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後日談

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 アシュリーはタオルを手に持ったまま、ジーンに腰を支えられ、共に邸内へと案内される。

 父親が雇っていた使用人達も居るが、客人の視界には入らないようにする事、緊急性、必要性が無ければ絶対に近付かない事を記入した誓約書をジョシュアが作り、サインさせている。

 何せ、あの父娘の言いなりで、アシュリーに対し、殆どの者達が蔑む態度を取っていたのだから。

 そうしなければ、職を失ってしまうのだから、ある意味仕方の無い事では有るが、だからと言って、平民が貴族相手にした事なのだから、そう簡単に赦される事では無い。

 彼等が反省し、アシュリーに心からの謝罪を言いたいと思った所で、所詮それは、本人の自己満足だし、アシュリーを不快にさせたなら、今度はエヴァンス家の者達が黙ってはいないだろう。


「呉々も、大事な客人に対して無礼を働かないで下さいね?貴方方がしてきた事は、相手が顔見知りだから、優しいから、で赦される範疇を越えています。何よりアシュリー様の伴侶は、愛しの奥方に貴方方が近付く事を赦しません。ネイル様が、自身やレイニー様に擦り寄る者達をどうなさったか、勿論忘れてはいませんよね?」


 ジョシュアはアシュリーの父親が雇っていた使用人達に、絶対零度の眼差しを向けて、アシュリーやエヴァンス家の者達に近付かないよう、口でも忠告していた。

 ここまでやっても近付くようなら、それは本人の自己責任だ。

 これまでは、他の貴族を相手にする機会が殆ど無かっただろうが、ネイルの場合はそうもいかない。

 王都では植物学者として有名で、あちこちから依頼が有ったりしたが、腰を据えるとなると、当然訪ねて来る貴族も多くなるだろう。

 特にこの近辺は、同じ境遇の領地が多い為、同じ悩みを抱える領主も多い筈だ。

 既にこのグリマード領で、植物が徐々に育ちつつある事を知っている隣の領主達から、嘆願に近い依頼が来ている程だ。

 勿論、王都の高位貴族にも伝が有り、ジーンとの縁が有る子爵子息のレッグスに、探りを入れて来る者達も居て、そこからネイルが王都では有名な植物学者で有り、とある侯爵の子息で有る事も拡散されている。

 今はまだ試験段階でも有り、他領を見回る時間が取れないと断りを入れているが、それも時間の問題だ。

 先ずは親しい友人ジーン達を招待し、使用人として使えるかどうかの、最終チェックを確認して貰う必要が有る。

 だからこそ、今回はステラだけで無く、サラの侍女として潜入していたサリーにも来て貰っている。

 ステラやサリーがエヴァンス家の使用人だったと知らなかった面識の有る使用人達は、自分達の行動が見張られているだなんて思ってもいない事だろう。

 そんな裏事情を知らないのは、当の本人達とアシュリーぐらいだ。

(他家の使用人達とのいざこざはご法度。それが上位なら尚更だ。さて、この試練、一体何人の使用人達がこの邸に残れるでしょうねぇ)

 ジョシュアはエルンに目配せし、互いにこっそりと頷き合ったのだった。
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