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後日談

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 マディソンの兄の、ヘンリー=ウォールは、幼少期からちやほやされていたマディソンとは違い、理不尽な目に合う事が多かった為か、真面目で努力家だが、強かだ。

 ゴート父娘とマディソンが、子爵家でやらかした事を知ると、直ぐに迅速な対応をしたのは当主の父親では無く、彼だった。

 先ずは父親に、責任と言う形で辺境伯の地位を退かせ、関連書類を直に届ける為、王都まで単身馬で駆け付け、国王陛下に謁見を求め、子爵家の夜会の報告と、王都に着ているであろう愚弟の詳細確認をした。

 アレクシスから、王都での出来事を聞くと、それに対する謝罪と弁明をする。

 その上で、こう述べた。


「愚弟の仕出かした事は、貴族として、ディーラン国民として赦される物では有りません。父で有るウォール家当主には親の責任として、当主を引退し、愚弟のマディソンには貴族籍の剥奪、アシュリー嬢には謝罪と賠償金を含む慰謝料の支払いを考えております。ご迷惑をお掛けしたエヴァンス家のご子息にもお会いして、直接お詫びを申し上げたいと思っております」


 因みにヘンリーは、王都に着く前にエヴァンス家に手紙を書き、王都に着くと直接その手紙をエヴァンス家に届けた。

 勿論、アポ無しで会わせろと言うのでは無く、面識も伝も無いから、当主として出来る最大限の事をし、敵意や害意は無いと伝える為だ。

 だから、ヘンリーはエヴァンス家からの返事が直ぐに来るとは思っていないし、迷惑にならない程度にこれからも手紙を出すつもりだった。

 マディソンがやった事を思えば当然だろう。

 マディソンの貴族籍を剥奪したから、当主交代をしたからと赦される事では無い。

 当主直々に、手紙だけでは無く、直接謝罪をしたい、機会を頂きたいとしるした手紙を領地に帰った後も、何通か送り続けた。

 領地に戻ったら戻ったで、他の貴族達からはマディソンの事で白い目を向けられる。

 ヘンリーは既婚者だったが、政略婚だった妻の実家が、妻に離縁をするように進言した事も有った程だ。

 幸い、ヘンリーは妻を大切にしていた為、妻から離縁を切り出される事は無かったし、親交の深かった友人達も離れる事は無かった。

 それはヘンリーが、周囲からマディソンに付いての批判は真摯に受け止めるが、エヴァンス家に喧嘩を売るなんてと言った批判に対しては真っ向から否定したり、愚弟には婚約者を大事にしろと所構わず散々諌めていた事や、誠実な人柄が評価されていたからだ。

 ヘンリーは平凡な顔立ちだが、行動力も有り、誠実で勤勉な性格で、嫡男として厳しく育てられていた所為か、どちらかと言うとヘンリーはマディソンの兄よりも、アシュリーの兄と言われた方がしっくりくるくらい、性格が似通っている。

 そんなヘンリーにジーンからの返信が届いたのは、ジーンがアシュリーと旅行に行こうと誘ったその日だった。
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