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後日談
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ぐっすりと眠る息子は乳母に任せたまま、次は邸の庭へと案内する。
アシュリーが暮らしていた頃と比べると、沢山の緑が生い茂り、見た事の無い花が所々に咲いている。
それに、実を付けている植物も有るようだ。
あまりの変わりように、アシュリーは感嘆の声を上げる。
「凄いです。これ程植物がこの庭を占めるなんて、思ってもいませんでした!」
「アーシュ様見て下さい!ネイル様の手を借りてはいますが、これがわたしが育てた植物達です!可愛い花が咲いていますよ♪」
「本当に。可愛いですね!」
女性二人の会話は仲の良い姉妹の会話のようだ。
ただし、はしゃぐレイニーを見守るアシュリーといった構図なので、年上のレイニーが妹で、年下のアシュリーが姉に見える、本来の年齢とは逆の姉妹に見えるだろうが、レイニーは元々年齢よりもかなり若く見えるし、アシュリーは大人びた落ち着き払った雰囲気を持つので、仕方が無いだろう。
それに、レイニーにとってのアシュリーは、ネイルの関心を引こうとレイニーに近付く女性とは違い、レイニーと親しくなりたいと言ってくれる貴重な女性だ。
伴侶が居ようと婚約者が居ようと、関係無いとばかりにネイルを狙う同性が多い。
そんな中で、異性としてのネイルに興味は無く、レイニーに悪意の無い、好意の笑顔を向けてくる女性は稀なのだ。
しかもアシュリーは、ドレスや宝石、流行や噂話が大好きな貴族女性とは違う。
レイニーを蔑む事も咎める事もしない。
元々レイニーは普通の令嬢よりも活発で、お淑やかとは言えず、貴族女性達からは変わり者呼ばわりされていた。
そんなレイニーを受け入れてくれるのだから、レイニーが喜ぶのは当然の事だろう。
レイニーは楽しそうに、ネイルに教えて貰った知識をアシュリーに披露している。
二人の微笑ましい姿をネイルとジーン、そして使用人達が優しい眼差しで愛でている。
「エヴァンス侯爵子息様。私のような年寄りにまで、このような素晴らしい機会を与えて下さり、心からの感謝を申し上げます。本当に有難う御座いました。これでもう、いつお迎えが来ても、悔いは有りません」
エルンがジーンに頭を下げるが、ジーンはエルンの言葉に訂正を加える。
「貴方はアーシュにとって、もう一人の祖父のような存在だったのだろう?ならば、私の事はジーンで良い。それに、迎えにしろ引退にしろ、まだ早い。貴方には、いつか産まれてくるだろう私達の子も、その腕に抱いて貰うつもりだからな」
「それは……まだ逝けそうに有りませんね」
「ああ。アーシュの為にも長生きしてくれ」
「……有難う、御座います。ジーン様」
エルンは目に涙を溜め、言葉を詰まらせながらも、再度、ジーンに深々と頭を下げるのだった。
アシュリーが暮らしていた頃と比べると、沢山の緑が生い茂り、見た事の無い花が所々に咲いている。
それに、実を付けている植物も有るようだ。
あまりの変わりように、アシュリーは感嘆の声を上げる。
「凄いです。これ程植物がこの庭を占めるなんて、思ってもいませんでした!」
「アーシュ様見て下さい!ネイル様の手を借りてはいますが、これがわたしが育てた植物達です!可愛い花が咲いていますよ♪」
「本当に。可愛いですね!」
女性二人の会話は仲の良い姉妹の会話のようだ。
ただし、はしゃぐレイニーを見守るアシュリーといった構図なので、年上のレイニーが妹で、年下のアシュリーが姉に見える、本来の年齢とは逆の姉妹に見えるだろうが、レイニーは元々年齢よりもかなり若く見えるし、アシュリーは大人びた落ち着き払った雰囲気を持つので、仕方が無いだろう。
それに、レイニーにとってのアシュリーは、ネイルの関心を引こうとレイニーに近付く女性とは違い、レイニーと親しくなりたいと言ってくれる貴重な女性だ。
伴侶が居ようと婚約者が居ようと、関係無いとばかりにネイルを狙う同性が多い。
そんな中で、異性としてのネイルに興味は無く、レイニーに悪意の無い、好意の笑顔を向けてくる女性は稀なのだ。
しかもアシュリーは、ドレスや宝石、流行や噂話が大好きな貴族女性とは違う。
レイニーを蔑む事も咎める事もしない。
元々レイニーは普通の令嬢よりも活発で、お淑やかとは言えず、貴族女性達からは変わり者呼ばわりされていた。
そんなレイニーを受け入れてくれるのだから、レイニーが喜ぶのは当然の事だろう。
レイニーは楽しそうに、ネイルに教えて貰った知識をアシュリーに披露している。
二人の微笑ましい姿をネイルとジーン、そして使用人達が優しい眼差しで愛でている。
「エヴァンス侯爵子息様。私のような年寄りにまで、このような素晴らしい機会を与えて下さり、心からの感謝を申し上げます。本当に有難う御座いました。これでもう、いつお迎えが来ても、悔いは有りません」
エルンがジーンに頭を下げるが、ジーンはエルンの言葉に訂正を加える。
「貴方はアーシュにとって、もう一人の祖父のような存在だったのだろう?ならば、私の事はジーンで良い。それに、迎えにしろ引退にしろ、まだ早い。貴方には、いつか産まれてくるだろう私達の子も、その腕に抱いて貰うつもりだからな」
「それは……まだ逝けそうに有りませんね」
「ああ。アーシュの為にも長生きしてくれ」
「……有難う、御座います。ジーン様」
エルンは目に涙を溜め、言葉を詰まらせながらも、再度、ジーンに深々と頭を下げるのだった。
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