740 / 805
後日談
8
しおりを挟む
アシュリーはタオルを手に持ったまま、ジーンに腰を支えられ、共に邸内へと案内される。
父親が雇っていた使用人達も居るが、客人の視界には入らないようにする事、緊急性、必要性が無ければ絶対に近付かない事を記入した誓約書をジョシュアが作り、サインさせている。
何せ、あの父娘の言いなりで、アシュリーに対し、殆どの者達が蔑む態度を取っていたのだから。
そうしなければ、職を失ってしまうのだから、ある意味仕方の無い事では有るが、だからと言って、平民が貴族相手にした事なのだから、そう簡単に赦される事では無い。
彼等が反省し、アシュリーに心からの謝罪を言いたいと思った所で、所詮それは、本人の自己満足だし、アシュリーを不快にさせたなら、今度はエヴァンス家の者達が黙ってはいないだろう。
「呉々も、大事な客人に対して無礼を働かないで下さいね?貴方方がしてきた事は、相手が顔見知りだから、優しいから、で赦される範疇を越えています。何よりアシュリー様の伴侶は、愛しの奥方に貴方方が近付く事を赦しません。ネイル様が、自身やレイニー様に擦り寄る者達をどうなさったか、勿論忘れてはいませんよね?」
ジョシュアはアシュリーの父親が雇っていた使用人達に、絶対零度の眼差しを向けて、アシュリーやエヴァンス家の者達に近付かないよう、口でも忠告していた。
ここまでやっても近付くようなら、それは本人の自己責任だ。
これまでは、他の貴族を相手にする機会が殆ど無かっただろうが、ネイルの場合はそうもいかない。
王都では植物学者として有名で、あちこちから依頼が有ったりしたが、腰を据えるとなると、当然訪ねて来る貴族も多くなるだろう。
特にこの近辺は、同じ境遇の領地が多い為、同じ悩みを抱える領主も多い筈だ。
既にこのグリマード領で、植物が徐々に育ちつつある事を知っている隣の領主達から、嘆願に近い依頼が来ている程だ。
勿論、王都の高位貴族にも伝が有り、ジーンとの縁が有る子爵子息のレッグスに、探りを入れて来る者達も居て、そこからネイルが王都では有名な植物学者で有り、とある侯爵の子息で有る事も拡散されている。
今はまだ試験段階でも有り、他領を見回る時間が取れないと断りを入れているが、それも時間の問題だ。
先ずは親しい友人を招待し、使用人として使えるかどうかの、最終チェックを確認して貰う必要が有る。
だからこそ、今回はステラだけで無く、サラの侍女として潜入していたサリーにも来て貰っている。
ステラやサリーがエヴァンス家の使用人だったと知らなかった面識の有る使用人達は、自分達の行動が見張られているだなんて思ってもいない事だろう。
そんな裏事情を知らないのは、当の本人達とアシュリーぐらいだ。
(他家の使用人達とのいざこざはご法度。それが上位なら尚更だ。さて、この試練、一体何人の使用人達がこの邸に残れるでしょうねぇ)
ジョシュアはエルンに目配せし、互いにこっそりと頷き合ったのだった。
父親が雇っていた使用人達も居るが、客人の視界には入らないようにする事、緊急性、必要性が無ければ絶対に近付かない事を記入した誓約書をジョシュアが作り、サインさせている。
何せ、あの父娘の言いなりで、アシュリーに対し、殆どの者達が蔑む態度を取っていたのだから。
そうしなければ、職を失ってしまうのだから、ある意味仕方の無い事では有るが、だからと言って、平民が貴族相手にした事なのだから、そう簡単に赦される事では無い。
彼等が反省し、アシュリーに心からの謝罪を言いたいと思った所で、所詮それは、本人の自己満足だし、アシュリーを不快にさせたなら、今度はエヴァンス家の者達が黙ってはいないだろう。
「呉々も、大事な客人に対して無礼を働かないで下さいね?貴方方がしてきた事は、相手が顔見知りだから、優しいから、で赦される範疇を越えています。何よりアシュリー様の伴侶は、愛しの奥方に貴方方が近付く事を赦しません。ネイル様が、自身やレイニー様に擦り寄る者達をどうなさったか、勿論忘れてはいませんよね?」
ジョシュアはアシュリーの父親が雇っていた使用人達に、絶対零度の眼差しを向けて、アシュリーやエヴァンス家の者達に近付かないよう、口でも忠告していた。
ここまでやっても近付くようなら、それは本人の自己責任だ。
これまでは、他の貴族を相手にする機会が殆ど無かっただろうが、ネイルの場合はそうもいかない。
王都では植物学者として有名で、あちこちから依頼が有ったりしたが、腰を据えるとなると、当然訪ねて来る貴族も多くなるだろう。
特にこの近辺は、同じ境遇の領地が多い為、同じ悩みを抱える領主も多い筈だ。
既にこのグリマード領で、植物が徐々に育ちつつある事を知っている隣の領主達から、嘆願に近い依頼が来ている程だ。
勿論、王都の高位貴族にも伝が有り、ジーンとの縁が有る子爵子息のレッグスに、探りを入れて来る者達も居て、そこからネイルが王都では有名な植物学者で有り、とある侯爵の子息で有る事も拡散されている。
今はまだ試験段階でも有り、他領を見回る時間が取れないと断りを入れているが、それも時間の問題だ。
先ずは親しい友人を招待し、使用人として使えるかどうかの、最終チェックを確認して貰う必要が有る。
だからこそ、今回はステラだけで無く、サラの侍女として潜入していたサリーにも来て貰っている。
ステラやサリーがエヴァンス家の使用人だったと知らなかった面識の有る使用人達は、自分達の行動が見張られているだなんて思ってもいない事だろう。
そんな裏事情を知らないのは、当の本人達とアシュリーぐらいだ。
(他家の使用人達とのいざこざはご法度。それが上位なら尚更だ。さて、この試練、一体何人の使用人達がこの邸に残れるでしょうねぇ)
ジョシュアはエルンに目配せし、互いにこっそりと頷き合ったのだった。
1
お気に入りに追加
9,266
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
夫の書斎から渡されなかった恋文を見つけた話
束原ミヤコ
恋愛
フリージアはある日、夫であるエルバ公爵クライヴの書斎の机から、渡されなかった恋文を見つけた。
クライヴには想い人がいるという噂があった。
それは、隣国に嫁いだ姫サフィアである。
晩餐会で親し気に話す二人の様子を見たフリージアは、妻でいることが耐えられなくなり離縁してもらうことを決めるが――。
継母の品格 〜 行き遅れ令嬢は、辺境伯と愛娘に溺愛される 〜
出口もぐら
恋愛
【短編】巷で流行りの婚約破棄。
令嬢リリーも例外ではなかった。家柄、剣と共に生きる彼女は「女性らしさ」に欠けるという理由から、婚約破棄を突き付けられる。
彼女の手は研鑽の証でもある、肉刺や擦り傷がある。それを隠すため、いつもレースの手袋をしている。別にそれを恥じたこともなければ、婚約破棄を悲しむほど脆弱ではない。
「行き遅れた令嬢」こればかりはどうしようもない、と諦めていた。
しかし、そこへ辺境伯から婚約の申し出が――。その辺境伯には娘がいた。
「分かりましたわ!これは契約結婚!この小さなお姫様を私にお守りするようにと仰せですのね」
少しばかり天然、快活令嬢の継母ライフ。
■この作品は「小説家になろう」にも投稿しています。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる