う事は少なかったが、ヘンリーが妻を大事に扱っていたので、妻は顔が良いマディソンに興味を持つ事も無く、寧ろ、マディソンのアシュリーに対する態度に、婚約時代からあんなのが婚約者で無くて良かったと思っていた程だったので、元々アシュリー相手には同情的だった。

 とは言え、さすがにヘンリー夫妻はマディソンがあんな事に加担していたとは思わず、そもそもアシュリーの義妹に騙された上、アシュリーを家から追い出していたのを知ったのは、あの子爵家の夜会の後、マディソンが急ぎ王都へ向かっている際に、夜会の出来事を聞く羽目になったからだ。

 ヘンリーの性格上、マディソンがアシュリーでは無く義妹のサラと会っていた事や、アシュリーとの婚約を無かった事にしようとしていた事を知っていれば、サラにはゴート家を継ぐ権利が無い事や、あのゴート伯爵が無能な事、他の令嬢が八方美人なマディソンお前の所為でアシュリーを目の敵にしている事をくどくどと説教し、今までの態度を含めて、婿入りするお前が不誠実を理由に婚約破棄されるなら話は解るが、お前から破棄すれば有責は明らかにこちら側だと断言しただろうに、実家に相談もせず先走ったのだから、どうしようも無い。

 ヘンリーが出来る事と言えば、アシュリーに誠心誠意謝罪するだけだ。


「エヴァンス侯爵子息夫妻、この度は会える機会を頂き、本当に感謝致します。そして、愚弟の仕出かした事、心から深くお詫び申し上げます。それと、このような場をお貸し下さったグリマード伯爵夫妻にも、多大なる感謝を致します」


 ヘンリーは馬車を降り、案内されたサロンにて、妻共々深々と頭を下げる。

 そんなヘンリー達を見たアシュリーは、ヘンリーに同情する。

 アシュリーにとって、この領地で暮らしていた頃は、義妹のサラが頭痛の種だったし、どちらも外面は良い弟妹を持つ身だからだ。

 勿論、マディソンのやった事に傷付かなかった訳では無いが、大元の原因は義妹のサラと父のダミアンで、アシュリーの身内が画策した上、三人共成人を過ぎた立派な大人なのだから、本人が責任を取るべきだ。

 まぁ、王都の王宮にまで乗り込んで、王族に対する不敬を働き、罪人達の流刑地として知られる辺境へと送られてはいるが。

 そして、いざ話し合いをと言う時に、玄関の方が騒がしくなった。

 一体何事かと思っていると、グリマード家の執事がネイルの元に来てネイルに耳打ちをし、ネイルがその場に集まった者達に事情を話す。


「ウォール前伯爵夫人が、アシュリー夫人に会わせろと来ているそうだ」


 それを聞いたヘンリー夫妻は、苦虫を噛み潰したような顔をし、手で顔を覆った。
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